2012 Fiscal Year Research-status Report
実使用環境下における燃料電池電極触媒劣化過程のその場観察
Project/Area Number |
23510136
|
Research Institution | Japan Automobile Research Institute |
Principal Investigator |
清水 貴弘 一般財団法人日本自動車研究所, FC・EV研究部, 研究員 (90409657)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 大地 一般財団法人日本自動車研究所, FC・EV研究部, 研究員 (40426276)
|
Keywords | その場観察 / 電極触媒 / 燃料電池 / ナノ材料 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
自動車用固体高分子形燃料電池では、電極触媒としてPtナノ粒子を高比表面積を有する導電性カーボンブラックなどのカーボン担体に高分散担持したもの(Pt/C)が広く用いられている。これまでの研究から、発電性能に大きく影響を及ぼすのはカソードであり、Pt/Cの劣化はPtナノ粒子の粒成長・凝集、担体からの脱落、担体の腐食などの構造変化に起因すると考えられている。そのため本研究では、実使用環境としてカソードを模擬した空気雰囲気を設定し、構造変化過程を透過電子顕微鏡を用いてその場観察することにより、Pt/Cの劣化メカニズムを明らかにすることを目的とした。 平成23年度にはPt/C単体のその場観察を実施し、高湿度空気雰囲気ではPt粒子の移動により凝集・粒成長が進行し、乾燥空気中ではカーボン担体の収縮が先行する構造変化を確認した。したがって、Pt/Cの構造変化による劣化メカニズムとして、空気中の水分がPtを活性化し、担体腐食に影響を与えることが示唆された。 平成24年度は、燃料電池における触媒層と同様にフッ素系固体高分子電解質で被覆したPt/Cのその場観察を行い、Pt粒子および担体カーボンの構造変化の観察とその考察を行った。その結果、高湿度空気雰囲気ではPt粒子の移動により凝集・粒成長が進行し、乾燥空気中ではカーボン担体の収縮が先行する構造変化が認められた。したがって、電解質被覆の有無にかかわらず、空気中の水分がPtを活性化し、担体腐食に影響を与えるPt/Cの構造変化メカニズムが成立することがわかった。一方、電解質被覆により構造変化が緩やかとなったことから、電解質はPt粒子および担体カーボンを保護し、構造変化に起因する劣化を軽減する役割を果たすことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は電極触媒を燃料電池の実使用環境と同様に電解質で被覆した状態でその場観察し、構造変化過程の観察を実施した。高湿度および乾燥空気雰囲気においてカーボン担体および白金ナノ粒子の構造変化に与える電解質の役割を明らかにすることができたことから、本研究の進捗状況がおおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で電極触媒単体および電解質被覆した電極触媒の構造変化過程を観察し、基本的な劣化メカニズムを明らかにすることができた。平成25年度はこれまでの観察結果から得られた電極触媒の構造変化過程をより詳細に検証し、構造変化に影響を及ぼす因子を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は前年度からの繰越予算を活用し、その場観察実験の回数を当初予定よりも増加させることができた。また、情報収集および成果発表も順調に実施することができた。平成25年度も同様に電極触媒のその場観察を実施するための装置使用料および旅費を中心に研究費を使用し、研究の進展を図る。
|