2011 Fiscal Year Research-status Report
特命業務活動におけるミドルマネジャーの役割に関する研究
Project/Area Number |
23510185
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山本 秀男 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (50377066)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ICTシステム / 多重請負 / SI企業 / リーダーシップ / プログラムマネジメント |
Research Abstract |
ICTシステム構築プロジェクトの成功要因は、「経営トップが自社ICTシステムの状況を理解している」、「経営判断による危機感を社員と共有している」などであることを前提(仮説)に、SI中堅企業に対する調査を開始した。その結果、リーダーの方針にしたがって組織全体が動くためには、リーダーと組織メンバーの中間に存在するミドルマネジャーの行動が重要になることが分かった。 しかし、ICTシステムの構築を請け負うSI企業の中堅管理者には、顧客企業の戦略実現と自社の生産性向上を図るという相矛盾する2つのプレッシャーがかかる。トップとのコミュニケーションがうまくいかない場合、中堅管理者は、権限を超える判断が必要となるため、精神的にも時間的にも厳しい状況に置かれることになる。そのような労働環境が引き金となって、プロジェクトリーダーの健康障害やストレスによる精神障害を引き起こし、プロジェクトの開発遅延や、大きなトラブルにつながってしまう、という悪循環が起こることがわかった。この悪循環の、背景には多重請負構造による元請と下請企業との関係、日本的な契約関係に起因するSI企業の交渉面での弱さなどが原因となっていると思われる。 そこで、ICTシステム構築の多重請負構造に着目し、SI企業の観点でプロジェクトを成功させるための要件を考察した。まずD. Besankoの創出価値モデルを、多重請負構造に適用し、発注者・SI事業者(元請企業)・ソフトハウス(下請け企業)のミドルマネジャーに期待される行動をモデル化した。SI事業者のマネジャーは、プロジェクトのステークホルダーからどのように期待されているか、プロジェクトを成功させるためにはどのような点に留意しなければいけないかについて研究した。事例研究によって留意点の具体例を示し、企業のトップとミドルマネジャーに求められる役割について論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロジェクトの成功要因は、発注者側のリーダシップとプロジェクトメンバー間の戦略情報の共有であるという仮説のもとに、研究調査を開始した。しかし、現在のICTシステム構築プロジェクトでは、海外へのアウトソーシングの普及と、リーマンショック以降の経済環境の悪化によって、発注者側のコスト削減意識が強くなったため、受注者側に多大なコスト負担と、遅延リスクの過度な分担が強いられていることがわかった。 受注者側の負担が増大することによって、日本の商慣行であるSI事業者の多重請負構造の問題点が浮き彫りになった。そのため、発注者側のリーダシップを中心に研究するよりも、受注者側の視点に立ったマネジメント手法の評価研究が重要になってきたことに気がついた。当初予想していた発注者側企業に対するヒアリングを実施する前に、受注者側にも光を当てた研究が急務であると考え、研究内容を変更した。そのため、研究の進捗は当初予定よりやや遅れてしまった。 さらに、平成23年度の研究期間の後半から、行政職(研究科長)になったため、当初予定していた研究時間を確保することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に明らかになった中小のSI企業における問題点を深掘りするため、大企業から受注の下請けをしている企業にヒアリングを行い、実際にどのような問題があるのか具体事例を集める。また、企業のトップおよびプロジェクトメンバーの両者にヒアリングを行い、ミドルマネジャーにトップとメンバー双方からどのような期待がかかっているかを調査する。 ビジネススクールには研究対象とする企業に勤務している人材がいる。その院生らを対象にヒアリングなどを行う。ミドルクラスの人材がビジネススクールで学ぶ動機と受講後の変化を分析し、上司と部下の両方からの期待を背負った、中堅管理職候補の人材に対して、ビジネススクールの教育がどのように貢献しているかを調査する。 現場のヒアリング調査と、ビジネススクールでの調査を総合化して、当初この研究計画で予定していた「ミドルマネジャーが持つべきマネジメント能力助長のための教育プログラム」の骨子を作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「人件費・謝礼金」は、ICTシステム構築の受注下請けをしている企業対するヒアリングと、ビジネススクール院生らを対象に実施するヒアリングにかかる費用に充当する。 「物品費」と「その他」は、ミドルクラス人材の育成とマネジメントに関するに関連する海外調査資料や雑誌の購入に充てる。今年度の「旅費」は、主に国内の学会参加と調査のための交通費として使う。
|
Research Products
(1 results)