2011 Fiscal Year Research-status Report
共生遺伝子群最小セットの同定を目指すミヤコグサ根粒菌共生アイランドの最小化
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23510235
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐伯 和彦 奈良女子大学, 理学部, 教授 (40201511)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 植物微生物相互作用 / 共生 / 窒素固定 / 遺伝子水平伝搬 |
Research Abstract |
本課題では、根粒菌を材料として遺伝マーカーを残さないゲノム欠失法を実用化することにより、ミヤコグサ根粒菌の共生アイランドの最小要素の実体化を目指している。本年度は以下の3項目を実施した。1)欠失アリル組み込み用ベクターの作製:根粒菌内では複製不可能なpUC oriを持つプラスミド上に、マルチクローニングサイトを挟んでホーミングエンドヌクレアーゼI-SceIの認識部位2つ、接合導入を可能とするためにRK2由来のoriTを選択マーカーであるカナマイシン耐性遺伝子とともに配置したものを作製し、基本ベクターとした。2)根粒菌内で人工制御可能な発現ベクターの開発:広域宿主ベクターpBBR1の複製起点、RK2由来のoriT、ミヤコグサ根粒菌で強力な転写能を持つ人工プロモーターを2つのlacO配列で挟んだもの、その下流にマルチクローニングサイト、これとは別に中程度の転写能を持つプロモーターの下流にlacレプレッサー遺伝子lacIとクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子catのコード領域を連続して配置したものを持つベクターを作製した。マルチクローニングサイトにEGFPをクローン化し、IPTGの添加による根粒菌内での転写制御を確認した。制御比をより定量的に解析する為に、大腸菌アルカリフォスファターゼ遺伝子ならびにゲンタマイシン耐性遺伝子を組み込んだ派生物を作製した。3)共生アイランド最小化のために欠失領域デザイン:ミヤコグサ根粒菌の3株MAFF303099、R7AとNZP2037の共生アイランド配列の比較を行い、アイランド最小化のデザインを行った。共生アイランドに関する更なる情報収集を目指し、『生命科学系3分野支援活動』のゲノム支援により、ミヤコグサ根粒菌の野生系統11株の次世代シーケンサー解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施中の3項目それぞれの達成状況の評価を行ったところ、以下に記すように、計画通りのものと若干の遅れのあるもの、逆に、予定より進行しているものが有り、全体としてほぼ計画したレベルにあると判断している。1)欠失アリル組み込み用ベクターの作製:基本ベクターを作製できており、ほぼ計画通りに進行している。2)根粒菌内で人工制御可能な発現ベクターの開発:発現ベクターを実体化し、根粒菌内でのIPTGによる発現制御を確認できた。当初、制御の定量を大腸菌βガラクトシダーゼ遺伝子lacZの発現によって測定する予定であったが、lacZのコード領域内にlacO様配列が存在する為、プロモーターの両側に配置した2つのlacO配列の効果を十分に評価できない可能性が疑われた。レポーターとしてEGFPやゲンタマイシン耐性遺伝子を用いることになった、また、2つのlacO間の距離と発現制御の関係を最適化するべきであると考えられ、これに対応することとなった。この為、ベクターの温度感受性化までは進行していない点で、やや遅れが生じている。但し、IPTG無添加時の転写を十分に押さえることは重要であり、これを優先する必要が有る。3)共生アイランド最小化のために欠失領域デザイン:ミヤコグサ根粒菌NZP2037株の共生アイランド配列のアノーテーションを詰めた結果、MAFF303099株、R7A株との比較は計画通り進行した。ミヤコグサ根粒菌の野生系統11株ゲノムの次世代シーケンサー解析に着手できた点は、計画よりも早い進行である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に引き続き、以下の1)~3)を実施し、4)に着手する。1)欠失アリル組み込み用ベクターの作製:3)の欠失領域デザインに基づき、PCRにより欠失アリルを増幅してクローン化し、共生アイランド最小化に必要な欠失アリル組込プラスミドを順次作製する。二重鎖切断とその修復が行われたことのPositiveな指標として、グラム陰性菌にショ糖感受性を付与するレバンスクラーゼ遺伝子sacBの利用を試みる。2)I-SceI遺伝子発現用温度感受性ベクター構築:プロモーターを挟むlacOの距離を変えた発現ベクター派生物をシリーズで作製し、IPTG非添加時の発現量を最小にするベクターを作製する。これにI-SceI遺伝子を導入して、活性型の遺伝子の発現を大腸菌内で確かめる。並行して、プラスミド複製に関連するタンパク質の遺伝子repに変異を持ち温度感受性となったものの導入を行う。3)共生アイランド最小化のために欠失領域デザイン:ミヤコグサ根粒菌野生系統のゲノム情報を追加的に収集し、インフォマティクス解析により、保存されているが共生とは関連性が不明な遺伝子群を対象に欠失の順序をデザインする。4)最小アイランドの実体化:1)~3)の成果に基づき、共生アイランドの部分欠失株の作製を開始する。また、欠失株をミヤコグサに感染させて、共生能を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究経費に残額が生じた理由は、本年度の主要備品としてゲル画像解析装置・一式(Bio-Rad・Gel Doc EZ + 専用プレート)の導入を計画していたが、より高性能な装置が学科共用備品として実験室に導入することができたため、購入を取りやめ、予定よりも支出を抑えることができたためである。平成23年度研究経費の残額分については、平成24年度には、やや遅れ気味である2)I-SceI遺伝子発現用温度感受性ベクター構築に関連する遺伝子人工合成の業者委託、1)欠失アリル組み込み用ベクターの作製の作製において多用するリコンビナーゼ・キットの購入、また、4)最小アイランドの実体化での共生成立・維持経過を免疫化学的に観察するための抗体作製の業者委託等を行うために用いる。平成24年度分の研究経費については、当初の計画通りに使用するとともに、バイオインフォマティクス解析に用いているPCの能力が限界に達しつつあるので、必要に応じて新規購入か、メモリー等の増設を行う。
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