2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510133
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
小柴 俊 香川大学, 工学部, 教授 (80314904)
|
Keywords | ナノ機能材料 / エピタキシャル成長 / 化合物半導体 / ヘテロ構造 |
Research Abstract |
24年度ではGaNAs/GaAsの多重量子井戸をpドープGaAs層とnドープGaAs層で挟んだp-i-n構造を作製した。p-i-n構造から電流注入による発光エレクトロルミンネッセンス(EL)を窒素温度と室温で初めて観測しGaNAs系材料の光・電子系デバイスへの適応性を明らかにした。またGaNAs/GaAsデジタルアロイ構造のシリコン基板への整合条件を探るため、Si基板の表面の自然酸化膜の除去条件を探った。除去には水素プラズマ照射と基板ヒータの高温化を用いた。 RHEED観察では酸化膜の除去が確認された。しかし成長物のSEM・TEM観察および高分解X線回折による評価では従来よりも窒素濃度の高い成長物の存在が確認されたがその結晶方位には乱れが観測されており、さらなる高温度が必要であるが装置の許容限界を超えており、高温度の実験を繰り返したことで基板ヒータに損傷を生じたため修理と改良を行なった。 さらに基板ホルダーの改良を行なった。 これらの成果は9月に” Electroluminescence of GaNAs/GaAs MQWs p-i-n junctions grown by RF-MBE using modulated nitrogen radical beam source”の題でMBE2012(日本国、奈良)において発表し、また論文をJournal of Crystal Growthに投稿し掲載が予定されている。 また10月に第2回Nano-S&T (中国、チンタオ)に出席し、“GaNAs/GaAs Nano Structures Grown by Modulated Nitrogen Beam Epitaxy and their Optical and Electrical Properties“の題で招待講演を行なった他、本研究に関する情報収集を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
窒素組成数%のGaNAs/GaAs多重量子井戸についてはそのp-i-n構造に関する光起電力、光吸収、発光等の実験からその電気的・光学的特性が明らかとなりつつある。しかしながら現在のところまだSi基板に整合する高窒素濃度のGaNAsのエピタキシャル成長には至っていない。SEMによる表面モフォロジー観察およびTEMやX線回折による結晶構造の測定からGaNの成長が確認されたもののその結晶方位はSi基板の方位に一致していないことが明らかとなった。これはSi基板の酸化膜の除去が不完全なため良好なエピタキシャル成長が出来なかったためであると考えられる。これまで当研究室で用いられてきたGaAs基板に比べ、本実験で用いるSi基板はその酸化物層が極めて強固に結合しており、HFによる酸化膜厚の低減の他、高温度による脱理や水素プラズマからの原子状水素照射による基板酸化膜の除去方法の確立が必要である。次に高周波(RF)プラズマから発生する原子状窒素の活性が当初の予想よりも小さいことが実験結果より考えられるため基板温度、窒素供給量についてさらなる検討が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
GaNAs/GaAs多重量子井戸p-i-n構造に関する研究をさらに続け、GaNAs量子井戸の電気的・光学的特性を明らかにする。 またエピタキシャル成長の前提条件であるSi基板酸化膜の完全な除去を行なうためには、高い基板温度と高密度・高流量の水素プラズマの照射が必要であるがMBE装置の限界に近く排気系の改良、基板ヒータの修理・改良が必要である。 現在基板ヒータの修理・改良のほか各温度コントローラの改良を行なっており、排気系についても荒引き用のロータリーポンプの増設をおこない、窒素および水素プラズマの使用条件を最適化した実験を行なう。 また基板ホルダーについても従来のインジウムを用いる方法では限界があるため新たにSi基板用のインジウムを用いない基板ホルダーを作製しており、これを用いた基板酸化膜の完全な除去を行なったエピタキシャル成長を実現する予定である。 成長物室の評価にはSEMによる表面形状の観測の他、X線回折による結晶方位の観察を用い、成長中にはRHEEDによるその場観察も用いる予定である。 良好なエピタキシャル膜が実現した場合にはPL測定、光吸収測定などの光学的特性の評価やpドープやnドープ層の作製および電気的特性の評価を行なう予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に高温度成長および老朽化によって破損したMBE装置の修理および改良をおよびSi基板用のMoブロック基板ホルダーの作製に使用する。 残りは実験遂行に必要なSiおよびGaAs基板、液体窒素、ガスケット等の消耗品の購入に用いる。
|