2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510116
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
谷 誠治 山口大学, 理工学研究科, 講師 (60197514)
|
Keywords | 粘土鉱物 / 光分解 / 電子構造 |
Research Abstract |
昨年度は、電気的に中性なタルクとそのSi-0四面体シート内部のSi4+をAl3+に置換したモデル化合物の電子構造を計算し、主に粘土鉱物の原子電荷分布に及ぼす同形置換の影響を調べた。今年度は、より系統的に単位体積当りの同形置換数、すなわち、陽イオン交換容量(CEC)値の影響を検討するために、以下の量子化学的研究に取り組んだ。単層の合成サポナイトとして、二次元の周期境界条件を適用したPBCモデルと8つ以上のユニットセルを二次元に並べたスーパーセルに基づいた粒子モデルをそれぞれ構築し、様々な理論CEC値を持つサポナイトのHOMOの分布とエネルギー順位を調べた。その結果、両モデルはともに、理論CEC値が増加するにしたがってHOMOが外部表面のO原子に広がるとともにそのエネルギー順位が線形的に上昇することが明らかとなった。これは、サポナイトのCEC値が大きくなるとともに粘土粒子周囲に接近した分子に電子を供与する能力が高くなることを示唆している。また、粘土鉱物の電子構造に及ぼす水和の影響を調べるために、昨年度より計算コストが安価な半経験的量子化学計算(PM6ハミルトニアンを使用)を実施してきた。しかしながら、原子電荷分布(特にAl3+)に関しては密度汎関数理論に基づいた精密な量子化学計算と矛盾する結果が得られ、より精度の高いパラメータが必須であることが判明した。 一方、合成サポナイト存在下におけるローダミンBの光照射実験により、ジエチルアミノ基が光分解に関係していることが明らかとなったが、光分解に関与する他の化学構造因子が存在するかどうかを調査した。その結果、シアニン系有機色素では光異性化反応が生じていることを示唆する結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高CEC値を示すサポナイトが周囲に接近した分子に電子を供与する能力が高いことが明らかとなった。一方で、単層剥離した2:1型層状ケイ酸塩粘土鉱物の電荷分布に関して、昨年度までに使用した半経験的量子化学計算は密度汎関数理論に基づいた精密な量子化学計算と矛盾する結果を与えることが明らかとなった。現時点ではより精度の高い新しいパラメータが公開され、この矛盾が解決されていることも判明している。
|
Strategy for Future Research Activity |
合成サポナイト存在下における有機物の光分解機構を明らかにするために、精密な量子化学計算により有機色素と合成サポナイト間の電荷移動が有機色素の光分解に与える影響を調査する。また、新しいパラメータを用いた半経験的量子化学計算により、粘土鉱物の電子構造に及ぼす水和の影響、粘土鉱物と水和水との間の電荷移動量、および水和水の配向特性についても再検討する。 合成サポナイト存在下におけるローダミンBの光照射実験により、ジエチルアミノ基が光分解に関係していることが明らかとなったが、引き続き光分解に関与する他の化学構造因子が存在するかどうかを調査する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|