2011 Fiscal Year Research-status Report
好酸性細菌群による酸化鉄ナノ構造体形成を利用したレアメタル回収技術の開発
Project/Area Number |
23510104
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮田 直幸 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (20285191)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 好酸性鉄酸化細菌 / シュベルトマナイト / レアメタル / 金属資源回収 |
Research Abstract |
本研究では、好酸性鉄酸化菌による酸化鉄ナノ構造体の生産系を確立し、微生物形成した酸化鉄による金属イオン捕集機能を利用した効果的なレアメタル回収システムを開発する。H23年度は、酸化鉄を高効率で産生する微生物培養系(集積培養系)を構築するとともに、その培養系で鉄酸化を担う細菌群を特定することを目的とした。また培養系で産生される酸化鉄の結晶構造について調査した。 本研究の結果、酸性河川底質を植種として、第一鉄(Fe(II))および窒素・リン成分を添加した無機塩培地を用いた回分培養(pH 3、温度25度)により、7 mM Fe(II)を2日で酸化鉄に変換する集積培養系を得ることができた。粉末X線結晶回折法、透過型電子顕微鏡観察およびエネルギー分散型X線分析法により、集積培養系で形成された酸化鉄の鉱物形態はシュベルトマナイトと一致した。 この集積培養系からのFe酸化菌の単離を試み、β-プロテオバクテリア綱に属する新規細菌を分離することができた。16S rRNA遺伝子配列に基づくクローンライブラリー法で集積系の細菌群集構造を解析した結果、本菌は得られたクローンの8%を占め(92%は従属栄養細菌Acidiphilium属およびAcidocella)、集積系の主要なFe酸化細菌であると推察された。ジャーファーメンターを用いて増殖に及ぼすpHの影響を調べた結果、培養温度25度にて、本菌の最適pH=3.0付近、最大比増殖速度=0.078/hと算出された。また、pH 2.5および3.0ではシュベルトマナイトが形成していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、目的とする安定な鉄酸化集積培養系が得られたこと、その集積培養系で鉄酸化を担う細菌を分離して特定できたこと、および培養系で産生される酸化鉄の鉱物形態を特定できたことから、当初の計画に対して順調に進展しているといえる。分離された鉄酸化細菌は新規性が高いものと推察され、独自性をもちながら研究を進められると期待された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は単離株の増殖に及ぼす培養条件の影響について詳細に調査するとともに、酸化鉄の化学特性の解析を進める。さらに、種々の金属陰イオン(Se, W, Mo, Sb等のオキシ陰イオン)との相互作用を解析し、酸化鉄形成を利用した金属陰イオンの回収効率に及ぼす環境因子を特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
微生物培養装置(ジャーファーメンター)の購入と集積培養系の細菌群集構造の解析に対しての研究費の使用に際して、ジャーファーメンターは必要な機器性能を精査することで当初の予定額よりも低く抑えられ、また、当初予定よりも短期間で目的とする細菌を分離できたため、細菌群集構造の解析費用を最小限とすることができた。 次年度は、得られた単離株を用いた培養試験および各種金属イオンとの相互作用解析実験を効率よく進めるために、培養、分析試験の実験補助員を雇用し、研究の一層の推進を図りたいと考えている。消耗品としては、培養・分析試薬類、遠沈管等プラスチック器具類のほか、ICP-MS用アルゴンガス等を購入する。また成果発表旅費(日本水処理生物学会第49回大会、東京都、11月24-25日)および研究打合せ旅費(岡山大学、1回、9月)として利用する予定である。
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