2011 Fiscal Year Research-status Report
客の待ち時間に制限がある待ち行列システムの基礎研究
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23510160
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
河西 憲一 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50334131)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | システム工学 / 待ち行列理論 / 応用確率論 / モデル化 / 性能評価 |
Research Abstract |
本研究課題では客の待ち時間に制限のある待ち行列システムについての基礎研究を実施した。本研究課題に関連して国内外で主に、1)客の制限待ち時間は一定、ないし指数分布に従う場合、2)客の到着はポアソン過程、サービス時間は指数分布に従う場合、の大きく2つの特徴を有する場合が検討されてきた。平成23年度の本研究課題の取り組みとして、1)の条件を緩和し、さらに客が相関のある確率過程に従って到着する場合について補助変数法によりマルコフ過程として定式化し、定常待ち行列長分布について検討した。さらに、システム容量が有限の待ち行列システムに限定して、待ち行列長分布と性能評価指標を算出するアルゴリズムの開発を目指した。その結果、次の成果と知見を得た。相関のある確率過程としてマルコフ型到着過程を、サービス時間として指数分布を、客の制限待ち時間として一般分布(一定分布や指数分布を含む)を仮定し、定常状態での待ち行列長分布についての大域平衡方程式を補助変数法の考え方に従ってマルコフ過程として定式化し、待ち行列長分布が満たすべき積分微分方程式を導出した。その結果、制限待ち時間が指数分布に従う場合について定常待ち行列長分布と待ち行列システムの性能評価指標を算出するアルゴリズムを構成できた。具体的な応用例として、ポアソン過程に従って客が到着し、さらに再呼入力も加わるコールセンターのモデルを検討し、待ち行列長の定常分布やコールセンターにおける到着客(再呼客も含む)の待ち時間分布、待ち率、客が途中放棄する確率など、コールセンターの性能解析上有用となる性能評価指標を導出した。また、関連する待ち行列システムとして、アーランの損失モデルにおいて客の到着過程がマルコフ型到着過程に従う場合の定常系内客数分布についての積分微分方程式も分析し、アーランの損失モデルでよく知られている不感性が成立するための十分条件を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
客の待ち時間に制限のある待ち行列システムについて、客の制限待ち時間として一般分布(一定分布や指数分布を含む)を仮定し、マルコフ型到着過程を客の到着過程として定式化することができた。関連する待ち行列システムとしてアーランの損失モデルにおいて客がマルコフ型到着過程に従う場合の定常分布が満たすべき積分微分方程式も導出した。これらの結果から前者については性能評価指標の算出アルゴリズムを、後者については不感性が成立するための十分条件について知見を得ることができ、所期の目的を達成できた。また、前者における到着過程をマルコフ型到着過程に拡張した場合の具体的な応用例として、ポアソン到着のみならず再呼入力も考慮したコールセンターの性能解析に成功し、再呼入力も加わったより現実に近いコールセンターのモデルを構築することができ、客の制限待ち時間が性能評価指標に与える効果を定量化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
客の待ち時間に制限のある待ち行列システムについて、サービス過程に相関構造がある場合を補助変数法を使ったマルコフ過程により定式化し、定常待ち行列長分布について検討する。具体的には、システム容量有限の待ち行列モデルであって、客の到着過程はポアソン過程であるが、制限待ち時間が一般分布に従いかつ休暇を伴うサービス過程を想定した場合の定常待ち行列長を分析し、待ち行列長の定常分布を数値的に算出するアルゴリズムの開発を目指す。休暇を伴うサービス過程をマルコフ型サービス過程(Markovian Service Process: MSP)としてモデル化することで、前年度(平成23年度)に得られた知見が活用できると期待される。具体的な応用例としてコールセンターにおけるエージェントの後処理を取り込んだ待ち行列モデルに適用することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の成果は国際会議での発表を予定しているが、平成23年度内に開催された国際会議での発表には至ることがなかった。しかしながら、平成24年度はすでに6月末に予定されている国際会議で発表することが1件決定しており、当該研究費は翌年度以降に請求する研究費とあわせてその国際会議での論文発表に必要となる旅費と参加費として使う予定である。また、翌年度以降に請求する研究費は主に東京で開催される研究集会に参加発表するための出張旅費、国内で開催予定の待ち行列に関連したシンポジウムと研究発表会に参加発表するための旅費、並びに待ち行列システムの解析手法と確率過程に関する文献の購入費用として使う予定である。
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Research Products
(3 results)