2011 Fiscal Year Annual Research Report
直交的振動導入による表面上での酵素タンパク質の動的機能制御
Project/Area Number |
23510125
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川崎 剛美 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (60334504)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 酵素反応 / 振動効果 / パルス振動 / 反射干渉分光法 |
Research Abstract |
本研究では、基質あるいは酵素自身を固定化した基板を、縦方向あるいは横方向に振動させ、その周波数や波形を操作することで、表面における酵素の反応性などを制御することを目指した。まずは、縦方向に振動する基板を用い、その基板上での反応性制御を、振動によって制御することを試みた。はじめに、表面における酵素反応活性の評価システムの構築を行った。 はじめに、市販の圧電スピーカー素子に厚さ1mmの金属チタン板を導電接着した。この接着したチタン表面を陽極酸化し反射干渉分光法膜厚計測用の干渉層として機能する酸化チタン膜層を規定の厚さに形成させた。この厚み振動チップを用いて、表面における酵素反応を、基質タンパク質の表面に対する吸着、酵素の基質への結合、およびそれに引き続く基質の分解と酵素の脱離に伴う、表面結合タンパク質膜厚の変化として追跡する測定システムの構築をまず行った。このシステムを用い、圧電素子チップを様々なモードで振動させながら、複数の基質タンパク質とプロテアーゼの組み合わせで、振動モードに依存した酵素反応活性スペクトルを測定した。 様々な検討の結果、作成した素子の共振周波数である10.85MHzで数百kHzの頻度でパルス振動させると、パルス頻度に応じて酵素活性が増大もしくは減少することがわかった。 そこで、基質タンパク質として牛血清アルブミン(BSA)、カゼインを用い、プロテアーゼとしてサブチリシン、パパイン、サーモライシンを用いて、これらの基質と酵素の6個の組み合わせに関して、酵素活性における高周波縦振動(10.85MHz)のパルス振動効果(100kHz-900kHzの100kHz刻み)を調べた。 その結果、基質と酵素の組み合わせで、その活性パルス効果のスペクトルが大きく変わることがわかった。例えばBSAを基質とした場合、サーモライシンを加水分解酵素として用いると、100-600kHzの範囲において2割程度の活性向上が認められ、さらに900-1000kHzの範囲では4割程度活性が向上した。これに対し、同じ基質にサブチリシンを作用させた場合では、いくつかの帯域で大きく活性が低下することがわかった。400kHzではその活性は半分程度になり、800-1000kHzの帯域ではその活性は4割程度にまで落ち込んだ。また、同じ酵素を用いても基質に応じてそのパルス効果スペクトルは変化した。 生体の中では、多くの基質と酵素が混在している。以上今回得られた知見は、パルスをチューニングすることによって、複雑な反応系における特定の基質と酵素の組み合わせの活性を制御する方法論を提示する。このメカニズムは不明であるが、分子レベルでのこのようなパルス効果の研究はなく、新しい時代を開き得るものと期待できる。
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