2011 Fiscal Year Research-status Report
墜落災害防止のための可視化した安全教育支援ツールの開発
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23510213
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
大幢 勝利 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 建設安全研究グループ, 上席研究員 (50358420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広兼 道幸 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70268332)
北條 哲男 ものつくり大学, 技能工芸学部, 教授 (30348346)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 墜落 / AR / 安全教育 / 労働災害 |
Research Abstract |
墜落災害は建設業の中で最も死亡者数の多い災害であるが、本研究はその防止対策として、典型的墜落災害事例の体系化を行い、その情報に基づき、可視化した安全教育支援ツールの開発を行うことを目的とした。そのため、平成23年度は、公表されている労働災害データベースから墜落災害における典型的事例の抽出と作業内容の分類を行い、典型的災害事例の体系化のためのデータ収集と分析を行った。また、安全教育支援ツールの骨格となる、AR技術を利用した3次元仮想モデルによる可視化手法の構築を図った。その結果、以下の成果を得た。1.平成19年度に発生した休業4日以上の墜落による死傷災害1823件を分析した。その中で、「木造家屋建築工事」 (401件)と 「鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事」(384件)が突出して多いため、その二つの工事について詳細に分析した。その結果、墜落場所や墜落高さ等、それぞれの工事ごとに特徴や傾向を把握することができた。また、休業4日以上の死傷災害と死亡災害も比較したが、重篤度によって異なる特徴を把握することができた。2.AR技術により可視化したARマニュアルを作成し、簡易な作業によりその効果を確認する実験を行った。その結果、AR マニュアルでの作業伝達は口頭での作業伝達には及ばなかったが、紙媒体からの作業伝達のデータを作業時間・記憶率ともに上回っていた。このように、建設現場など人を介しない作業が多い場所での伝達手段としては有用性がみとめられた。3.建設会社の安全担当者と議論を行い、本研究成果の活用等、安全管理と情報について幅広く討論するため、安全工学シンポジウム2012においてオーガナイズドセッションを提案することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(2)おおむね順調に進展していると考える。その理由を、平成23年度の実施計画に基づき述べると、以下のとおりである。1.典型的災害事例の体系化:平成23年度は平成19年の死傷災害データベースから墜落災害の事例を抽出し、より詳細な情報を得るため、死亡災害については死亡災害データベースを活用して情報を補足する予定であったが、平成19年のデータについて当初の予定通り分析ができた。2.AR技術による可視化手法の構築:建設現場の可視化を容易に図れるよう、汎用的なCADデータなどから墜落危険個所の3次元仮想モデルへの変換インターフェースを作成する予定であった。しかし、墜落危険個所について実証するのは困難なため、平成23年度は安全にできる簡易な作業について、AR技術により可視化したARマニュアルを作成し効果を確認する実験を行った。その結果、本研究の目的となる安全教育支援ツールの有効性が確認できた。3.建設会社の安全担当者との議論:土木学会安全問題研究委員会等を通じ、建設会社の安全担当者と目指すべき安全教育支援ツールについて議論を重ねる予定であったが、その成果として安全工学シンポジウム2012においてオーガナイズドセッションを提案することとした。 以上により、本研究の目的である、典型的墜落災害事例の体系化を行い、その情報に基づき、AR技術を利用した可視化した安全教育支援ツールの開発を行うことについて、平成23年度はおおむね順調に進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しているため、当初の計画通り1~3までの検討を平成23年度から継続して実施し、さらに平成24年度以降4~5の検討を行い、安全教育支援ツールが現場で使いやすくなるよう改良を施す。1.典型的災害事例の体系化:平成23年度に実施した平成19年のデータに加え、平成18年(データの公表に応じ平成20年以降)のデータを追加して典型的災害事例の体系化を図る。2.AR技術による可視化手法の構築:平成23年度に作成したモデルをユーザが使いやすいように改良する。また、建設現場において、墜落危険個所のある典型的な作業場について部品化し、システムに組み込みやすいようにする。3.建設会社の安全担当者との議論:引き続き、学会の委員会や分科会等において、随時、建設会社の安全担当者と目指すべき安全教育支援ツールについて議論を重ねる。4.安全教育支援ツールのアクセシビリティの向上:安全教育支援ツールのウェブページ化等を試み、アクセシビリティの検証を行う。その際、安全教育の時間や場所などの自由度が増し、作業者が自ら学習する機会を提供することが可能となるよう、安全担当者や作業者が携帯端末等で容易にアクセスできるためのシステムを構築する。5.安全担当者や作業者からの意見聴取:開発段階における安全教育支援ツールについて、実際に使用することになる安全担当者や作業者からの意見聴取や実証を行いながらツールの改良を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「収支状況報告書」の「次年度使用額」に繰越金が生じた理由は、データベース分析にかかる経費を若干節減できたためであるが、平成24年度は分析量を増やす等により使用する予定である。以上を踏まえ、平成24年度の研究費の使用計画は以下の通りである。1.物品費:作成した安全教育支援ツールをウェブページ化することを試みるため、コンピュータソフトや計算機消耗品等を購入する。また、可視化モデル構築するために必要となる、足場や脚立等の墜落防止機材を購入する。2.旅費:国内外の建設現場における安全教育手法の調査を行うとともに、研究打合せや研究成果の公表(スペインの職業リスクに関する国際会議、第28回ファジィシステムシンポジウム等)を通じ、分析した典型的災害事例の公表や、作成した安全教育支援ツールの評価・意見交換を行い、ツールの有効性の向上を図るために使用する。3.人件費・謝金:公表されている労働災害データベースには数万件登録されており、そこから墜落災害に絞った情報を抽出し、典型的災害事例の体系化を図るための補助者への謝金として使用する。また、AR技術による可視化モデルの構築や、安全教育支援ツールのウェブページ化や、アクセシビリティの検証を行うための補助者への謝金として使用する。4.その他:学会等(スペインの職業リスクに関する国際会議、第28回ファジィシステムシンポジウム等)で成果を公表するため、論文投稿料等として使用する。
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Research Products
(3 results)