2013 Fiscal Year Research-status Report
干潟域大規模干拓・開門の環境影響に関する研究 -日韓比較の視点から-
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23510047
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
速水 祐一 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (00335887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 勉 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (30202857)
樫澤 秀木 佐賀大学, 経済学部, 教授 (60214293)
佐藤 慎一 東北大学, 総合学術博物館, 助教 (70332525)
李 オンチョル 佐賀大学, 農学部, 講師 (10568364)
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Keywords | 国際研究者交流 / 韓国 / 干潟 / 干拓 / 開門 / 環境影響評価 / 比較研究 / 公開シンポジウム |
Research Abstract |
有明海では,福岡高裁において諫早湾潮受堤排水門を開門するようにとの判決が確定してから3年経ち,平成25年12月20日が開門実施の期限となっていた.このような状況下,本研究では,類似した環境で既に干潟域における大規模複式干拓と調整池の開門を行った韓国の例に学ぶことを目的とした.この目的に対し,平成25年度はこれまでの3年間に得られた情報を集約して,まとめるとともに,有明海の海洋環境に帯する開門の影響を検討した.また開門による環境への悪影響の発生を鑑み,その軽減策を採った場合に関する数値シミュレーション結果に基づき,開門の実施についてどのように判断すべきか論じた.この結果は,査読付きの国際学会プロシーディングとして受理され,EMECS 10 & MEDCOAST 2013 Joint Conferenceにおいて口頭発表した.諫早湾の開門は,潮受堤建設前とも,現状とも異なる第3の環境をもたらす.開門幅が小さい場合には,開門によって生じる潮流は弱く,潮流が弱い調整池内に塩水が浸入することで,調整池内が貧酸素化する恐れがある.一方で,開門幅が大きいと,強い潮流による底泥の巻き上げ,再堆積による養殖漁場への悪影響が生じる.詳細は関連する別研究(濱田ら,2014)に譲るが,賢明な開門の実施のためには,底泥の大規模な巻き上げが起きないように潮流を押さえながら,できる限り調整池の海水交換が良くなるような開門方法が求められる. なお,当初の想定とは異なり,平成26年4月の時点でも開門はまだ行われず,国に対して開門を即す間接請求が認められた状況にある.そこで,本研究では,経費を節約してもう1年研究期間を延長し,開門後まで含めて韓国の例との比較をすることとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り,1年目・2年目に日本,韓国でそれぞれ1回ずつ,日韓公開シンポジウムおよび,研究者だけで議論を行うワークショップを開催した.さらに,韓国の始華湖,セマングム干拓において,多くの資料を収集,聞き取りを行った.プロジェクト最終年にあたる3年目の本年度には,これまでの研究成果と,新たな関連研究の成果をもとに,国際学会で研究成果を報告することができた.ただし,平成25年度に予定されていた諫早潮受堤排水門の開門が実施されない状況に至り,計画していた3回目の日韓国際シンポジウム・ワークショップは見送り,次年度に延期することとした.このことから,達成度をやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に計画していた日韓国際シンポジウム・ワークショップを見送ったため,平成25年度の予算を節約することができた.そこで,その分を平成26年度に持ち越し,第3回の日韓国際シンポジウム・ワークショップを日本で開催する.シンポジウムのプロシーディングスは印刷およびインターネットで広く発信する.諫早開門が実施された場合には,非常によいタイミングになる.開門が行われない場合には,そのような混迷した状況を韓国からはどのように見るのかを知り,さらには,こうした状況下で大規模な干潟域をともなったエスチュアリーをどのように管理すべきか議論したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は,干潟域大規模干拓と開門について,特に諫早湾に関して,海外の研究者を招聘してシンポジウム・ワークショップを行う計画であった.しかし,12月に予定されていた諫早開門は,差し止め判決の影響を受けて実施されなかった.この決定をめぐっては,昨年秋から現在にかけて,有明海沿岸では社会対立が激化している.そのため,今,このようなシンポジウムを行うことは問題を複雑化させてしまう可能性があり,不適当であると判断された. 社会情勢が少し沈静化したところで,干潟域大規模干拓と開門について,諫早湾干拓問題に注目しながら,海外の研究者を日本に招聘して,日本人研究者とともに,本事業3回目のシンポジウム(ワークショップ)を行う.その中で,開門を行うことに是非,さらにはこのような大規模な人為的環境改変が行われてしまった大規模干潟域の環境保全のためのマネージメントについて,議論を深める.さらに,4年分の結果を報告書の形でまとめたい.
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