2012 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア遺伝子転移を利用した重複遺伝子のゲノム内再編成に関する研究
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23510236
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
久保 中央 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (60347440)
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Keywords | 植物ミトコンドリア / リボソームタンパク質 / 遺伝子重複 |
Research Abstract |
本研究の目的は、核へ転移した植物ミトコンドリアのリボソームタンパク質遺伝子の遺伝子重複に関するゲノムレベルでの知見を得ることである。 本年度は、周辺の遺伝子配置を植物種間やコピー間で比較し、遺伝子配置の保存性を調査した。また、GFPを利用して遺伝子産物の細胞内局在を調査した。 昨年度にポプラから見出した芳香族アミノ酸生合成酵素に関する遺伝子に関して、同定した重複コピーの塩基配列を相互に比較した。リボソームタンパク質遺伝子rps11との相同性を持つ新奇コピーを、本来の遺伝子である葉緑体型コピーと比較したところ、組み換えに関わったと推定される領域内に転移因子の一部と相同性を示す配列が存在していた。この因子は植物では知る限り特徴付けられいない。その他の偽遺伝子化したコピーのうち2つは、同じ染色体上の近接したゲノム領域内に座上することが判明した。高い塩基配列相同性から、これらは進化的に比較的最近重複したと推定された。 これらの遺伝子のうち偽遺伝子を除いたコピーの配列をGFP遺伝子と連結して植物細胞へ導入したところ、新奇コピーと葉緑体型コピーはそれぞれミトコンドリアと葉緑体にGFPの局在が認められた。 この他、cDNAデータベースの解析から、リボソームタンパク質遺伝子rps2がその下流に位置する糖代謝関連遺伝子と共転写されていることが推定された。全ゲノムが決定されている植物についてデータベース検索を行ったところ、このような構造は、進化的に離れた複数の被子植物種に散在していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に同定した遺伝子の構造比較を行い、重複した遺伝子の再編成に転移因子が関与した可能性を見出した。さらに、他のコピーでは同じ染色体上の近接したゲノム領域内に座上し、比較的最近重複したことを明らかにした。この結果は、重複が複数回に渡って生じたことを強く示唆するものであり、予想よりも複雑な遺伝子重複が起きたことが推察される。また、各コピーの細胞内局在を確認したところ、塩基配列上の特徴から予想される局在が確認された。これは、重複した遺伝子が本来の遺伝子とは異なる細胞内局在性を新たに獲得したことを実験的に証明したものである。 さらに、糖代謝関連遺伝子に関する新奇遺伝子をゲノム上から同定した。 以上、核へ転移したミトコンドリア遺伝子の重複が、これまで知られていなかった生合成や代謝経路に関わる可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した遺伝子の発現を調査する。具体的にはGFPを用いた遺伝子産物の細胞内局在の調査を引き続き実施する。また、特異抗体が入手可能なものについてはウェスタンブロッティングによって遺伝子産物のミトコンドリアへの蓄積を確認する。加えて、RT-PCRによって器官ごとの転写産物の蓄積を重複遺伝子のコピー間で比較する。また、遺伝子産物の表現型に及ぼす影響を調査するため、同定した遺伝子を過剰発現あるいはノックダウンさせた形質転換体の作出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費を、遺伝子発現解析としてRT-PCRとウウェスタンブロッティングに使用する試薬(RNA抽出キットやcDNA合成キット、プライマー、検出試薬等)、GFP等の形質転換実験に用いる融合遺伝子コンストラクト作成のための試薬(クローニングキット、プライマー、DNAシーケンサーの消耗品等)、また、ミトコンドリアおよび葉緑体タンパク質の特異抗体の購入や作成に充てる予定である。 国内・海外旅費を、成果発表および情報収集のための国内・外国旅行に充てる予定である。また、謝金等を、英語校閲費および実験補助に充てる予定である。
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