2012 Fiscal Year Research-status Report
スタビリティを指向するプロジェクト管理の意思決定モデルと実用技法の開発
Project/Area Number |
23510195
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
諏訪 晴彦 摂南大学, 理工学部, 教授 (40299029)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
前年度に引き続き,プロジェクト・マネジメントの理論・技法に関する研究の国内外の状況を把握することを目的として,関連論文を調査した。所属学会の研究講演会やシンポジウム,さらには国際会議においても,関連研究の最新動向を探った。 昨年度に開発した作業時間の新たな三点見積もり法を拡張し,作業時間の変動を考慮しつつ必要資源量を決定するための方法論を開発した.さらにこのような「作業の工数見積もり」を踏まえた新たなプロジェクト・スケジュールの生成法を検討した〔研究計画(2a)〕。具体的には,(1)基準となる初期スケジュールを生成し,各作業の期待遅延費用を算出する。次に,期待遅延費用が現状より改善されなくなるまで,作業の資源と所要時間の変更を繰り返し行っていく。このように期待遅延費用に基づくスケジュールの反復的評価により,スタビリティの高いスケジュールの生成が期待できる。作業数が数十程度の問題例を対象として,数値実験を行ったところ,最適スケジュールを生成できることを確認した。さらに手法に改良を加え,百数十程度の問題規模に対して,既存の手法と比較したところ,それらよりも良好な結果を得ることができた〔研究計画(2b)〕。この研究成果を所属学会のシンポジウムで発表し,概ね良い評価を得た。平成25年度前半を目処に,国内外の学会誌への投稿を準備しているところである。 今年度の成果は,作業時間に時間バッファを配置するというクリティカル・チェーン管理の新たな技法を実現したことを意味する。ただし,作業時間と資源量の決定,さらにはスケジュールの決定を効率的に行うにはさらなる改善が必要である。これにより,現実のプロジェクト(作業数が数百~数千におよぶ)への適用が可能となる。 最後に,昨年度投稿した学術論文2編がともに受理され,各々学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクトを構成する各作業の必要資源量の上限および下限が(プロジェクト責任者によって)与えられるものとして,作業遅延の期待費用を最小にするような各作業の工数(資源量×作業時間)を導出するための方法を確立することができた。作業工数そのものを決める問題は,資源制約付きプロジェクト・スケジューリング問題(RCPSP)の上位に位置する問題であり,現場に則した問題である。このような現実問題(現状,完全に整備されたわけではないが)に対する一つの方法を得たことは意義があると考える。また,研究目的にある「スタビリティの概念を定義し,スタビリティに基づくプロジェクト計画作成問題を定式化する」ための基礎を確立した。 さらに,「作業の工数見積もり」を踏まえた新たなプロジェクト・スケジュールの生成法を検討した。解導出の効率面で課題が残されているものの,スタビリティの高いスケジュールを生成可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で確立した作業工数の見積もり方法をベースとして,スタビリティの高いプロジェクト・スケジュールを立案するための手法を完成させる。現在,理論的アプローチとして,(1)スタビリティを指向するスケジューリング問題を定式化した上で,(2)この問題に対する最適化手法を開発することを進めている。そして,現実の数百規模から千数百規模の作業数をともなうプロジェクトにも対応できるような(最適性はある程度犠牲にしつつも)効率性を重視した高速なスケジューリング法について研究を進め,実利用に直結したクリティカルチェーン・バッファ管理技法を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 継続的に国内外の学会会議で成果発表を行う.(国内外旅費60万円程度) (2) 大規模数値シミュレーション用の実験システムおよびソフトウェアの購入(備品費・消耗品費合わせて60万程度) (3) 2013年度発刊予定のプロジェクト管理関連文献の購入(10万円程度)
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