2011 Fiscal Year Research-status Report
公共的施設の立地問題に対する社会的意思決定に関する研究
Project/Area Number |
23510184
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
梅澤 正史 東京理科大学, 経営学部, 准教授 (20361305)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 意思決定 / ゲーム理論 / 社会選択 / 公共施設 / 社会工学 |
Research Abstract |
本研究では、公共的施設の配置問題を社会的選択の観点から考えている。従来の数理計画問題による最適化の観点から考えるのではないことに注意する。つまり、社会の構成員の選好を考慮し、それを集約する社会選択ルールを考えることによって、公共施設・設備の立地として望ましい場所を選ぶことがここでの目的である。それによって今後の新規立地計画や環境の変化によって生じる移転計画に役立てることができる。 選好を集約して立地場所を決める際、一般的にはルールによって場所は変わる。ここでは、効率性と公平性の観点から考えた時に、どのようなルールが望ましいのかということを考えている。効率性とは、パレート最適性を考えている。また、公平性については置換支配性(replacement principle)を考えた。この性質は以下のようなものである。例えば、ある社会の構成員の選好が変化した時、社会選択ルールによって施設の立地場所も変更する必要があるかもしれないが、その変更は他の構成員にとって効用が一様に改善される(または無差別)か、または一様に悪くなる(または無差別)時、この性質を満たすとするものである。この2つの性質を満たす社会選択ルールの発見を試みた。ここで考えた施設の立地数は2であることを注意しておく。立地数が1の場合は、既存研究として存在する。しかし、残念ながら木構造をしたネットワークにおいては、この性質を満たすものは存在しないこと(不可能性)が証明された。そこで、木構造ネットワークの形状をスター型に限定し、しかもこのままでは先程の不可能性から回避できないので、選好を限定した。このような状況下で、2つの性質を満たす社会選択ルールを探したところ、いくつかのルールが見つかった。そのうちの1つに、最遠端点ルールという偏りの少ないルールがあり、不変性という性質を追加で課すことによって特徴付けを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1年目は効率性を満たす社会選択ルールの解明に力を注ぐ予定であった。格子型ネットワークなどのサイクルを含むネットワークに対しては、いくつかのネットワーク例について複数の効率的配置を与えることはできているが、効率性の必要十分条件を与えることはできていない。また、効率性を満たすルールを具体的に見つけることもできていない。しかし、木構造をしたネットワークに対しては、必要十分条件を与えることができ、さらに公平性に関する公理である置換支配性を満たすルールが存在するかどうかまで確認することができた。実際にそのようなルールは存在しないことが示されたが、モデルを制限することによってルールの存在を確認し、あるルールの特徴づけまでを行うことができた。これは、一般のネットワークという側面から見れば限られた状況に思えるかもしれない。しかし、木構造ネットワーク(制限なし)ですら社会選択ルールが存在しないことが示されたことは、一般のネットワーク上でルールを考える上で有益な情報となる。つまり、これまでに扱った効率性と置換支配性の条件は強い条件であるということである。この事実を踏まえ、今後に生かすことができる。そのため、計画以上とは言い難いが、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、木構造ネットワークにおいては不可能性定理が導かれた。そのため、モデルを限定するという方針で、社会選択ルールの存在を確認することができたが、効率性と公平性の2つの性質の緩和によって、一般の木構造ネットワーク上のモデルで社会選択ルールの発見を行うことが1つ考えられる。また、サイクルを含むような特殊ネットワークとして扱いやすさを考慮して、格子型ネットワークをまずは考える。そのネットワーク上での効率性の条件を見つけなければならないが、現在分かっている数値例をもう少し多くの例で考え調査を進め、コンピュータによる数値実験を行って多くの例を確認することによって実態を見ることが今の方策として考えられる。その上で、2番目の条件である公平性を考える必要がある。いずれにしても2つの性質の緩和が今後の研究方策としては大事な要素となる。 木構造ネットワーク上については、社会選択ルールが存在しないという結果を得ている。今後、この結果を生かすために、2つの性質のどちらか片方を緩めることによって、制限のない木構造ネットワーク上でいつルールが存在するのかを確認することに取り組む。それによって、一般のネットワーク上の問題についても役立てることができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値実験を行うため、設備備品としてパソコンが必要である。また同時に、計算用ソフトウェアの購入が必要である。特に、研究期間の早い時期に環境を整える必要がある。さらに、効率よく研究を進めるには、場合によっては計算実験を行なうためのサポートが望まれ、謝金によって実験補助員に行ってもらうことも想定される。研究成果発表や最新研究動向収集のため、国内・国外学会等への出張旅費が必要である。一般に、一流国際学術誌に研究論文が出版されるまでには時間がかかる。そのため、最新の研究動向を知るには、国際学会で他の研究者の研究報告を聞くことが不可欠である。 情報収集としては、書籍・文献の入手においても研究経費が必要である。特に、学術雑誌に関してはこれまで定期的に購読していたものや所属機関の図書館で利用可能なものだけではなく、より広い分野の文献を必要とするので、しばしば取り寄せが必要となる。 さらに、研究成果を英語で書いて国際学術誌へ投稿する。その際、数式を多用する文書作成のため、数式文書用ソフトウェアが効率的な論文作成に必要である。さらに、外国語校閲を行うことが良質な論文作成に欠かせないためそのために研究費を使用する。
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Research Products
(2 results)