2012 Fiscal Year Research-status Report
鎖状分子を基本構造とするTeナノ粒子の階層構造と光学特性
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23510120
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池本 弘之 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20262496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
中村 和磨 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60525236)
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Keywords | ナノ粒子 / 階層性 / XAFS |
Research Abstract |
Teナノ粒子は、サイズが小さくなるにつれて鎖間相互作用が減少し、基本構造であるTe鎖同士の配置に乱れが生じる。すなわち、アモルファス化していると考えている。一般的にアモルファスは温度が高いとアニールされて結晶化する。そこで、我々は液体窒素温度でナノ粒子を作製し、温度を保ったままX線吸収微細構造(XAFS)測定している。室温で作製した試料と比較すると、共有結合長は大きく短くなり、鎖間配位数も大きく減少した。これらが大きく変化したにもかかわらず、以前に報告した鎖間配位数と共有結合長の相関は保たれていることも明らかになった。 XAFSを用いた局所構造解析法のナノクラスターへの正確な適用を目指した研究を行った。XAFSからクラスターの正確な構造情報を得るためには、光電子の平均自由行程をクラスターに最適化することが必要である。そこで、理論的に平均自由行程のクラスター粒径依存性を解析した。 密度汎関数理論に基づく第一原理分子動力学法を用いて研究を行うため、その準備として擬ポテンシャルの構築を行った。主にTeが目的の元素であるが、これと併せて階層的構造をもつと考えられるクラスターとして興味深い元素であるBiについて、密度汎関数理論に基づく第一原理分子動力学法を用いてBiクラスター(Bin, n=2-7)の研究を行った。偶数量体では非磁性の基底状態で、過去の計算結果と一致した。一方、奇数量体においては、価電子数が奇数であり、基底状態が磁性を持つことが明らかとなった。 第一原理乱雑位相近似計算に基づく光学スペクトル計算プログラムを作成した。作成コードを用いて、代表的な有機化合物・擬一次元金属 (TMTSF)2PF6 の反射率を計算したところ、電場偏光をa軸に取った場合のプラズマ周波数は 1 eV、ab 面内でかつ a 軸に垂直な場合は 0.2 eVであり、実験を再現することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体窒素温度でのその場Teナノ粒子作製・XAFS測定を行い、これまでよりもアモルファス的な構造パラメーターを得ることが出来た。したがって、当初の見込み通りに、液体窒素温度での実験は、Teナノ粒子の特質を際だたせることが出来た。 XAFS解析結果をアインシュタインモデルで解析することにより、Teナノ粒子の共有結合がナノ粒子では強いと考えてきた。より直接的な測定手段であるラマン分光測定を行ったところ、共有結合の伸縮モードに関連した波数ピークが高波数にシフトすることを発見した。このRaman測定により、XAFS測定から得られた推測を裏付けることが出来た。さらに、100cm-1付近にある2つのピークが、ナノ粒子サイズの変化に伴って強度が逆転することを見いだした。 X線吸収微細構造(XAFS)から配位数に関する構造情報を得るために、光電子の平均自由行程をクラスターに最適化し、様々なナノ構造に対して平均自由行程のクラスター粒径依存性を理論的に解析した。 階層的構造をもつと考えられるクラスターとして興味深い元素であるBiについて研究した。Biクラスター(Bin, n=2-7)に対して、密度汎関数理論に基づく第一原理分子動力学法を行った。偶数量体では非磁性の基底状態で、過去の計算結果と一致した。一方、奇数量体においては、価電子数が奇数であり、基底状態が磁性を持つことが明らかとなった。 第一原理乱雑位相近似計算に基づく光学スペクトル計算プログラムを作成した。とくに、低次元金属のスペクトルに対応可能なコードを作成した。作成コードを用いて、代表的な有機化合物・擬一次元金属 (TMTSF)2PF6 の反射率を計算したところ、実験を再現することが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではTeナノ粒子の作製・保管を室温で行っており、アニール効果により一部が結晶化している可能性が高い。アモルファス的であるTeナノ粒子の特質を明確にするために、アモルファス状態のまま測定する。そのために、液体窒素温度での、その場、試料作製・XAFS測定を実行する。さらに、200℃でのアニールを続けて行うことによりTeナノ粒子全体を結晶化させ、Teナノ結晶の構造についても検討を行う。種々のサイズのナノ粒子・結晶の蛍光XAFS測定を行い、構造パラメーターのサイズ依存性を求める。2次構造を反映するXANES測定結果をFEFF理論値と比較検討することにより2次構造についての知見も深め、Teナノ粒子・結晶における基本構造と2次構造の関係も検討する。 Te鎖の鎖内共有結合の伸縮モード(140cm-1)から、Teナノ粒子における鎖状分子の伸縮の力定数を求め、EXAFSのEinsteinモデル解析の結果を確定する。Teでは、二面角の符号並びによる鎖内の中距離構造や鎖間相関による階層構造が、ラマンスペクトルの100 cm-1以下の領域に強く反映される。第一原理計算から求めたパラメータを用いて、現象論的なモデルでRaman スペクトルを計算し、実験結果と比較検討する。実験と理論の両面からの検討により、Te鎖の折れ曲がりや、相互配置を明らかにする。 Teナノ粒子の光学特性、ラマン分光スペクトル、構造パラメーターなどを第一原理計算でシミュレーションを行う。Teナノ粒子の構造と物性に関して、実験と理論の両面から検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
XAFS測定では、プローブであるX線が当たっている試料部分の均一性が重要である。そのために、X線用のカメラを購入することを検討している。今年度前期のビームタイムで、X線カメラのテストを行い、導入の可否を決める予定である。
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