2011 Fiscal Year Research-status Report
市場不具合データ解析とそのコンピュータシミュレーションでの活用による品質確保
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23510158
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 秀 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60260965)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 品質不具合 / 実験計画法 / 言語データ解析 / コンピュータシミュレーション / 技術支援ソフト |
Research Abstract |
本研究では、市場における品質不具合発生の未然防止をねらいとして、品質不具合データの解析方法と、その解析結果をもとに設計段階でコンピュータシミュレーションを効果的に計画、活用する方法を提案する。ここでの品質不具合データとは、不具合、事故、リコールなどの現象、原因を記述したものであり、その例は製品評価技術基盤機構や国土交通省のホームページで公開されている情報である。本研究では、コンピュータシミュレーションそのもの開発ではなく、それを不具合防止のために効果的に活用する分野横断的な方法の提案を目的として研究を進めている。これまでに、不具合データを解析する方法について、不具合の発生可能性が高いために設計審査で検討すべき項目を列挙する方法や、どのように製品設計をすれば安全が確保できるのかなどを示している。平成23年度では上記の拡張に加え、より不具合が列挙しやすい技術的知見の反映方法や、言語データから数値データへの変換方法などを検討している。これまでの研究で一定の成果が得られているものの、技術的知見の導入方法や、他の言語データ解析方法や数値データ解析方法をより精密に検討している。なお事例については、これまでと同様にウェブで公開されているデータに加え、技術開発支援ソフトウエアについ新たに含めている。また不具合防止を目的としたコンピュータシミュレーションによる品質の確保について、実験計画法のコンピュータシミュレーションへの適用を、不具合の防止、品質の確保という着眼点から発展させている。不具合が使用者の使用環境によって発生する可能性がある場合には、使用環境についての膨大な組合せを効率的に探索する必要があり、このためにどのような実験計画がよいかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次に示す研究成果を公表できた点、萌芽的な研究を進めた点などを考慮すると、おおむね順調に進展していると判断できる。不具合情報をどのようにまとめるかという点について、昨年度までの研究を拡張し、より不具合が列挙しやすい技術的知見の反映方法や、言語データから数値データへの変換方法などを検討している。また、プロセスにおける不具合の結果として事故が発生する点を鑑み、火災事故の発生を分析している。これは、廃棄物を対象にしたもので、杉山、山田(2011)に掲載されている。また、不具合情報を組織的に展開するには、品質機能展開のように方針を可視化する道具が有益であり、また具体的な不具合対策の絞り込みにはFMEAが効果的である。前者の例として、品質機能展開を環境問題に応用したOtani and Yamada (2011)を発表している。また後者は、Inoue and Yamada (2010)で発表していて、その継続研究も実施している。加えて、技術開発支援ソフトを例に取り上げ、不具合の未然防止を含む品質評価モデルの研究も始め、Takahashi and Yamada (2011)でその成果を発表している。一方、コンピュータシミュレーションによる実験計画の開発について、Yamada (2011)では不具合の起きない領域を探索する実験計画を検討している。またNiki, Iwata, Hashiguchi and Yamada (2011)の中で過飽和実験計画の構成を議論している。このようにいくつかの側面からの研究は順調に進展しているものの、全体をつなげるような意味での研究が欠けている。このような点で「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と同様に、(a)広い意味での市場不具合データの解析方法と(b)コンピュータシミュレーションによる品質確保について研究を進める。先に示したように、平成23年度は全体をつなげる意味での研究が欠けていたのでこの視点を意識して研究を進める。さらに、平成24年度からは実務的な要請をより深く考慮する。日本品質管理学会の研究会や、名古屋地区の品質管理研究会など、実務家との接点を活用する。例えば2004年には、山田編著、葛谷、澤田、久保田、「実験計画法-活用編-」、日科技連出版社から出版した。この書籍において申請者以外は自動車産業の実務家である。このような接点を保ちつつ、理論的に妥当で実務に役立つ方法としてまとめる。品質不具合データの解析、コンピュータシミュレーションによる品質確保ともに、実務家と連携して事例研究も進める。これらと同時に、(a), (b)を総合的に役立つ方法としてまとめるために、市場データの解析結果をどのようにまとめるとコンピュータシミュレーションによる品質確保が容易になるか、あるいは、相乗効果がえられる活用方法は何かなどを検討する。例えば、市場データ解析からは、市場品質不具合が発生する可能性がある部品、機構などが多数導き出される。列挙されたものすべてについて、設計段階で不具合を確認するのが困難なので優先順位付けをして、より重要と判断されたものについて、徹底的にコンピュータシミュレーションで検討する必要がある。この優先順位は、基本的には故障モードと影響度解析(FMEA)のように、頻度と致命度を技術的知見から決める。その際、FMEAを研究開発プロセスで適用したように、過去のデータなどを元に定量的に決定する方法が考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で必要となる設備はコンピュータであり、これは既存のコンピュータを用いる、あるいは、メモリー増設などをして用いることで対応する。また事例については、製造技術者の方のコンピュータ上でシミュレーション実験などを行う。したがって、この研究期間に必要となる備品はなく、消耗品、研究旅費が主となる。研究旅費については、企業技術者との打ち合わせだけでなく、研究成果の発表などを想定している。研究の進め方に大きな変化はないので、消耗品費、研究旅費、謝金、その他費用は、平成23年度とほぼ同額と計画する。なお23年度研究費はほぼ計画どおり使用したが、若干、次年度使用額が生じた。24年度はその分を併せて消耗品、研究旅費、謝金、その他費用を計画する。
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