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2012 Fiscal Year Research-status Report

嫌気性菌の遺伝子工学を応用した水素ガス生産技術の開発

Research Project

Project/Area Number 23510095
Research InstitutionMie University

Principal Investigator

木村 哲哉  三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00281080)

KeywordsClostridium / バイオマス / 水素ガス
Research Abstract

本研究は嫌気性細菌による未利用バイオマスからの水素ガス生産を究極の目的としている。嫌気性細菌のなかでもClostridium属は、未利用バイオマスである植物繊維や海洋性のキチンなどを分解する菌が多数報告されているが、扱いの困難さから応用は遅れている。本研究ではClostridium属のなかで我々のグループが海浜土壌より単離したキチンを分解し水素ガスを高生産するClostridium paraputrificum M21を対象として、その増殖速度の速さと水素ガス生産性の高さをさらに改良するため、遺伝子工学を用いて育種することをめざしている。本年度は(1)昨年度に続き、地球上でもっとも豊富に存在する植物繊維を分解するセルラーゼやキチナーゼ遺伝子を導入した株の解析、(2)ゲノム配列の完全な決定と解析、(3)水素ガス生産に重要な役割を果たしている遺伝子群の発現解析、(4)水素ガス生産に最も適した培養条件の検討を行った。結果は以下のとおりである。(1)Clostridium thermocellum, C. josui, C. stercorariumなど複数のセルラーゼ遺伝子をC. paraputrificum用の高発現ベクターへ連結しようとしたが、大腸菌への導入で問題となって構築ができなかった。(2)ゲノム配列は3,489,864 bpであった。GC含量は30.3%, 100アミノ酸以上をコードするORFは3321個であった。(3)リアルタイムPCR法で乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH)、ヒドロゲナーゼA(HYDA)、酢酸キナーゼ(ACK)の各遺伝子の発現を調べたところ、他に比べてLDHがもっとも発現が高かった。(4)今まで培地に高価なMOPS緩衝液を使ってきたが、MOPSを入れなくても総水素ガス生産量に差はなかった。また、培地に微量の鉄を添加することで水素ガスの生産が向上した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

(1)他のClostridium属のセルラーゼやキシラナーゼ遺伝子をC. paraputirificum M21のフェレドキシン遺伝子プロモーター(fdxpro)下流へ連結して発現させるため、シャトルベクターpKNT19-hydproを作成して、この下流へ様々な遺伝子の連結を試みたが、大腸菌への導入がうまくできなかった。fdxproが大腸菌中でも比較的強く機能することを確認しており、グラム陽性菌のシグナルペプチドが大腸菌組換え体の生育に悪影響を与えている可能性が示唆された。昨年度に引き続き、ベクターの構築と導入遺伝子の発現で壁にあたっており、ベクター構築のまえにもう一工夫加えるべきであった。
(2)昨年度からおこなってきたゲノム解析が完了し、完全長の配列が決定できた。この配列から、水素ガス生産に関与すると考えられるピルビン酸以降の代謝経路についての遺伝子群を予測し、主なものについてはリアルタイムPCR法で定量することができた。しかし、ゲノム情報の解析が不十分で、鍵となる水素生産の最終段階で機能するヒドロゲナーゼ遺伝子についてまだ完全に把握できていない。今後、ゲノム情報をより詳細に解析し、すべてのヒドロゲナーゼ遺伝子の解析を行う。
(3)培地の検討という基本的なところを見直した結果、高価なMOPSを使わなくても良いことや、微量の鉄を加えるだけで水素が高生産できることを発見できたのは、実用をめざした研究という点では良かった。

Strategy for Future Research Activity

(1)セルラーゼ遺伝子の導入発現については、まず大腸菌でのベクター構築時の阻害となる、大腸菌中での導入遺伝子の発現を抑制するため、ラクトースオペロンのリプレッサー配列を応用することを計画している。また、ゲノム配列から明らかになった各種遺伝子から、プロモーター配列を選んで大腸菌では低発現で、C. paraputirificum M21中では発現の強いプロモーターを検索する。これらにより、セルロース分解に効果の高い酵素の発現を行う。
(2)ゲノム配列から予測されたピルビン酸以降の代謝に関与する遺伝子群のうち、LDH遺伝子が最も高発現であることがわかった。一方、培地に鉄を加えると、LDHの発現が抑制されることから、LDHの発現を抑制すること、すなわち乳酸の生成を抑制するように代謝を改変することが水素ガス増産には必要であることがわかった。今後遺伝子工学的にLDH遺伝子の破壊を含めた乳酸生成を抑制する代謝工学手法を確立する。
(3)ゲノム解析から本菌はキチン分解酵素が多数存在することがわかった。すでに3つの酵素については解析を終え、報告がされているがその他の酵素について、キチン分解での酵素的性質の検討、キチン分解時の役割、遺伝子発現の解析を行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

(1)培養のための培地成分や培養機器の消耗品等を購入する。とくにジャーファメンターによる培養には多くの培地試薬が必要となる。
(2)ゲノム遺伝子の解析のためのソフトとコンピューターを購入する。
(3)遺伝子発現解析のためのリアルタイムPCRキットなど遺伝子工学用の試薬類を購入する。試薬等高価なことから最も多くの予算を使用する計画である。
(4)その他、遺伝子組換え実験のため、使い捨てのプラスチック器具類を購入する。

  • Research Products

    (1 results)

All Other

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 嫌気性菌Clostridium paraputrificumの高発現ベクターの開発と代謝工学への応用

    • Author(s)
      大石琢馬、黒岩千智、佐伯謙二、粟冠真紀子、木村哲哉、粟冠和郎
    • Organizer
      日本農芸化学会第165回中部支部例会
    • Place of Presentation
      名古屋大学

URL: 

Published: 2014-07-24  

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