2011 Fiscal Year Research-status Report
温暖化被害緩和策に関する世界経済モデルによるシミュレーション分析
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23510052
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鷲田 豊明 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (50191739)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 気候変動影響 / 気候変動適応策 / 応用一般均衡モデル / シミュレーション |
Research Abstract |
平成23年度は、第1に、本研究のために必要なベースモデルを構築すること、第2に、温暖化被害に関する専門家、および世界モデルの研究者からのヒアリングによる知見の集積、洗練化を目標に研究を進めてきた。 まず、第1の点では、これまで構築してきた一国的な応用一般均衡モデルをベースに、世界を16地域に分割し、各地域の経済を16産業に分割した実用性のあるモデルを構成した。データとしては、2004年基準のGTAP7データを用いている。ただし、GTAPのモデルは用いず、独立に、より一般性の高いモデルを構築した。農業分野に限定し既存データを用いた試験的シミュレーションも実施し、おおむね良好に機能することを確認することができた。 第2の温暖化影響に対する知見、適応策に対する知見を得るという点では、まず、2011年7月にDr. Miguel Esteban 氏 (International Center for Science and Engineering Programs, Department of Civil and Environmental Engineering, Waseda University)を招いて、温暖化によるアジア地域における台風被害が経済活動に与える影響の研究報告会を開催した。温暖化影響による災害と産業活動の関係を分析した研究は国内外において相対的に少なく、重要な知見を得ることができた。つづいて、2012年1月に、国内外の13人の研究者を招いて、International workshop on Theoretical and Empirical Approaches for Understanding Adaptation to Climate Changeを開催し、温暖化影響と適応策に関して、生態系被害や産業への影響など広い領域からの知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度については、研究概要に記載の通り、ベースモデルの構築、温暖化適応策に関する知見の獲得の二つの点で、当初予定していた目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、地球温暖化(気候変動)によって世界規模で発生する被害が世界経済に与える影響を、産業間の依存関係、各国(各地域)間の相互関係によってどのように波及するのかを、産業及び地域を可能な限り分割(disaggregate)した応用一般均衡世界モデルによってとらえ、貿易による被害の緩和、あるいは被害緩和政策の経済的効果を測定し、可能性と必要性を適切に評価することである。また、世界モデルではあるが、海外における被害が日本に与える影響については、特別な考慮をおこない、国内における被害策の費用と効果ばかりでなく、海外、特に途上国に対する被害緩和のための援助の費用と便益の測定によって、具体的な政策的含意を明確にすることである。 そのために、当面、モデルの組み込むべき気候変動影響と適応策に関する構造を確定するために、必要なデータの収集、関数の構築を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、第一に、被害に関する調査とデータの収集および加工を行う。農林水産業への被害は、主要には、上記ヒアリングによって把握する。その他の産業の被害は、集中豪雨や、以上渇水、台風、豪雪などの自然災害が産業に与える影響によってとらえられる。後者の被害については、企業がこれらの自然災害リスクをどのように見積もり、また、その災害からの影響の緩和にどのような支出をしているかを把握することによって、企業の生産技術、および費用構造に与える影響を評価できる。主要企業を対象にした調査は、既存データの援用、あるいは調査会社への委託によって、確実性と条件の管理を適切におこなう。予算が当初予定していた者と異なることをふまえて、多様な調査手法を考慮しながら、費用効率の高い方法を選択する。 第2に、海外の研究者からのヒアリングを実施する。NordhausのDICEモデルのように、経済システムを整合的に組み込んだシミュレーションモデルによる被害推計は、主として海外で行われてきた。本研究の一環として、DICEモデルを、さらに地域分割したRICEモデルの開発にたずさわってきた、Binghamton UniversityのZili Yang教授らから、本研究の流れについてヒアリングを行う。また、the University of Trontoの名誉教授であり、被害適応(Adaptation)に関して、進化論、社会学など広い視点から斬新な議論を展開しているIan Burton教授からのヒアリングによって本研究の意味付けを深める。
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