2014 Fiscal Year Annual Research Report
災害科学の専門家による情報発信の傾向:状況と立場が与える心理的バイアス
Project/Area Number |
23510219
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大木 聖子 慶應義塾大学, 環境情報学部, 准教授 (40443337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷内 一也 同志社大学, 心理学部, 教授 (50212105)
横山 広美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50401708)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 災害情報 / 地震災害 / イタリア裁判 / 科学コミュニケーション / リスク・コミュニケーション / 刑事責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会が災害科学に期待することは将来の自然災害の防止や軽減であり,そのためには自然災害を予測する必要があるが,種々の制約により予測が困難な場合が多いので,災害科学の社会貢献は不定性が高くなる.それを念頭に置かずに「踏み越え」が行われると科学者が刑事責任まで問われることがあり,イタリアのラクイラ地震裁判はその最近の例である.我々は,資料収集や聞き取り調査,判決理由書の分析等を行い,そこでの災害科学の不定性と科学者の責任を検討した.その結果,裁判の対象となったラクイラ地震の人的被害は,災害科学の不定性を踏まえない市民保護庁副長官の安易な「安全宣言」が主な原因という結論を得た.また,この「安全宣言」のみを報じた報道機関にも重大な責任がある.副長官以外の被告にも会合での発言が災害科学のコミュニケーションとして不用意であるという問題点が存在したが,地震までに発言が住民に伝わることはなかったから,この問題点は道義的責任に留まる.本研究結果発表の数カ月後,二審の結果が公表され,一審で有罪判決となった研究者と行政官のうち安易な安全宣言を行った副長官以外は無罪となった.判決文を取り寄せ,重要箇所を翻訳したところ,我々の考察と同様の考え方から得られた判決であることが明らかとなった.
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Research Products
(2 results)