2012 Fiscal Year Research-status Report
半導体プロセスによる極狭スリット細胞分離マイクロ流路形成と単一細胞分離構造の融合
Project/Area Number |
23510141
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松谷 晃宏 東京工業大学, 技術部, 技術専門員 (40397047)
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Keywords | 単一細胞 / 細胞分離 / バイオチップ / プラズマプロセス / リソグラフィ |
Research Abstract |
従来の生化学的技術では細胞集団の分析であるため,多くの細胞から得られる平均値のみを情報として得ていた。しかし,個々の細菌細胞の振る舞いは異なるため細胞毎に研究する必要がある。これまでに,単一の細菌細胞を分離する技術として2次元配列されたマイクロピラーを囲いとして用い,大腸菌細胞を囲い中に捕獲し単一分離することに成功した。また,マイクロ流路などの他の要素技術との融合など,大きさが異なる複数の細菌細胞を単一分離することが必須となるため, 2次元マイクロピラーアレイ構造を用いたマイクロ囲いでサイズ分離チップを製作し,ポリスチレンビーズを用いてその有効性を確認した。 平成24年度は,このマイクロ囲いアレイのチップを用いて,大きさの異なる大腸菌と酵母について単一細胞分離とサイズ分離に成功した。 サイズ分離の原理は,マイクロピラーの直径と間隔を捕獲する細胞の大きさとの関係を考慮した2次元囲い構造を製作し,これに異なるサイズの細菌細胞を含んだ液体を滴下し,細菌細胞の自重による沈降とチップの傾斜や濾紙等を用いた吸引で液体の流れを形成することにより,細菌細胞のサイズ分離と単一細胞分離を同時に実現するという方法とした。マイクロピラー構造は,InP基板上に電子線露光装置を用いて製作したレジストパターンをマスクとして,ヨウ素系の誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング装置を用いて製作した。また,レジストの除去は酸素プラズマで行い,同時にチップ表面の親水化も行った。大腸菌と酵母の懸濁液を本チップに滴下し,上記で提案したプロセス後の細胞分離の結果,本手法で大腸菌と酵母のサイズ毎の分離が実現できていることがわかった。 本研究で提案している2次元マイクロ囲い構造の最適化により,多種の細菌細胞の単一分離とサイズ分離が同時に実現できるチップが製作可能であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌のサイズはミクロンオーダーであるが,細胞にストレスを加えることなく分析などができるような単一細胞操作技術の開発が重要である。 本研究では,リソグラフィやドライエッチングなどの半導体プロセスを駆使することにより,サブミクロンサイズのマイクロピラー構造を任意のマトリックス状に並べ,単一細胞操作の基礎的実験を行いその実現を目指している。とくに気液分離の極狭スリットマイクロ流路の形成には,平成23年度にAr/F2エッチングのプロセスを用い,新しい半導体プロセス技術の開拓も行った。使用する菌は主に大腸菌や酵母とし,光学顕微鏡,蛍光観察,電子顕微鏡も用いて細菌の分布状況や表面状態を観察して考察した。平成24年度は,このマイクロ囲いアレイのチップを用いて,大きさの異なる大腸菌(Escherichia coli)と酵母(Saccharomyces cerevisiae)について単一細胞分離とサイズ分離に成功した。具体的には,単一細胞分離構造からの細胞取り出し技術として,これまでに大腸菌細胞の単一分離に成功しているマイクロピラー囲い構造を応用し,大きさの異なる囲い構造を並列に多数配置して,様々な大きさの細胞が混入している培養液についても大きさ毎の単一細胞分離が可能なような最適配置について,細菌密度,流速等を考慮した実験を行うことを目標にしていたが,電子ビームリソグラフィとドライエッチング技術を用いて製作したチップにより,大きさの異なる大腸菌と酵母のサイズ分離と単一分離を両立することに成功し,予定していた研究結果を概ね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,単一細胞の輸送技術については,マイクロピラーアレイ構造上での細胞輸送と上記単一細胞分離構造との融合チップの製作を目標としたプロセス技術の開発を行う。 細胞輸送はマイクロピラーをアレイ状にびっしりと敷き詰めた平面上で行うことを想定する。それぞれのマイクロピラーの間の距離は1μm程度の大きさの細菌細胞が落下しないように1μmからサブミクロンとする。マイクロピラーアレイの材料は石英または樹脂とし,ドライエッチングプロセスによりマイクロピラーの先端を球状に微細加工して先球ファイバー形状とし,裏面からのレーザ光の集光スポットに細胞をトラップし光ピンセットの機能をもたせることを想定する。 平成25年度は初めに石英マイクロレンズのドライエッチングによる加工条件の最適化を行う。これには,Ar, Xe等のプラズマを用いたドライエッチングを試み,それぞれのプラズマによるレンズ形状製作したマイクロレンズの形状との関連を明らかにする。所望の形状のマイクロレンズアレイが製作できれば,その光学特性をレーザ光を集光することで評価し,トラップが可能かどうかは初めにポリスチレンビーズで検証する。これに成功すれば細胞をトラップする実験を行い,裏面のレーザ光源の位置を走査することにより順次移動し任意の位置へ誘導できるものと考えられる。また,透過型構造のマイクロピラーアレイを製作し裏面からの光学的距離の最適化実験も行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度から24年度の成果を学会や論文等で発表する。また,平成25年度に得られた結果についても随時学会や論文等で発表する。 研究実験で用いる物品については,光学観測用の部品,ドライエッチングプロセスで用いる材料および真空部品,実験データ取得・処理用および画像処理用にPCの購入を予定している。
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Research Products
(8 results)