2013 Fiscal Year Research-status Report
PCBによるヒト甲状腺ホルモン撹乱作用発現メカニズムの解明を目指した包括的研究
Project/Area Number |
23510083
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
加藤 善久 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (90161132)
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Keywords | 甲状腺ホルモン撹乱 / サイロキシン / PCB / 肝臓 / グルクロン酸抱合酵素 / 3,3',4,4'-テトラクロロビフェニル / トランスサイレチン / マウス |
Research Abstract |
本研究では、新たに提案した血中サイロキシン(T4)濃度低下作用機構におけるT4の肝臓への蓄積メカニズムの実体を解析するために、以下の検討を行った。C57BL/6系マウス及びDBA/2系マウスに、TCDDタイプであるがAhレセプター非依存的であることが報告されているPCB、3,3',4,4'-tetrachlorobiphenyl(CB77)を投与し、7日後に血清中総T4、遊離T4濃度及び肝臓のT4-UDP-GT活性を測定した。また、その時に[125I]T4を静脈内投与し、胆汁中[125I]T4のグルクロン酸抱合体の排泄量、血中からの[125I]T4のクリアランス、血中[125I]T4とトランスサイレチン(TTR)との結合率、[125I]T4の組織分布量を測定した。 両マウスにCB77を投与したとき、血清中総T4及び遊離T4はいずれも有意に低下した。一方、肝臓のT4-UDP-GT活性、UGT1a及びUGT1a1の発現量は、いずれの場合にも変化しなかった。胆汁中[125I]T4のグルクロン酸抱合体の排泄量は、C57BL/6系マウスでは有意に増加したが、DBA/2系マウスでは変化しなかった。また、両マウスにCB77を投与すると、[125I]T4とTTRとの結合率は低下し、アルブミン、サイロキシン結合グロブリンとの結合率は増加した。さらに、肝臓の[125I]T4のKp値(血清-肝臓間分配係数)、肝臓の[125I]T4の分布量及び肝臓単位重量当たりの[125I]T4の分布量は、両マウスにCB77の投与により顕著に増加した。また、CB77を投与したとき、C57BL/6系マウスでは、肝臓重量は有意に増加した。 以上、CB77による血清中T4濃度の低下は、主として肝臓へのT4の蓄積によって起こり、胆汁中へのT4のグルクロン酸抱合体の排泄や肝肥大も一部関与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TCDD高感受性C57BL/6系マウス、TCDD低感受性DBA/2系マウス、トランスサイレチン(TTR)ノックアウトマウス、UGT1欠損ラット(Gunnラット)などに、AhRリガンドの3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (CB126;co-planar PCB)、CARリガンドの2,2',4,4',5,5'-hexachlorobiphenyl (CB153;non-planar PCB)、AhR及びCARリガンドの2,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (CB118; mono-ortho PCB)、TCDDタイプであるがAhR非依存的な3,3',4,4'-tetrachlorobiphenyl (CB77)及びそれらを成分として含み「油症」の原因となったKanechlor-500 (KC500)を投与し、血中甲状腺ホルモン濃度、甲状腺ホルモンの代謝に関わる代謝酵素活性、血中T4と甲状腺ホルモン輸送タンパクとの結合率、甲状腺ホルモンの体内動態を薬物動態学的及び分子生物学的にin vivoとex vivoで検討した。各種PCB投与による血清中T4濃度の低下は、主として肝臓へのT4の移行(蓄積)によって起こり、胆汁中へのT4のグルクロン酸抱合体の排泄も一部関与していることを明らかにし、血清中T4濃度の低下メカニズムの要因を解明しつつある。また、肝臓へのT4の移行(蓄積)は、肝肥大によること、TTRが重要な役割を果たしていること、また甲状腺ホルモントランスポーターの関与があることを示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる核内レセプターを指向するPCBを、PCBに対する耐性の異なる動物、遺伝子組み換え動物などに投与して、甲状腺ホルモンの体内動態、甲状腺ホルモン輸送タンパク及び分泌タンパクの発現変動を薬物動態学的及び分子生物学的にin vivoとex vivoで、多角的に実験を進め、包括的に解析することにより、PCBの甲状腺ホルモン撹乱作用発現メカニズムを解明する。PCBの血中T4濃度低下において、肝臓へのT4の蓄積量の増加に、甲状腺ホルモントランスポーターが関与していることが示唆された。そこで、次の点の解析を促進する。 甲状腺ホルモンの血管側細胞膜から肝実質細胞への取り込みにおいて、トランスポーターの関与を明らかにする。異なる核内レセプターを指向するPCBを投与した各種動物の肝臓を用いて、甲状腺ホルモンやそのグルクロン酸抱合体の輸送に関わるトランスポーターとして、L型アミノ酸トランスポーター、有機アニオン輸送ポリペプチド、モノカルボン酸トランスポーター、ATP結合カセットトランスポーター及びタウロコール酸共輸送ペプチドの遺伝子及びタンパクレベルでの発現変動を解析する。 また、甲状腺ホルモンの肝臓実質細胞からの胆管への排泄阻害が関与している可能性も考えられることから、甲状腺ホルモンの胆管側細胞膜及び胆管上皮細胞で働く、トランスポーターの関与を明らかにする。各種PCBを投与し、数種の動物の肝臓を用いて、甲状腺ホルモンやそのグルクロン酸抱合体の輸送に関わるトランスポーターの遺伝子及びタンパクレベルでの発現変動を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24、25年度の血中サイロキシンと甲状腺ホルモン輸送タンパクとの結合率および甲状腺ホルモンの体内動態に関する薬物動態学的in vivo実験と分子生物学的なex vivo実験において、実験テクニックが向上したため、動物や試薬及び実験試料をロスすることなく研究が順調に進んだ。そのため計画を変更し、さらに追究することにしたため、未使用額が生じた。 このため、研究をさらに深く追究し、ヒト甲状腺ホルモントランスポーター発現細胞を用いた実験ならびに甲状腺ホルモントランスポーターの役割を検証する実験を引き続き次年度に行うこととし、加えて国際学会で研究発表を行うこととして、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] 3,3',4,4'-Tetrachlorobiphenyl-mediated decrease of serum thyroxine level in C57BL/6 and DBA/2 mice occurs mainly through enhanced accumulation of thyroxine in the liver2014
Author(s)
Yoshihisa Kato, Koichi Haraguchi, Mao Onishi, Shinichi Ikushiro, Tetsuya Endo, Chiho Ohta, Nobuyuki Koga, Shizuo Yamada, and Masakuni Degawa
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Journal Title
Biol. Pharm. Bull.
Volume: 37
Pages: 504-509
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] A possible mechanism for 2,3',4,4',5'-pentachlorobiphenyl-mediated decrease in serum thyroxine level in mice2013
Author(s)
Yoshihisa Kato, Mao Onishi, Koichi Haraguchi, Shinichi Ikushiro, Chiho Ohta, Nobuyuki Koga, Tetsuya Endo, Shizuo Yamada, and Masakuni Degawa
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Journal Title
Biol. Pharm. Bull.
Volume: 36
Pages: 1594-1601
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] In vitro metabolism of 3,5,6,7,8,3’,4’-heptamethoxyflavone by rat liver microsomes2013
Author(s)
Nobuyuki Koga, Mikiko Matsuoka, Chiho Ohta, Yoshihisa Kato, Koichi Haraguchi, Osamu Kimura and Tetsuya Endo
Organizer
20th International Congress of Nutrition
Place of Presentation
Granada, Spein
Year and Date
20130915-20130920
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