2012 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティの包括的安全診断および対策評価モデルの構築
Project/Area Number |
23510168
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
白石 陽子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (30551163)
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Keywords | 安全政策 / セーフコミュニティ / まちづくり / 評価指標 / ソーシャルガバナンス / 国際研究者交流 / 国際情報交流 / アジア |
Research Abstract |
本研究は、2009~2010年の「科学研究費(若手研究スタートアップ)」による「安全なまちづくりにおけるソーシャルガバナンスのモデルの構築」に関する研究の成果を踏まえ、安全なまちづくりにおいて地域で形成されたソーシャルガバナンスの仕組みがコミュニティ与える影響を評価するための指標モデルの構築を目指す。研究対象は、引き続き世界レベルで急速に普及している安全なまちづくり「セーフコミュニティ(SC)活動」を設定し、3つの段階(「現状把握」、「指標モデルの検討」、「指標モデルの試行」)で進めている。 2012年度は、大きく2つの進展があった。まず、前年度に引き続き安全状況を示す各種統計等のデータの収集を行い、「指標」を導き出すための分析を行った。その結果、昨年度の調査から指標として有効性が確認された救急搬送データ及び学校で記録されている児童の外傷受傷データを分析し、指標の設定を試みている。これらの指標案については、すでにいくつかの自治体から問い合わせがあり、情報提供を行っている。 また、上記の量的情報の分析に加えて、自治体における取組体制や住民の意識など質的状況を把握するためにアンケート調査の分析を行うとともにセーフコミュニティに取組んでいる自治体の対策委員会等及び各種活動への参与観察及び関係者へのヒアリングを実施した。これらの調査のなかから、「自殺予防」については、国際会議(10月)において口頭報告を行った。また、「交通安全」についてはアメリカの研究者とともに取組の影響について分析を行い、その結果を協力いただいた自治体にフィードバックするとともに、国際会議で結果を報告した(11月)。また、現在、これらの成果について論文としてまとめる準備を進めている。 これら現時点での研究成果に関しては、成果測定に関する研究会を実施(9月)及び国際会議でセミナーを開催し、座長を担当した(11月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012度は、研究テーマに関する国際会議(学会)が日本で開催され、研究代表者は主催者の一員としての役割を担ったことから、海外の事例や研究者とのネットワークも広がり、豊富な情報を収集することができた。しかしその反面、その国際会議の準備等に想定以上に時間を要してしまったこと、また収集した情報が多様で量が多いために整理途中の段階であり、当初想定していた以上に取りまとめ及び分析に時間を要している。 また、国内の事例については、予定通りの情報収集が行えた。特に、交通安全や自殺対策については、自治体間の比較を行うことができた。しかし、一方でセーフコミュニティに着手する自治体が増え、計14自治体の情報を収集していることから、収集・比較する情報量も増えており、情報の整理に時間を要している。 ただし、指標の設定に有効と思われる救急搬送データや学校外傷発生データについては、いくつかの自治体からえたデータの分析を行い、指標の素案を設定することができた。 また、質的データの収集については、アンケート調査票の設計を行い、いくつかの自治体において実際に調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2013年度は、これまで収集した情報・データの分析をとりまとめ、指標案を設定するとともに、その成果を国内外の学会での報告や論文投稿等を通して発表する予定である。「とりまとめ」の方法としては、量的には、救急搬送データ及び学校外傷データを用いて指標案の設定を行い、いくつかの自治体において実践を試みる。また、質的変化を測定するためには、自治体が記入していくことで質的変化を把握できる「レポート」のテンプレートを設計する。また、定期的に住民に対して実施することで地域の安全・安心感や安全なまちづくりの仕組みに関する質的変化を把握できるアンケート調査票モデルをとりまとめる。 これら研究の成果は、10月にメキシコで予定されている第21回世界セーフコミュニティ会議においてその報告したいと考えている(現在、抄録を投稿し選定結果待ち)。 また、安全なまちづくりに取り組む自治体、セーフコミュニティに取り組む自治体に対して研修会や研究会を開催し、研究を取りまとめた「実践モデル」を提供する予定である。 さらに、次世代を担う子どもたち(小学校高学年を予定)に対しては、「きらめき★ときめきサイエンス」を通して研究成果をフィードバックする予定である(7月と10月を予定)。また、最終的には、この3年間の研究成果を書籍等に取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の研究費の使用については、大きく2つの柱を設定している。まず、これまでに引き続き、情報収集及び分析のための使用である。具体的には、研究対象である自治体への訪問(旅費及び宿泊費)、昨年度から収集している情報の分析と取りまとめのための費用(データ入力及び情報整理のための人件費)を想定している。 もう一つは、研究成果の公表及びフィードバックである。まず、この3年間の研究成果を取りまとめ、パンフレット等を作成し、研究に協力いただいた自治体及び関係者に送付する(印刷費及び送料)。また、研修会等を開催し、研究成果を地域(市町村行政及び地域住民)にフィードバックを行う(会場費及び資料費等)。さらに、国内外の学会に参加し、研究成果を報告するための費用を予定している(旅費及び参加費)。
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