2011 Fiscal Year Research-status Report
新世代ビスフェノール類の分析法確立と水域汚染の実態解明および環境リスク評価
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23510080
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中田 晴彦 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60311875)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 新世代ビスフェノール / 分析法確立 / 排水処理施設 / ビスフェノールS |
Research Abstract |
ビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原料として製造・使用されているが、低濃度暴露での生殖毒性や生態毒性、内分泌かく乱作用が疑われている。このため、BPAの代替物としてBPAと化学構造が類似した物質群(新世代ビスフェノール類)に注目が集まり、近年製造業におけるこれらの需要が高まっている。ところが、新世代ビスフェノール類を対象に環境分析を試みた例は極めて少なく、その理由として適切な分析法が確立されていないことが挙げられた。そこで本研究では、BPAを含む24種のビスフェノール類を対象に高感度分析法の確立と、それによる水試料の分析を試みた。 試料水はろ過後pHを調整し、カートリッジで固相抽出を行った。カートリッジを脱水後、有機溶媒で目的物質を溶出させ、窒素濃縮後に誘導体化を行った後、GC-MSで定性・定量を行った。分析法の検討は、上記の操作手順のうち、誘導体化の条件を重点的に行った。また、2011年に排水処理施設から採取した流入水と流出水の分析も行った。 分析法を検討した結果、誘導体化時の温度を70 ℃、誘導体化剤にBSTFA+TMCSを使用した場合に、最も高いピークエリアを示すことが分かった。標準溶液を用いた添加試験において回収率が良好であった14物質を対象に、排水処理施設の流入水・流出水を分析した。その結果、いずれの試料からもBPAとビスフェノールS (BPS)が検出された。BPSが排水処理施設から検出された例はなく、日本では感熱紙原料としてBPAに代わりBPSの使用が促進されている様子が窺えた。また、BPSは流入水と流出水で最大80 % 程度の濃度差が確認され、排水処理の過程においてBPSが分解・除去された可能性が伺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、新世代ビスフェノール類の高感度分析法の確立を最大の目標として取り組んだ。固相抽出用のカートリッジの選択、通水後に目的物質を溶出させる有機溶媒の種類と量、それを誘導体化する際の温度や時間等、実験手順の細部に至るまで詳細な検討を行い、ガスクロマトグラフ質量分析装置による高感度分析法を確立した。さらに本法を用いて排水処理施設の流入水や流出水を実際に分析したところ、従来のBPAのみならずBPSが比較的高い濃度で検出された。研究1年目としては、概ね及第点を与えても差し支えない程度の成果が得られたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
排水処理施設の水試料を対象に新世代ビスフェノール類の分析を進める一方で、汚泥や施設周辺の河川水のモニタリングを実施する予定である。新世代ビスフェノール類の環境負荷において、排水処理施設の寄与を定量化できる実験データの収集に努めたい。また、この種の物質を原料とした製品が一般に広く流通していると考えられるため、市販の複数の製品を対象に新世代ビスフェノールの濃度測定を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
化学実験のための消耗品の購入に大部分の予算を充てたい。また、排水処理施設の水試料や沿岸部の海水および底質採取に加え、学会参加のための旅費も確保する。
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[Journal Article] Zhang, Z., Alomirah, H., Cho, H-S., Li, Y-F., Minh, T. B., Mohd, M. A., Nakata, H., Ren, N., Kannan, K.2011
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[Journal Article] Guo, Y., Alomirah, H., Cho, H-S., Minh, T. B., Mohd, M. A., Nakata, H., Kannan, K.2011