2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510157
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牧本 直樹 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (90242263)
|
Keywords | 極値理論 / 相関 / 多変量分布 / 金融データ |
Research Abstract |
今年度は,時系列構造によって多変量データの相関構造が変動する動学的な極値相関モデルに関する研究を中心に行った.このうち,マルコフ型のレジームシフトに応じて相関係数行列や誤差共分散行列が変動する多変量時系列モデルでは,空間的な漸近理論の観点からは,多変量データの相関は誤差相関によって支配されており,変動の大きさに応じて相関が変動するような構造は生じないことが明らかになった.ただし,金融データを実証的に分析した例の中には,現実に起こり得る変動の範囲内では,変動が大きくなるにつれて相関が高まるケースも観察された.これは,実際のデータ変動が漸近理論が適用されるほど大きくないためと考えられ,そのような状況では,レジームシフトモデルが極値相関のモデルとして機能し得ることを示唆している.また,時間の経過に伴うデータの変動幅の拡大については,確率的な上界を導出することができるため,それと比較することで実データが漸近理論が適用される範囲かどうかはある程度判断できるものと考えられる.次に,多変量GARCHモデルを利用した数値シミュレーションおよび実証分析では,データ変動の増加に伴い相関も増加する傾向がある程度観察されたが,相関の増加の仕方は必ずしもデータと一致するものではなかった.ただし,多変量GARCHモデルにはさまざまなバリエーションがあるため,極値相関に対する説明力の高いデータと多変量GARCHモデルの組合せについては,さらに分析が必要と考えられる.また,多変量GARCHモデルの極値相関の漸近理論については理論的な結論が得られていないため,次年度の課題として取り組む予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの2年間で,領域依存相関モデルと動学的相関モデルそれぞれについていくつかのモデルを構築し,理論的な特性やデータを用いた実証的な分析を行ってきた.その結果,いくつかのモデルでは,データ変動の増加に伴って相関も増加する傾向が観察されているが,実データの極値相関を十分説明できるまでには至っていない.理由としては,モデルパラメータの推定が平均や分散,誤差相関係数などをもとに行われ,極値相関の情報が直接的には利用されないことが考えられる.この点をどのように克服して適合度の高いモデルを構築していくか,あるいはパラメータ推定をどのように行うかについては,当初の計画に加えて次年度中に行う予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,次年度は応用研究を中心として行う予定となっていたが,金融データに関する実証分析はこれまでの2年間で一部前倒しで行ってきた.そのため,応用研究は気象データとこれまで取り扱っていない金融データを中心に当初の計画に沿って予定である.一方で,一部のモデルで理論的な性質が明らかになっていないため,その点を引き続き分析すること,および実データとモデルで極値相関の適合性を高めるための工夫についても研究を進める予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ購入に充てる研究費に関しては,最新データが揃うタイミングで購入するため,次年度の研究費が発生している.次年度は応用研究を中心とするため,繰り延べた研究費も含めてデータの整理や分析を中心に使用する予定である.また,最終年度のため研究成果の報告や印刷等にも使用する予定である.
|
Research Products
(2 results)