2011 Fiscal Year Research-status Report
熱刺激により生成する金ナノ粒子を用いる高感度ナノプローブの創製
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23510123
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
上原 伸夫 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50203469)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 熱応答性高分子 / 免疫センサー |
Research Abstract |
本研究は「熱応答性高分子を被覆した金ナノ粒子の融合現象」に関してその原理を化学的に解明し,さらにその原理に基づいて生体関連分子の計測プローブの開発を目指すものである。この融合現象自身は申請者らにより見出されたものであり,ナノサイエンスの新領域を拓くことが期待される。当然のことながら,この原理に基づいて設計,開発されたナノプローブには,これまでにない機能の発現が期待される。本研究の目的を遂行するにあたり,平成23年度はナノ粒子の融合現象について詳細に検討した。このために、透過型トンネル電子顕微鏡,動的光散乱,ゼータ電位測定,吸光光度法,および小角X線散乱を研究ツールとして用いた。小角X線散乱については連携研究者である千葉大学大学院融合科学研究科森田剛助教が主導的に研究を行った。千葉大学大学院融合科学研究科森田剛助教との共同研究により,以下の成果を得た。熱応答性高分子は溶液中での形態を変化させる温度(相転移温度,本研究で用いたポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)では約32℃)以上の温度において,融合現象が起こり温度の上昇とともにそれが進行していくことが明らかにされた。このことから,相転移現象というマクロ物性の変化とミクロな変化である融合現象とは直接関連していないことが示された。透過型トンネル電子顕微鏡での観察の結果,融合現象によって生成するナノ粒子の形状は当初想定されたものと異なり,多様であることが分かった。種粒子を用いる融合現象についても検討を行った。その結果,融合現象は単に,種粒子にナノ粒子が堆積するのではなく,溶解・再析出を繰り返すことで生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱応答性高分子を被覆した金ナノ粒子の融合現象については,千葉大学大学院融合科学研究科森田剛助教が行った小角X線散乱測定により,高分子の相転移と金ナノ粒子の粒子径との関係が検討され,ミクロスケールでの金ナノ粒子の成長とマクロスケールでの相転移現象との間には直接の相関がないことが示された。これは次年度の研究戦略の立案に対して重要な知見を与える。また,透過型トンネル電子顕微鏡による測定の結果,融合条件(高分子の濃度,加熱時間)を変化させることにより,融合現象の結果生じるナノ粒子が多様な形状を示すことが明らかになった。このことは,融合現象が単に,種粒子上にナノ粒子が堆積するのではなく,溶解・再析出を繰り返すことで生じることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,24年度以降は免疫センサーの開発について検討する。ただし,24年度の前半は23年度に引き続きナノ粒子の融合現象についても検討する。免疫センサーの開発においては,熱応答性高分子にセンシング部位を導入したものを合成し,これをナノ粒子に複合化させることで行う。また,25年度にはガラス基板上に固定化したセンシング部位に金ナノ粒子を捕捉させるセンサープレートを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既に,備品については23年度に導入しているので,24年度は主に消耗品の購入と成果発表のための旅費および研究を精力的に進めるための謝金に研究費を使用する。
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