2013 Fiscal Year Research-status Report
気候変動がアジアパシフィック域の水産養殖業に与える影響
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23510044
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉松 隆夫 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10264102)
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Keywords | 気候変動 / 水産養殖業 / 集中豪雨 / 海洋酸性化 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
近年,地球の自然環境は激変している。たとえば,地球表面の大気や海洋の平均温度は世界の各地で継続的な上昇傾向を示しており,これに伴う海水面の上昇や,異常降雨による洪水,旱魃,酷暑,砂漠化や強力なハリケーン・台風の増加など,激しい異常気象の増加を伴う気象の変化が世界各地で多く観測され,自然生態系や人類の活動への悪影響が懸念されている。この気候変動,あるいは気候変化と呼ばれる諸現象は,地球システムが本来的に有する自然由来の内部要因によるものと人為的な外部要因によるもの両者に分けられるが,ここ最近の温暖化現象に関しては,産業革命以降の人間の活動等に伴って排出された二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが主因となって引き起こされているとする説が有力で,すなわち長期的な視野に立っての温室効果ガスの削減が急務である。この温暖化現象と海水温の上昇や,海水の熱膨張により引き起こされる海面上昇の問題については新聞やテレビでも比較的耳にする機会も多く,また水産業への影響に関連しても様々な切り口での調査や研究も進みつつある。しかしながらこれらと同様に大きな問題ともいえる局所的な集中豪雨の増加や,二酸化炭素の増加が原因で引き起こされる海洋酸性化の問題が養殖業をはじめとする水産業に与える影響については,まだあまりまとまった報告はない。本科学研究費補助金事業ではこれらに関連し,フィジーやタイなどでの海外調査や日本各地での国内調査,更には研究室内での実験を実施して興味ある重要な知見がいくつか得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題名: 気候変動がアジアパシフィック域の水産養殖業に与える影響 本研究の目標は当初次のように設定した。世界規模での気候変動が水産養殖業の営みに与える影響に対する詳細な科学的調査と,その影響緩和への対策の素早い実施が必要とされている。3年間で実施予定の本研究では,その基礎資料を得ることを目的に,応募者がこれまで実施してきた様々な国際協力事業で得た世界各地の研究者のネットワークを活用し,アジアパシフィック域の各地における養殖業をいくつかのケースパターンに分け,それぞれに与える気候変動の影響の共通性や相違点を,共通の評価軸を基に明らかにする。そして調査と予備的な実験で得られた結果から,養殖業の持続的発展のためには,今後どのような調査や集中的研究が必要かを提言として纏め,その具体的対策を新たなプロジェクトとして開始する材料を得る。 当初はインドなども調査対象の地域に設定していたが諸般の都合で実施できなかった。しかしながら調査を実施した地域からの情報や,現地での実際の聞き取り調査の内容から3年間で研究を実施してゆくための十分な課題量が得られたので,その意味でおおむね順調に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査等の業務でで海外に行く機会が多いが,世界の養殖現場で気候変動の影響が顕在化しつつある。今回本科研事業で明らかとなったり成果が得られた問題のほか,大量降雨の水温低下による親魚の産卵時期のずれや変化,ワムシなどの初期餌料生物培養への影響の問題,突風による施設被害の増加や洪水による生産物の流出など枚挙にいとまない。世界の水産増養殖は今や総漁業生産の40%を超えるまでに成長した重要産業であるが,気候変動等の影響を受けやすい弱々しい自然依存型の産業でもある。今後はこのことにより一層留意しながらその産業の発展を考えて行かなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中緯度に位置する日本では多くの海産魚が春季に産卵するため卵や仔魚を用いた実験を行うのは3-5月となる。3月一杯で本研究は終了することとなっているが,実験結果の再確認のため4月と5月に本研究補助金を用いて実験,あるいは日本国内での現地調査を実施する必要があるため。 平成26年4月および5月に重要な海産養殖対象魚の数魚種(マダイ,ヒラメ等)の受精卵を入手し,三重大学生物資源学部内の飼育実験施設で小規模な飼育実験を実施する。また受精卵の入手のために三重県近郊の公設研究機関や栽培漁業センター等を訪問する。
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Research Products
(4 results)