2011 Fiscal Year Research-status Report
原生動物を用いた水環境モニタリング法の有効性に関する生物学的基盤
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23510062
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
洲崎 敏伸 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00187692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 知里 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60362761)
安藤 元紀 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20222789)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境技術 / 環境影響評価 / 原生生物 / 誘電解析 / 水質検査 |
Research Abstract |
未知の有害化学物質が水環境中に放出された場合、それを確実・迅速に検出する完全な環境汚染モニタリングシステムは、残念ながら今のところ存在していない。本研究の目的は、ユーグレナEuglena gracilisやタイヨウチュウActinophrys solなどの原生動物の示す様々な有害物質への応答を、微細形態的・電気生理学的に解析し、それらがヒトに対する安全性を保障するための有効な基準となりえるかを検証することである。原生動物はヒトと基本的には共通した細胞構造を持つ真核生物であり、毒性発現の機構も共通していると考えられる。細胞内部には、核や様々な細胞小器官が存在している。誘電解析法(インピーダンス法)は、このような細胞各部に対する損傷の度合いを、細胞を破壊することなく生きたままで計測することのできる優れた非侵襲的測定法である。平成23年度は、様々な処理を施した原生動物細胞の誘電特性を、新規にデザインした並行板コンデンサー型測定セルを用いて、広帯域インピーダンスアナライザーで測定し、その電気的パラメータの周波数特性を調べた。その結果、ユーグレナの細胞形状の変化に伴う顕著な誘電特性の変化を感度よく検出することができた。また、低周波領域で観測される電極分極によるアーティファクトを取り除くための新たな計算法を開発し、それが実際のデータに適用できることを確認した。さらに、得られたインピーダンス特性の測定データを、現象論解析および原生動物の細胞形態を反映した理論解析のアルゴリズムを用いて解析し、細胞各部の電気的パラメータを算出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、インピーダンス測定の結果得られた誘電的特性を利用して、有害物質がどの細胞小器官に対してどのように影響を示したのかを推定することを計画していたが、いまだ成功には至っていない。有害物質の化学分析・微細形態解析も実施できなかったので、次年度の課題とした。しかし、インピーダンス解析に関する技術的障害はおおむね克服されたので、当該年度の研究目的はほぼ達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
インピーダンス測定に関する基礎的知見はほぼ得られたので、今後は当初の計画通り、「インピーダンス光学顕微鏡システム」の試作を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的は、有害物質に高い反応性を示す原生動物の示す、細胞生物学的な反応機序を探ることである。ユーグレナやタイヨウチュウ以外の原生動物について同様な検討を重ねることで、バイオモニタリングに最も適した生物材料を探索していく。さらに、本システムの応用範囲を海水や土壌溶出液にも広げる目的で、原生動物の浸透圧・イオン強度耐性についても検討する。 次に、原生動物を水質汚染の指標生物として利用し、試験水中における有害物質の有無を即座に確認するためのバイオモニタリングシステムを試験開発する。モニタリングシステムの構造は、顕微鏡部分と画像解析部分、さらにインピーダンス解析部分からなる。具体的には、倒立型の光学顕微鏡にあらかじめ原生動物をセットしておいたプラスチックセルを置き、太陽虫あるいはユーグレナの様子をデジタルビデオカメラで撮影し、画像解析を行う。セルには一方から試験水を導入し、他方から排出するように、小型ポンプを用いたフロースルー型のものとする。また、セルには並行板コンデンサ型の白金電極を挿入・装着し、細胞懸濁液全体のインピーダンスを測定する。顕微鏡部分を含む装置全体は、室温(20-25℃度程度)に維持された恒温装置にセットされる。本装置の製作と動作試験は、吉村が担当する。画像解析とインピーダンス解析のためのプログラムは新たに設計・開発し、リアルタイムで原生動物細胞の動態を観察できる水質監視装置を作製する。また、ネットワークを介して遠隔地のパソコンから測定・解析ができるようにするために、パソコンはLANに接続し、遠隔操作のためのプログラムも開発する。インピーダンス解析システムは安藤が、画像解析と遠隔ネットワーク監視システムの開発は洲崎が担当する。
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Research Products
(25 results)