2012 Fiscal Year Research-status Report
黄河流域における省資源型・環境調和型社会を目指した適正な水資源配分のあり方
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23510049
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
大西 暁生 富山県立大学, 工学部, 講師 (90435537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石 峰 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (60566719)
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Keywords | 黄河流域 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に収集・整理した行政、流域、格子ごとの空間レベルにおける人口、GDP、産業別生産額などの社会経済データやセクター別(農業・工業・生活)の水利用や排水のデータ、降水量や気温といった気象データを用いて、地域の経済成長と水資源利用との関係性を把握し課題をまとめた。また、今まで実態把握が困難であった黄河流域の地表水と地下水の利用を明らかにすることによって、河川と地下水における影響を検討した。さらには、経済発展に伴う用水量の利用をより具体的に把握するため、東部、中部、西部に分割しこれら地域ごとのセクター別・年次別の用水量と、これら地域間・セクター間の比較による転換可能な水量を分析した。さらに、地域の用水原単位を比較することによって、地域の特性を示すとともに、用水路や圃場における漏水の状況をまずは文献調査などを通じて情報収集した。これによって、黄河流域では気象や気候の制約はあるものの、用水路やドロップ灌漑などの整備によって、漏水量をある程度減らすことが可能であることが分かった。さらに、農業用水だけではなく、工業用水や都市生活・農村生活の用水量の時系列的な変化を明らかにすることによって、農業で削減した水量を水利権転換によって転用させた場合のこれらセクターへの影響と効果について検討した。 現在、農業セクターから工業セクターへの水利権転換による工業増産によって、環境汚染の悪化や天然資源の過剰消費などが危惧されている。そのため、これらの影響を水環境指標としてのCOD、天然資源消費としてのエネルギー・鉱物資源などによって評価している。これによって、水利権転換による水資源への影響だけではなく、環境汚染・資源消費・社会経済への影響を総合的に検討していくことができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、初年度に収集・整理したデータをもとに、地域の社会経済の状況や水利用の実態を明らかにし、また現在では水利権転換の影響とこの波及効果及び環境汚染や天然資源消費への影響を検討している。そのため、研究は概ね当初の計画どおり進んでいると考えられる。この成果により、黄河全流域における水需給構造を地下水と地表水のバランスとして明らかにし、これを査読付き論文として発表している。また、人間文化研究機構(NIHU)現代中国地域研究拠点連携プログラムが編集・発行する『日本当代中国研究』(年刊)第5号に中国全域の水需給構造を明らかにした論文の掲載が決まっており、国際的な情報発信といった観点からも、着実に成果が出ている。 ただし、分析に必要なデータの収集などはある程度進んでいるものの、追加的に必要なものに関しては、早急に入手する必要がある。現在、日中関係の懸念によって一部のデータの入手が困難となっており、これに関しては他のデータや資料で代用できるかどうかを検討している。また、本年度実施予定であった現地調査は、上記の懸念から、見合わせた経緯があるため、次年度は時期と状況をみて、可能であれば灌漑地域などにおける水利用の実態と下流部での経済開発の状況を調査する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、ここまで精査してきた、水利権転換の政策分析、データベース構築、転換可能水量の算定、配分方法の検討、河川の流量と経済・環境の影響評価を統合し、黄河流域における水利権転換を用いた水配分のあり方を検討する。これによって、黄河流域における省資源型・環境調和型社会を目指した適正な水資源配分のあり方が議論可能となり、これをもって最終成果のとりまとめとする。これら成果は、随時、学会などで発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、各省の統計書類や書籍のバックナンバーを早急に入手する必要がある。また、土地利用や気象などの空間データなどは、現在入手が困難となっており、それが可能になればこれらの入手を随時進めていく。現在、黄河流域での現地調査を考えており、特に灌漑地域における農業用水の利用実態の把握と下流部周辺の経済開発の進捗を重点的に調査する予定である。また、研究に必要な資料なども現地において収集するつもりである。そのため、山東省科学院科学技術発展戦略研究所と、上記の調査の調整を進めている。この調査に関しては、旅費、資料代、謝金などが必要となる。最後に、研究成果の発表のために、学会参加の旅費、論文の掲載料、英文校閲費、また消耗品の購入などを考えている。
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Research Products
(4 results)