2012 Fiscal Year Research-status Report
水質汚染物質の吸着・分解除去のための高性能活性炭の設計
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23510091
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
町田 基 千葉大学, 総合安全衛生管理機構, 教授 (30344964)
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Keywords | 活性炭 / メソ孔 / 汚染 / 水処理 / 酸性官能基 / 吸着 / 硝酸イオン / 重金属 |
Research Abstract |
活性炭(活性炭素)に発達している細孔構造と表面の化学特性を変化させることにより,有機汚染物質や重金属イオンをはじめとした水質汚染物質の吸着除去性能を向上させることを目標に検討を進めている。H24年度は先ず,活性炭の官能基の影響を調べた。炭素上グラファイト辺縁部に生成する官能基として酸素,窒素および硫黄官能基などのヘテロ元素から成るものがある。これらの官能基にはいくつかの種類がある。特に窒素および硫黄官能基については,現時点では活性炭にアミノ基,ピロール基など特定の官能基を選択的に導入することが困難である。そこで官能基の影響のみを追跡することを目的として,活性炭と同様の比表面積(1000 m2/g前後)を有するメソポーラスシリカに各種アミノ基,チオール基を導入して重金属イオン(カドミウムと鉛)の吸着特性について,酸性酸素官能基を導入した活性炭を比較対照として調べた。 その結果,チオール基はカドミウムを選択的に吸着除去する能力があり,カルボキシル基は重金属イオンに対して酸性領域を含めた広いpH範囲で吸着能力を発揮することが確かめられた。重金属イオンの除去には実用的観点からはカルボキシル基に代表される酸性酸素官能基が最も有効であると考え,現在酸性酸素官能基の導入量の増加の検討を様々な酸化剤,酸化条件を用いて検討を進めており,カルボキシル基を選択的に増やす方法を見出しつつある。また,硝酸イオン(陰イオン)の吸着では,酸性酸素官能基を導入した後,不活性ガス中で900℃以上の高温で処理することにより吸着容量が増大した。これは塩基性酸素官能基が生成し吸着能力が向上したためと考えられる。活性炭の構造制御についても,メソ細孔を増大させるべく様々な検討を進めており,炭素化する前の炭素原料の段階でマイクロ孔の前駆体になる成分を除去することで,メソ孔を大幅に増大させる方法を見出しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は本研究の2年目であるが,研究実績の項でも述べたように活性炭の表面化学が汚染物質に及ぼす影響について様々な知見が得られた。 特に重金属イオン(陽イオン)については酸性酸素官能基が他の官能基と比べても有効であることが確かめられた。また硝酸イオン(陰イオン)についても塩基性酸素官能基および特定の窒素官能基が有効であることが推定された。活性炭の構造についてもメソ細孔の増大・制御が炭素化の出発原料の処理と化学的賦活処理の2通りでできることが明らかとなった。 これらの研究結果は,一つひとつの要素研究をまとめることにより学術論文や学会での発表をすることもできた。大学院生を技術習得のために2ヶ月ローレンシャン大学(カナダ)の研究室に派遣することにより研究内容の拡大と深化が図れた。 実験結果の中には未だ投稿準備中(論文執筆中)のものもあるが,既発表分だけでも研究成果の発信は十分にできたと考えている。既に海外の研究者から引用されているケースもあるので発信内容についても一定のレベルに達していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年に引き続き,有機汚染物質については細孔径と吸着特性を詳細に調べる。重金属イオンや硝酸イオンのように活性炭による除去が相対的に難しいと考えられる物質の吸着除去については活性炭の構造と表面との関係について文献調査を継続すると共に,さらに広範な実験的検討を進めていく計画である。 本課題の最終年度であるので,これまでの2年間に得られた結果をもとに研究のまとめを行う。活性炭の細孔に関しては構造制御(メソ細孔の増大)の最適化を行い,嵩高い分子の吸着容量の増大を確認する。表面化学に関しては酸性官能基や塩基性官能基を多量に導入する方法を探索して,重金属イオンや硝酸イオンのように活性炭による除去が相対的に難しいと考えられる物質の吸着性能の向上を達成する。とりわけ重金属イオン吸着に対しては,現在使用している基準活性炭にて吸着に最適な酸化条件を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記最終年度の研究計画を推進する上で,必要な機器などは概ね揃っているので,研究費は活性炭の製造や表面処理をするためのセラミックおよび石英チューブや分析に用いるガス・試薬などの物品費を賄うための使用が主体となる。また,汎用機器が老朽化しつつあるので不慮の故障に対する修理費にも使用する。 さらに,研究のスピードアップを図るために研究補助員の雇い入れたり,他の機関での分析機器の賃借をしたりすることに伴う費用が発生する可能性がある。
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Research Products
(31 results)