2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞類似型マイクロ化学システムをめざした次世代人工細胞膜モデルの研究
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23510143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 幸久 信州大学, 工学部, 准教授 (40243042)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リポソーム |
Research Abstract |
本研究では,細胞内小器官に相当するサブシステムを有する次世代人工細胞モデルとして,内部に巨大ベシクルを保持する巨大ベシクル(オリゴベシキュラーベシクル(OVV))を考え,OVVの形成と修飾・機能化手法の開発をおこない,その可能性,問題点,限界を明らかにするとともに,実証のため,比較的シンプルな化学反応系を組み込んだ次世代人工細胞のコンセプトモデルの構築を試みることを目的としている. 平成23年度にはOVV形成方法の開発として,第三物質の添加による巨大ベシクルの形態変化を用いたOVV形成において,形態変化誘起能を持つ物質群の検索および母ベシクルである巨大ベシクル側の状態の影響など誘起条件に関する検討をおこない,ハロゲン化物イオンのイオン半径と誘起能との相関を見いだすなどの成果を得た.これらの成果は未だ明らかでないこのOVV形成誘起現象の機構解明にあたり重要となる知見である.またこれとは異なるOVV形成方法として,マイクロマニュピレーションにより巨大ベシクル膜を直接変形しOVV形成に導く手法について検討をおこない,従来よりも確実にOVVを得ることができる条件を明らかにした.これは本OVV形成手法を次世代人工細胞モデル構築に応用するにあたり重要な成果である.その他に,エレクトロフォーメーションにより巨大ベシクルの形成を小さなベシクルを共存させた状態でおこなうことでOVVを得る手法についてその可能性を検討し,可能ではあるが現状では効率の良いOVV形成にはさらなる改良が必要であることを示す結果を得た.また,タンパク質等種々の物質のOVVへの内包を試みその可否を明らかにした.これは,次世代人工細胞コンセプトモデルの構築にあたり必要な予備的な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」のうち,OVVの形成と修飾・機能化手法の開発をおこないその可能性,問題点,限界を明らかにする点に関しては,平成23年度に実施を計画した事項は達成している.また,実証のため比較的シンプルな化学反応系を組み込んだ次世代人工細胞のコンセプトモデルの構築を試みる点についても,当該年度に実施を計画した範囲の予備的な知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画に従って今後の研究を推進する予定である. OVVの形成と修飾・機能化手法の開発に関しては,平成23年度における成果から有望であることが明らかとなったマイクロマニュピレーションによるOVV形成についてさらに検討をおこない,より実用的なものとなるように改良を試みる.また,同様に知見が必要であることがわかった巨大ベシクル形成の温度への依存についても検討を実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度未使用額が生じた主な理由は,平成23年度申請時に購入を計画した顕微鏡カメラ装置よりもより高い性能を持つ新型カメラ装置が交付申請後に発表され,この新機種の導入により本研究の遂行に必要である性能を持つ顕微鏡カメラシステムを計画よりも少ない費用で構築することができたためである. 次年度には,当初の計画にある比較的シンプルな化学反応系を組み込んだ次世代人工細胞のコンセプトモデルの構築の試み,および化学システムを構成する単位反応および物質移動等の挙動に関する予備検討に使用するとともに,平成23年度の成果を受けて実施することとしたマイクロマニュピレーションによるOVV形成のさらなる検討と改良および巨大ベシクル形成の温度への依存に関する検討にも充当する.直接経費として,物品費2,500,000円(改良型巨大ベシクル形成装置の作成,巨大ベシクル原料脂質等の試薬,マイクロマニュピレータ維持部品,顕微鏡装置維持部品,超純水製造装置維持部品,プラスチック・ガラス器具などの消耗品の購入),旅費100,000円(国内学会への2回の参加),その他90,499円(研究遂行に必要な図書・資料の収集),計2,690,499円を計画している.
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