2012 Fiscal Year Research-status Report
品質指向ソフトウェア開発プロセスを支援する統計分析手法の開発と改善
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23510189
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
木村 光宏 法政大学, 理工学部, 教授 (20263486)
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Keywords | ソフトウェア信頼性 / ソフトウェア品質 / ソフトウェアテスト / GMDH / ニューラルネットワーク / コピュラ |
Research Abstract |
今年度の研究成果は大別して以下の3点に分けられる.これらはすべて国内外の研究集会,国際会議で発表し,一部は論文誌に投稿中である. 1)ソフトウェアの製造工程から採取可能な変量に着目し,それらがテスト工程の前の段階で得られたとき,その時点におけるソフトウェア内の潜在フォールト数(プログラムの論理的誤りの個数)を推定する方法について,古典的手法である多変量解析などを,推定精度において凌駕する方法を2種類開発し,その性能について検討した.結果はニューラルネットに基づく方法が良好な成績を残した.この技術によって,ソフトウェアのテストにおいて発見されるはずのフォールト数を予め見積ることが可能となるため,各種の見積もり,出荷後の信頼度推定において有益となる. 2)不完全なソフトウェアのテスト作業が,事例として存在することを明示した上で,それを克服する手段として,2チームによる2段階ソフトウェアテストを開発した.ここから得られる定量的データに基づき,各チームのテスト作業に関するスキルの程度,テスト対象となっているソフトウェアの信頼性評価(残存フォールト数の推定)の方法を示した.この,不完全テストの視点は,従来の研究では明示的に扱われてこなかったものであり,得られた知見は有意義なものと考えられる. 3)ソフトウェアの潜在フォールト数は,テストの時間の経過とともに減少することが知られているが,それ以外に,フォールト数の減少に寄与する要因としては,テスト項目の消化数がある.このことから,従来から2変量の確率過程を用いてソフトウェアの信頼性を評価する手法がいくつか開発されてきているが,ここではコピュラ(copula)を用いて記述することにより,精緻化を図った.結果としては,ソフトウェアのフォールト数に対する2変量管理図を作成できることが示せた.これは今後,モデルの更なる精緻化を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は【研究実績の概要】にて述べた1)および2)の部分の進展を目指したが,本研究の協力者の貢献も多く,2)は概ね成果がまとまり,International Journal of Reliability and Quality Performance誌(IJRQP)の特別号に投稿中である. 1)については,潜在フォールト数の予測技術として,GMDH,ニューラルネットワークを用い,少なくとも従来法よりは良い結果を得る成果を得ており,かなりの程度進捗したと言える.しかしながら,この問題(フォールト数の早期予測問題)に対する多変量解析的なアプローチは多数あり,今後の手法の模索に鑑みて,達成度は60%程度と思われ,次年度に達成を目指す. また,3)については,本申請研究の趣旨に照らして,必要な信頼性評価技術であり,比較的簡単なモデルによる成果を得ているが,この達成度は40%と見積もっている. 以上,全体としては当初の計画より進捗したと総括できる.
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Strategy for Future Research Activity |
開発属性データに基づいて,開発されるソフトウェア内に潜在するフォールト数を,精度よく見積る新技術については,モデルの開発と共に,実際に採取できる各種のデータを得る必要がある.このため,IPA/SECの協力の下で,実企業からの実測データの提供を受けられるよう,手続きを進めている.これが実現すれば,実企業の実務の中で,より計測のしやすいデータを用いた,信頼性予測問題への解が得られる可能性が高い.この点について最終年度は進めることとする.また,コピュラに基づく2変量のソフトウェアテスト管理図については,モデルの改良の余地があり,これについて鋭意進める所存である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は最終年度ということもあり,今年度の実績として述べた1)および3)については研究を積極的に進め,学会発表,研究報告のための旅費,成果発表のための費用として,研究費を割く予定である.また,データの提供に関して,有償である組織にも打診し(IPA/SECは無償),データの取得に努めることとしたい. また,研究協力者への旅費・学会参加費についても処置が必要であり,そちらも考慮する計画である.
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Research Products
(7 results)