2012 Fiscal Year Research-status Report
市場不具合データ解析とそのコンピュータシミュレーションでの活用による品質確保
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23510158
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 秀 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60260965)
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Keywords | 品質不具合 / 実験計画法 / 情報セキュリティインシデント / コンピュータシミュレーション / 言語データ解析 |
Research Abstract |
本研究では、市場における品質不具合発生の未然防止をねらいとして、品質不具合データの解析方法と、その解析結果をもとに設計段階でコンピュータシミュレーションを効果的に計画、活用する方法を提案する。ここでの不具合データとは、不具合、事故、リコールなどの現象、原因を記述したものである。さらに製品評価技術基盤機構や国土交通省のホームページで公開されている情報である。また、情報セキュリティインシデントなども含まれる。本研究では、これらの不具合防止のために効果的に活用する分野横断的な方法の提案を目的として研究を進めている。 これまでに不具合データを解析する方法について、不具合の発生可能性が高いために設計審査で検討すべき項目を列挙する方法や、どのように製品設計をすれば安全が確保できるのかなどを示している。平成25年度では上記の拡張に加え、より不具合が列挙しやすい技術的知見の反映方法や、言語データから数値データへの変換方法などを検討している。さらには、不具合をマネジメントシステムで防止するという立場から、情報セキュリティマネジメントシステムを取り上げ、そのインシデントの発生原因事例の分析をし、不具合防止のために何が必要になるのかを導いている。加えて、不具合の未然防止がうまくいかない場合の最たるものとして事故があげられるという着想から、エアゾール缶収集に伴う事故の発生を取り上げ、この現状把握、事故に至るまでの意識の変化などについても検討している。 統計的な側面からは、また不具合防止を目的としたコンピュータシミュレーションによる品質の確保について、実験計画法のコンピュータシミュレーションへの適用を、不具合の防止、品質の確保という着眼点から発展させている。その際、使用環境についての膨大な組合せを効率的に探索する必要があり、このためにどのような実験計画がよいかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究対象を充実化させる研究については学会誌への採択なども決まり、期待以上の進捗であった。一方、コンピュータシミュレーションでの作りこみについては、いくつかの試みはしているものの、期待をやや下回るような状況である。総合的にみると、おおむね順調に進捗していると考えられる。 まず、プロセスにおける不具合の結果として事故が発生する点を鑑み、エアゾール缶収集時の火災事故の発生を分析している。過去に杉山、山田(2011)が現状分析を実施し、さらにそれを不具合防止のための意識調査という視点から杉山、山田(2013)が検討をしている。また不具合を上流段階で未然防止するという立場から、研究、開発段階にも着眼して研究を進めている。この成果は、Inoue and Yamada (2013)に掲載されている。この研究では製薬業界の研究開発を取り上げ、不具合未然防止の重要な要因として、トップのリーダーシップに加え、自動化による未然防止、データに基づく管理などを示している。さらに、江口、山田(2013)では、不具合を仕組みで防止するという視点に立ち、マネジメントシステムの効果の検証をしている。対象は、情報セキュリティマネジメントシステムであり、ISO 27001認証取得が種々のインシデント発生にどのような効果を及ぼすかについて、いくつかの事例をもとに検討している。 一方、コンピュータシミュレーションによる実験計画の開発について、昨年度研究発表したYamada (2011)を発展するべく種々の検討を実施している。例えば、多次元空間を効率よく探索する実験計画などを検討している。この課題については25年度中に発表ができなかった。これらを総合的に踏まえ、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度と同様に、(a)広い意味での市場不具合データの解析方法と(b)コンピュータシミュレーションによる品質確保について研究を進める。平成25年度は最終年度でもあり、全体をつなげることを意識して研究を進める。さらに、平成25年度からは実務的な要請をより深く考慮する。日本品質管理学会の研究会や、名古屋地区の品質管理研究会など、実務家との接点を活用する。例えば2004年には、山田編著、葛谷、澤田、久保田、「実験計画法-活用編-」、日科技連出版社から出版した。この書籍において申請者以外は自動車産業の実務家である。このような接点を保ちつつ、理論的に妥当で実務に役立つ方法としてまとめる。品質不具合データの解析、コンピュータシミュレーションによる品質確保ともに、実務家と連携して事例研究も進める。これらと同時に、(a), (b)を総合的に役立つ方法としてまとめるために、市場データの解析結果をどのようにまとめるとコンピュータシミュレーションによる品質確保が容易になるかを検討する。また、相乗効果がえられる活用方法は何かなどを検討する。例えば、市場データ解析からは、市場品質不具合が発生する可能性がある部品、機構などが多数導き出される。列挙されたものすべてについて、設計段階で不具合を確認するのが困難なので優先順位付けをして、より重要と判断されたものについて、徹底的にコンピュータシミュレーションで検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で必要となる設備はコンピュータであり、これは既存のコンピュータを用いる、あるいは、メモリー増設などをして用いることで対応する。また事例については、製造技術者の方のコンピュータ上でシミュレーション実験などを行う。したがって、この研究期間に必要となる備品はなく、消耗品、研究旅費が主となる。研究旅費については、企業技術者との打ち合わせだけでなく、研究成果の発表などを想定している。研究の進め方に大きな変化はないので、消耗品費、研究旅費、謝金、その他費用は、平成24年度とほぼ同額と計画する。
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