2012 Fiscal Year Research-status Report
好酸性細菌群による酸化鉄ナノ構造体形成を利用したレアメタル回収技術の開発
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23510104
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮田 直幸 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (20285191)
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Keywords | 鉄酸化細菌 / レアメタル / 酸化鉄 / 資源回収 |
Research Abstract |
本研究では、好酸性鉄酸化菌による酸化鉄ナノ構造体の生産系を確立し、微生物形成した酸化鉄による金属イオン捕集機能を利用した効果的なレアメタル回収システムを開発する。本年度は、鉄酸化細菌の単離株を種々のpH、温度条件でバイオリアクターを用いて回分培養し、生成する酸化鉄の結晶構造に及ぼす培養条件の影響を明らかにした。また、生成した酸化鉄の金属イオン吸着特性を調査し、レアメタル回収技術への適用性を検討した。 pH制御下で単離株E1010株を培養し、粉末X線回折法により酸化鉄の結晶構造を解析した。その結果、培養温度25度、pH 2.5とpH 3.0では、シュベルトマナイトの生成が確認された。しかし、pH 3.5ではゲーサイトが混在し、さらに、pH 3.8及び4.2ではゲーサイトを主成分とすることが明らかになった。また、培養温度を37度に上昇させると、pH 3.0でもゲーサイトが混在し、pH 3.5ではゲーサイトが主成分となった。pH及び温度条件により酸化鉄の結晶構造は大きく影響を受けることが明らかになった。 培養温度25度、pH 3.0 で生成したシュベルトマナイトとpH 4.2で生成したゲーサイトの金属イオン吸着特性を調査した。pH 3.0~5.0の溶液中におけるAs(III)、As(V)、フッ化物イオンの吸着では、どのpHでもゲーサイトと比較して、シュベルトマナイトの吸着量が大きいことがわかった。25度、pH 4.0の条件でAs(V)およびMo(VI)に対する吸着等温線を作成した結果、ゲーサイトよりもシュベルトマナイトの吸着量が多いこと、さらにラングミュア式で解析した結果、シュベルトマナイトの最大吸着容量はAs(V)で303 ug/mg-Fe、Mo(VI)で335 ug/mg-Feに達し、金属イオンの優れた吸着材として機能することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は、単離株の増殖に及ぼす培養条件の影響について詳細に調査するとともに、生成した酸化鉄の化学特性の解析を進めること、さらにレアメタル等の金属陰イオンに対する吸着特性を明らかにすることであった。 培養温度とpHを制御したリアクター試験により、増殖と酸化鉄形成に及ぼす培養条件の影響を詳細に検討し、新規の知見として酸性条件でゲーサイトを主成分とする鉱物相が得られることを提示できた。またシュベルトマナイト、ゲーサイトをそれぞれ主成分とする酸化鉄を調製し、ヒ酸、亜ヒ酸、モリブデン酸、フッ化物イオンの吸着に及ぼす諸条件の影響を明らかにすることができた。 本年度の当初の目的はほぼ達成されており、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、鉄酸化細菌E1010株による酸化鉄生成の化学構造と金属イオン吸着特性について、さらに詳細な検討を行って研究成果の完成度を高める。化学構造に関する検討では各培養条件でシュベルトマナイトとゲーサイトの組成比を明らかにする。吸着特性に関する検討では、シュベルトマナイトとゲーサイトへの金属イオンの吸着メカニズムを解析するとともに、pHや温度に対する吸着性能の安定性を調査し、レアメタル回収への適用性を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
得られた単離株を用いた培養試験および各種金属イオンとの相互作用解析実験を効率よく進めるために、培養、分析試験の実験補助員を雇用し、研究の一層の推進を図りたい。消耗品としては、遠沈管等プラスチック器具類のほか、ICP-MS用アルゴンガス等を購入する。また成果発表旅費(日本水処理生物学会第50回大会、兵庫県、11月)および研究打合せ旅費(岡山大学、1回、9月)として利用する予定である。
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