2012 Fiscal Year Research-status Report
生分解性高分子周辺環境における微生物生態系解析と微生物叢制御
Project/Area Number |
23510110
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
粕谷 健一 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60301751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 熊野 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60504024)
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Keywords | 生分解高分子 / 微生物分解 / 環境調和型高分子 |
Research Abstract |
昨年度の研究結果より、土壌中に生分解性高分子、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を埋設し、7ヵ月間30度で保持した後、PBAT周辺の微生物叢が、ある種の真菌が集積し、一方で多くの細菌の生育が抑制されることを見いだした。このことを受けて、PBAT表面上で細菌の生育阻害が起こるかどうかを検証した。検体として、グラム陰性細菌Pseudomonas aeruginosa、グラム陽性細菌Staphylococcus aureusを用いたところ、両者とも表面上に微生物コロニーを形成し、生育阻害はまったく見られなかった。さらに、PBAT分解物を含む土壌を用いて、ミニチンンゲン菜の生育試験を行った。結果として、分解物を含まないコントロール土壌を用いたものと、分解物を含む土壌との間で有為の生育差は見られなかった。この結果は、PBAT分解物による菌叢変化は、植物生育に影響を及ぼさないことを示唆している。また、Rycherらの報告(Biomacromolecules, 4, 839, 2010)による、PBAT分解物の無毒性と我々の結果を併せると、PBATは、農業資材としての用途に適しているといえる。 新たにPBAT分解細菌を土壌環境から単離し、その性質を詳しく調べた。本菌株は、遺伝系統解析より、グラム陽性細菌Rhodococcus属であることが判明した。本株は、PCR-DGGE解析より、分解中、優先種では無いことが判明した。また、本株は、PBATを加水分解できるが、分解物のテレフタル酸、アジピン酸をほとんど資化できないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度以降の目標のうち、3)農業資材に適した環境微生物叢制御型生分解性高分子の材料設計、および創成材料の植物生育への影響評価に関して、一応の成果が得られた。おおむね当初計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、新規農業基材の開発を目指して、下記項目をとり行う。 生分解性高分子による環境微生物叢制御、およびこの生分解性高分子にブレンド可能な、生分解可能な微生物制叢形成制御因子(無機物、有機物、金属等、微生物)のスクリーニング環境微生物叢制御(有用菌種の集積制御);A)非共生型の窒素固定菌数を環境中で増すような因子のスクリーニングと基材(生分解性高分子)への固定化法の検討、B)病原菌抑制菌種の集積因子のスクリーニングと基材への固定化の検討、C)有用菌種の基材(生分解性高分子)への直接固定法の確立。芽胞の利用によるBacillus属の固定化。また、微生物-高分子間のケミカルコミニュケーションにおいては、分子生物学的側面からの研究をを主に今年度行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画は、当初より5年間であり、現在、ほぼ予定通りの進行である。次年度も、本研究を遂行していくために、研究費を、消耗品費(化学試薬、培地等)に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)