2011 Fiscal Year Research-status Report
UVA光反応によるニトロソアミン類のDNA・蛋白・生体膜傷害とシグナル伝達擾乱
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23510075
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
有元 佐賀惠 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90212654)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光毒性 / ニトロソプロリン / UVA / DNA損傷 / 光遺伝毒性 / 一酸化窒素 / ヌクレオチド付加体 / ヒトケラチノサイト |
Research Abstract |
ニトロソ化アミノ酸・ニトロソアミン類のUVA光活性化による化学修飾を解析し、損傷部位の構造を明らかにするために、まずDNAのモデルとして、デオキシヌクレオチドに対する光反応生成物を解析した。UVA照射した結果、NPROから一酸化窒素(NO)放出が見られた。さらにdGとNPROの光反応で、8-オキソデオキシグアノシン(8-oxodG),デオキシイノシン(dI),デオキシオキザノシン(dO)が生成することが分かった。光反応機構解明のため、嫌気下の光反応で活性酸素種産生を抑制したところ、新たな反応物が検出された。構造解析の結果、(R)-,(S)-8- (2-pyrrolidyl)-dGと推定された。また、dAとNPROの好気下での光反応生成物を解析したところ、dAの2位置換体(R)-,(S)-2-(2pyrrolidyl)-dAを単離同定した。一方、dAとNPROの嫌気下での光反応生成では2位置換体も生じるが、むしろ8位置換体(R)-,(S)-8- (2-pyrrolidyl)-dAの方が多いことが分かった。これは好気下ではdGやdAの8位は酸素ラジカルの付加による8-オキソ体の生成の方が優先するためではないかと考えられ、エネルギー移動によるタイプI型付加反応と、活性酸素種の関与するタイプII型反応が競合しているのではないかと考えられる。さらに、DNAと光活性化NPROとの反応でも、上記の付加体が生じていることが分かった。また、チロシンやグルタチオンがNPROの光分解によって生じるNOによりニトロチロシンやS-ニトログルタチオンとなることが分かった。また、ヒト由来表皮培養細胞のNCTC2544細胞を使った光遺伝毒性検出系を確立した。UVA活性化NPROがNCTC2544細胞およびヒト由来リンパ芽球細胞WTK-1に対しDNA損傷を起こし、小核形成することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の目標 (1) NPROの光活性化によるDNAやタンパクの損傷を解析し、反応生成物の構造解析: 核酸モデルとしてのヌクレオシドに対する損傷解析をおこない,既知の付加体に加えて、新規核酸付加体6種類が生じることを見出し、付加体の化学構造を同定した。また、光反応機構としてタイプIとタイプIIが共存し、競合していることを明らかとした。また、DNAとのNPROの光反応を解析し、ヌクレオシドモデルで見られた反応がDNAでも起きていることを見出した。また、タンパクとの反応に関しては、反応モデルとしてチロシンやグルタチオンがNPROの光分解によって生じる一酸化窒素によりニトロ化を受けてニトロチロシンやS-ニトログルタチオンを生じることを明らかとした。目標(2)ヒト由来皮膚培養細胞に対する光毒性解明: ニトロソプロリンが血液を介して全身循環し、太陽光などのUVA照射部位で毒性を発揮するというモデルから、血液系細胞および皮膚表皮系細胞でのモデル研究が適当と考えた。そこでまず、ヒト由来表皮ケラチノサイト培養細胞を使った光遺伝毒性検出系の確立を行い、NCTC2544細胞による検出系を確立した。これによりDNAやタンパクの損傷解析と同時に遺伝毒性検出を行う系を確立した。このヒト由来表皮培養細胞に対し光活性化したNPROが光遺伝毒性を示すことを明らかとした。また、血液系細胞として既に遺伝毒性検出法が確立されているリンパ芽球細胞WTK-1細胞を用いて、NPROが光活性化により遺伝毒性を示すことを明らかとした。以上より、おおむね順調に達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)23年度に得られた結果をもとに、23年度の研究をさらに進める。特に、DNA損傷解析ならびにタンパク付加体の構造解析をさらに進める。また、皮膚モデルとしてのケラチノサイト培養細胞におけるニトロソ化アミノ酸・ニトロソアミン類とUVAの複合作用による光毒性・炎症性反応誘起・シグナル伝達異常への関与を明らかにする。また、ヒト由来培養細胞におけるシグナル伝達を解析する。たとえばNPROのUVA分解による一酸化窒素放出によるグアニル酸シクラーゼ活性化による細胞内cGMP濃度上昇を測定するなど、酵素活性や遺伝子発現への影響を解析する。(2)皮膚におけるNPROの光毒性を解析するため、動物モデルとして、ヘアレスマウスあるいは背中の毛を剃ったマウスを麻酔しておき、ニトロソアミン類・ニトロソアミノ酸を皮膚に塗布し、UVAを照射する。遮蔽を利用したスポット照射を行うことにより、照射部位と非照射部位の炎症反応等を同一個体内で比較する。また、マウスの照射部位および非照射コントロールの皮膚をとり、皮膚細胞のa)細胞損傷、とくに細胞致死(ネクロシス)作用およびアポトシス誘導、b)炎症性メディエーター誘導、c)シグナル伝達などの酵素のリン酸化異常、d)タンパク発現異常などを解析する。また,DNAを抽出し,DNA損傷をLC-MSMS解析する。また,長期毒性試験として、処理マウスと対照マウスでの皮膚腫瘍発症を比較研究する。(3)さらに、光動力学特性を明らかにするために、NPROの光吸収のある400nm以下の単波長光を照射し,それぞれの波長におけるDNA損傷量、タンパク損傷量、シグナル分子変化量、その他の細胞影響を定量し、波長特性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、金額が8631円と端数であり、また年度末も近かったため、無理に使用するよりも次年度に合算して研究に必要な物品購入に充てたいと考えたためである。(1)設備備品の購入は計画していない。(2)消耗品費として、試験研究に必要な試薬器具を購入する。すなわち、DNA解析に必要な液体クロマトグラフィー試薬、細胞培養に必要な培養試薬やプラスチック器具を購入する。また、細胞内のシグナル伝達等の検出キット、一酸化窒素定量キットなどを購入する。さらに実験動物としてマウスを購入する。以上の計画である。(3)旅費として、研究情報収集のため、第34回日本光医学・光生物学会(神戸・1泊2日)参加を計画している。(4)また、DNA損傷やタンパク・アミノ酸損傷解析に必要な測定機器、とくにLCMSMS等の使用料を支払う計画である。また、実験動物施設の使用料を支払う計画である。以上で今年度分、ほぼ全額が必要になると計画している。
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Research Products
(3 results)