2011 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアDNAコピー数による呼吸鎖複合体タンパク質の同時発現制御機構の解明
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23510237
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
凌 楓 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (70281665)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / 核酸 / ストレス / ミトコンドリア / 品質管理 / DNA複製 / 呼吸鎖複合体 |
Research Abstract |
融合と分裂を常に繰り返すミトコンドリアはダイナミックなネットワークを形成する。ミトコンドリアの融合がミトコンドリアDNA(mtDNA)の維持に必要であることが知られているが、ミトコンドリアの融合とmtDNAの維持をリンクさせる機構が不明である。mtDNA維持におけるミトコンドリア融合の役割を解明するために、我々は、二分子蛍光補完(BiFC)由来の蛍光を指標にin vitroで単離ミトコンドリアの融合の進行を追跡する系を構築した。これを用いてミトコンドリア融合の進行を伴い、mtDNAコピー数が増加することを見出した。ミトコンドリア融合がどのようにmtDNAの複製に寄与するかについて解析を行ったところ、ミトコンドリア融合を伴うmtDNAコピー数の増加は、DNA上の酸化修飾を認識し除去するNtg1と、相同DNA対合活性をもつMhr1に依存することが判明した。さらにin vitro 、及びin vivoでミトコンドリア融合の初期段階において呼吸鎖複合体IVの解離を伴い、構成サブユニットの一部がミトコンドリア内膜に局在するタンパク質分解酵素Yme1によって消化されることで活性酸素種(ROS)がより多発することを見出した。これらの結果から、ミトコンドリアの融合がROSによって活性化される組換え依存型mtDNAの複製を介してmtDNAのコピー数を増加させることで呼吸鎖のmtDNAコードタンパク質の品質管理にも寄与することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数を制御する仕組みは何か、そして、呼吸鎖複合体を構成するmtDNAコードのタンパク質サブユニットの量がコピー数の変動に応じてどのような変化が起きるかについて研究を行ってきた。その結果として、ミトコンドリアの融合が活性酸素種(ROS)による組換え依存型複製の活性化を介しmtDNAの維持に働くことをはじめて明らかにした。これらの研究成果は、Gens to cell に掲載された後、Faculty of 1000にも選出され、ミトコンドリアのダイナミクスが疾患の発生や複雑な老化等のプロセスに与える影響の解明に新しい見方を提供するものとして高く評価された。 従って、非常に質の高い研究ができたと考えています。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は次年度引き続き、計画に従って活性酸素種を開始信号伝達物質とするmtDNAの複製活性化機構とその意義の解明に関する研究を行う予定である。申請者は、出芽酵母において培地の炭素源をグルコースからグリセロールに変えるとMhr1依存的にmtDNAのコピー数が増加するという実験系を用いて、mtDNAコピー数の増減がもつ生理学的な意義を追究する。野生株と、申請者が同定した組換え依存型mtDNA複製に働くNTG1、DIN7、MHR1、及び転写依存型のmtDNAの複製の主役であるRPO41、ABF2の機能欠損変異株ならびに多重変異体をそれぞれグルコース培地で培養した後、グリセロール培地に移し、培養する。そして、(1)酸素呼吸モニターリングシステムを用いて細胞の酸素呼吸の指標である酸素消費量、二酸化炭素の生成量を測定する。(2)活性酸素種の発生量の変化を調べる。(3)酸化修飾を受けたmtDNAの量の変化を調べる。(4) NTG1、MHR1、RPO41、及びABF2等の遺伝子の発現量を調べる。(5) mtDNAの複製開始点で起きるDNA二重鎖切断、コンカテマーの量、コピー数の量的相関性を明らかにする。(6) コピー数増大に伴う呼吸鎖複合体のmtDNAと核染色体DNAがコードするが呼吸鎖複合体のタンパク質サブユニット量の変化を調べる。(7) mtDNAコピー数増大に伴う酸化的リン酸化反応に必須な呼吸鎖複合体のタンパク質サブユニットの量の変化を及びmtDNAと核染色体DNAがコードする呼吸鎖複合体のタンパク質サブユニットを調べる。(8) ATPをルシフェラーゼで定量的に測定する。(9) 呼吸鎖の複合体の形成を2次元 Blue Native ポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析することで、細胞のATP需要度が高くなった条件下で、mtDNAコピー数と、呼吸鎖複合体形成との相関関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、制限酵素等の試薬、培地類、プライマー等の合成DNA、DNA標識用放射性物質の購入、学会参加、及び英文論文の校閲に使う。
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Research Products
(2 results)