2011 Fiscal Year Research-status Report
生分解性高分子周辺環境における微生物生態系解析と微生物叢制御
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23510110
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
粕谷 健一 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60301751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 熊野 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60504024)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 生分解性高分子 / 環境調和型高分子 / バイオフィルム |
Research Abstract |
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)分解土壌の細菌叢解析では、7ヶ月間の培養により、PBAT分解土壌とフィルム残査の細菌叢が異なっていた。これらの細菌叢には病原菌は含まれず、プロテオバクテリア門に属する菌種が多いことが示唆された。一方で、真菌叢の解析では、時間経過による菌叢の変化はなかったが、バンドは時間とともに薄くなった。16S rDNA、18S rDNA配列コピー数の定量は、この結果を支持した。これらを総合的に判断すると、PBAT-土壌系においては、細菌数は経時的に増加するが、一方で、真菌数が減少することが示唆された。また、PBAT分解土壌から単離したPBAT分解菌は、土壌群集解析結果である系統樹上の菌種と一致しなかった。このことから、PBATの分解に寄与する微生物が、フィルム表面で優性種にならないことが示唆された。 ポリ乳酸(PLA)フィルム上およびポリエチレン(PE)フィルム上で緑膿菌バイオフィルムを形成させると、PLAフィルム上の緑膿菌バイオフィルム量はPEフィルムのそれの約1/7.5であった。また、緑膿菌バイオフィルムの構成成分であるアルギン酸カルシウムゲルを111mM乳酸水溶液中で1時間保持すると、ゲル分率は処理前の67.3%に減少し、遊離カルシウム濃度は約15mMとなった。さらに、PLAフィルムを蒸留水中に浸漬開始から8時間後には、上清のpHが7.0から5.2へ、乳酸濃度は0から28.2nmol/mlになった。これらの結果から総合的に判断して、PLAによるバイオフィルム形成阻害は、PLAの加水分解で生じる乳酸のキレート効果により、アルギン酸とカルシウムとの結合が阻害されたために引き起こされたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画「生分解性高分子圏の微生物叢群集解析」および、「生分解性高分子圏(微生物―高分子分解物間)ケミカルコミュニケーションの解析」の項目に対して、おおむね目標を達成する成果が得られた。現在のところ、前者においては、LCMS装置の整備の遅れから若干当初予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、「生分解性高分子圏(微生物―高分子分解物間)ケミカルコミュニケーションの解析」を行う。ケミカルコミュニケーションに関わる化合物と微生物叢形成の生物応答を、分子生物学的手法により解析する。これには、フィールドサンプルを用いるPCR-DGGE法による群集解析と、フラスコ内での再構築系による遺伝子応答解析(転写解析など)を組み合わせて行う。 また、スクリーニングで得られた有効な制御因子(図中の高分子分解微生物によってもたらされる、一次分解物、二次代謝物以外の物質)に関しても、微生物叢形成に対するケミカルコミュニケーションを同様の分子生物学的手法により解析し、その有効性を評価する。生分解性高分子による環境微生物叢制御、およびこの生分解性高分子にブレンド可能な、生分解可能な微生物制叢形成制御因子(無機物、有機物、金属等、微生物)のスクリーニング環境微生物叢制御(有用菌種の集積制御);A)非共生型の窒素固定菌数を環境中で増すような因子のスクリーニングと基材(生分解性高分子)への固定化法の検討、B)病原菌抑制菌種の集積因子のスクリーニングと基材への固定化の検討、C)有用菌種の基材(生分解性高分子)への直接固定法の確立。芽胞の利用によるBacillus属の固定化。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画は、当初より5年間であり、現在、ほぼ予定通りの進行である。次年度も、本研究を遂行していくために、研究費を、消耗品費(化学試薬、培地等)に使用する予定である。
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