2011 Fiscal Year Research-status Report
黄河流域における省資源型・環境調和型社会を目指した適正な水資源配分のあり方
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23510049
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
大西 暁生 富山県立大学, 工学部, 講師 (90435537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石 峰 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (60566719)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 黄河流域 |
Research Abstract |
本年度は、中国内蒙古自治区で行われている水利権転換の事例や政策などをレビューした。さらに、人口、GDP、産業別生産額などの社会経済データを統計書類や書籍等から収集した。これらのデータの空間単位は、省や県市の行政レベル、また格子の空間レベル、主要流域レベルに集計したものといった空間精度の違いによってまとめた。次に、地域別(省別・県市別・流域区分別等)・セクター別(農業・工業・生活)の時系列的な水利用や排水のデータ、降水量や気温といった気象データを整理した。同様に、土地利用の空間データも出来る限り時系列で収集することによってその変化を分析した。最後に現在、資源消費量(エネルギー・鉱物資源等)や環境負荷物質排出量(炭素化合物・窒素酸化物・硫黄酸化物・COD 等)の統計データを収集している。 上記、収集したデータを用いることによって、中国全土を対象に、将来の社会経済成長の違いによる水需給ギャップの把握を0.5度格子単位で行った。ここで得られた結果を黄河流域などの主要流域ごとにまとめることによって、人間活動と水需要との関係、さらいは水需要と水資源とのバランスを研究した。これによって、今後の社会経済成長のあり方と水利用の課題をまとめた。黄河流域に関しては、さらに詳細な地域の状況を知るために、空間精度を0.1度格子ごとに向上させ、水需給の状況を現状把握している。またこれ以外にも、中国において水資源産業連関表を構築することによって、用水量、汚水排出量、CODなどの汚濁負荷排出量の指標を用いて、水資源に対するインフラ建設投資の影響を評価した。これらの研究は、国内外の査読付き論文として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、データの収集と整理、また水利権転換の現状をまとめることを当初の実施計画としており、概ね計画どおり進んでいる。分析に必要なデータの収集などは、入手の可能性を含めて確実に進んでいるものの、追加的に必要なものに関しては、今後その入手可能性なども探りながらさらに収集していきたい。とりわけ、資源消費量や環境負荷物質排出量のデータについては作業中であり、さらに研究に必要なものを収集する必要がある。また、集められたデータはデータベース化するつもりであり、今後この作業を進めていく。 研究としては、すでに中国全土及び黄河流域を対象に詳細な空間単位において水需給モデルを構築しており、今後これを拡張・改良していくつもりである。また、中国経済が外需主導型経済からインフラ建設を中心とする内需型に移行することによって、このインフラ建設投資の水資源多消費型・汚水多排出型産業への波及効果による直接的・間接的な水利用の増大と、水資源や水環境に与える影響を分析した。これによって、より包括的な水資源管理のあり方が模索できたと考えている。さらに、これらの研究を査読付き論文として発表しており、現時点において確実に成果が出ていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ここまで収集・整理したデータを用いて、黄河流域における水利用をさらに時空間において詳細に検討すると同時に、削減可能な農業用水量、すなわち他セクターや他地域に転換可能な水量を作物の蒸発散量などの推計をもとに明らかにしていく。さらに、こうした農業での水の削減には、用水路や圃場における漏水を防止することが重要である。とりわけ、黄河流域の北部は乾燥・半乾燥地域に属しており、用水路の整備やドロップ灌漑などによって、大幅に漏水量を減らすことが可能である。ただし、こうした整備には、多額の費用が掛かり、こうした整備は工業関連の企業等が水利権の転換を受けるために支払っている。そのため、水が転換されたことによる工業生産への影響を推計すると同時に、工事費用に対する費用対効果を算出し、転換することによる経済的な効果を算出していく。さらに、水利権転換を効率的に進めていくためには、どの地域のどの工業セクターに水を配分すれば良いのかといった問題が重要になる。そのため、用水利用の効率性分析などを行うことによって、最も適切な水の配分方法を考えていくつもりである。そして、転換可能な水量を工業セクターで使用した場合の各地域の水需給バランスと黄河の流量を算出することによって、水不足が解決されるのか、また断流の危機を回避できるのかどうかを検討していく。一方、工業生産が活発化することによって、環境汚染の悪化や天然資源の過剰消費などが危惧される。そのため、水利権転換による水資源や流量への影響と同時に、環境汚染・資源消費・社会経済への影響を総合的に評価していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本年度において購入予定であった中国統計書類や書籍のバックナンバーが入手困難であったため、再度これらの入手の可能性を探り、購入を進めていくつもりである。また、土地利用や気象などの空間データなどを入手する。さらに、土地利用分析を行うためのソフトウェアと、水配分モデルを構築するためのソフトウェアを購入するつもりである。さらに、北京市や黄河流域への現地調査を予定しており、用水利用の実態や環境負荷の状況などを調べるとともに、研究に必要な資料収集なども同時に行う。このため、山東省科学院科学技術発展戦略研究所、北京師範大学、清華大学、蘭州大学などと調整を進めている。この調査に関して、旅費、資料代、謝金などが必要となる。最後に、研究成果の整理と発表のために、英文校閲費や消耗品の購入費などを考えている。
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Research Products
(7 results)