2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞類似型マイクロ化学システムをめざした次世代人工細胞膜モデルの研究
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23510143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 幸久 信州大学, 工学部, 教授 (40243042)
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Keywords | リポソーム |
Research Abstract |
「細胞類似型マイクロ化学システム」(人工細胞)の高度化には,細胞内小器官に相当するサブシステムを持った従来にない次世代人工細胞膜モデルが必須である.このサブシステムを持つ次世代人工細胞モデルとして内部に巨大ベシクルを保持した巨大ベシクル(オリゴベシキュラーベシクル(OVV))を考え,OVVの形成と修飾・機能化手法の開発をおこない,その可能性,問題点,限界を明らかにすることを目的として研究をおこなった. 平成24年度には,当初の計画どおり,巨大ベシクル系への機能分子の組み込みにあたっての指針を得るための諸検討をおこなった.まず,シンプルな化学システムを組み込んだモデルの構築を試みるにあたり必要となる人工基質分子の設計をおこなった.さらに,化学システムを構成する単位反応に関する予備的検討をin vitroにおいておこなった.また,巨大ベシクルにおけるベシクル内部への物質移動速度に関する検討をおこなった.これらの検討により,実際の反応系構築の試みが可能となった. OVVの形成手法に関しては,マイクロマニュピレーションによるOVV形成において形成成功率が低下する原因について前年度からさら検討・考察を進め,その結果に基づいた手法の改良をおこなうことによって,従来と比較して2倍程度高い成功率でOVV形成を誘起することが可能となる条件を見いだした.これにより,マイクロマニュピレーションによるOVV形成の有用性を高めることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的である,OVVの形成と修飾・機能化手法の開発に関しては,これまでに手法の問題点に関して検討・考察をおこない手法の改良を進めてきている.また,比較的シンプルな化学反応系を組み込んだ次世代人工細胞のコンセプトモデルの構築の試みに関しては計画のとおり予備的な検討が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画のとおり,最終年度である平成25年度にはこれまでに得られた結果を基にして,シンプルな化学システムを組み込んだOVVを用いた次世代人工細胞コンセプトモデルの構築を実際におこない,その過程で本システムの有効性および問題点等を明らかにする.問題点に関しては可能な範囲において改良のための検討をおこなう.反応速度,物質移動など化学工学的視点からも解析を試み,マイクロ化学システムとしての知見を得る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度未使用額が生じた理由は,平成23年度申請時に購入を計画した備品(顕微鏡カメラシステム)が計画よりも少ない費用で構築できたため,および平成24年度の研究が当初計画で見込んだよりも安価に完了したためである.次年度には,当初の計画にある比較的シンプルな化学反応系を組み込んだ次世代人工細胞のコンセプトモデルの構築の試みおよびマイクロマニュピレーションによるOVV形成のさらなる検討と改良および巨大ベシクル形成の温度への依存に関する検討に充当する.直接経費として,物品費2,600,000円(温度制御型巨大ベシクル形成装置,巨大ベシクル原料脂質等の試薬,マイクロマニュピレータ維持部品,顕微鏡装置維持部品,超純水製造装置,プラスティック・ガラス器具などの消耗品の購入),旅費100,000円(国内学会への2回の参加),その他126,379円(研究遂行に必要な図書・資料の収集,成果取りまとめ・発表),計2,826,379円を計画している.
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