2012 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアDNAコピー数による呼吸鎖複合体タンパク質の同時発現制御機構の解明
Project/Area Number |
23510237
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
凌 楓 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (70281665)
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / mitochondrial fusion / replication / zygote / Concatemer / Rolling-circle type |
Research Abstract |
ミトコンドリアは常に融合と分裂を繰り返し、ダイナミックなネットワークを形成する。出芽酵母においては、ミトコンドリア融合が活性酸素種の発生を介して組換え依存型複製を促進することでミトコンドリアDNAコピー数を増加する。しかし、ミトコンドリア分裂に必要なタンパク質であるFis1(Fission1)、Mdv1(Mitochondrial division 1)、およびDnm1(Dynamin 1) がミトコンドリアDNAコピー数の変動とミトコンドリアDNA対立遺伝子の分離に果たす役割は未だに不明である。我々は、Fis1、Mdv1、およびDnm1の欠失がミトコンドリアDNAコピー数の変動に与える影響について調べたところ、Fis1とMdv1の欠失がミトコンドリアDNAコピー数を減少させるが、Dnm1の欠失がミトコンドリアDNAコピー数を増加させることを見出した。また、Fis1、Mdv1、およびDnm1の欠失がmtDMA対立遺伝子の分離に果たす役割を調べたところ、Fis1とMdv1の欠失が、接合体でのミトコンドリアゲノムの対立遺伝子の分離に働き、ホモプラスミーの形成を促進するがDnm1の欠失がこのような影響を示さないことを明らかにした。この結果から、ミトコンドリア分裂タンパク質活性を阻害することでミトコンドリアDNAコピー数と密接に関係するミトコンドリア対立遺伝子の分離を促進することが可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
出芽酵母のミトコンドリア分裂に必要なタンパク質がミトコンドリアDNAコピー数の変動とミトコンドリアDNA対立遺伝子の分離に果たす役割を初めて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまでに得られた知見を踏まえて従来の計画に沿って欠失変異ミトコンドリアDNA(mtDNA)の優勢複製の制御におけるグルタミン酸とリジンの機能的役割を調べることに重点を置き、研究を展開して行く予定である。 細胞の酸素呼吸が盛んになるとROS発生量の増加が複製開始点をもつサイズの小さい欠失変異ミトコンドリアDNAの生成を誘発しうる。正常mtDNAに対して欠失変異mtDNAの優勢複製は細胞の呼吸機能を脅かす。欠失変異 mtDNAのコンカテマーがNtg1による複製開始点での二本鎖DNA切断の導入とMhr1による相同DNA対合から開始するローリングサークル型DNA複製で合成される。一方、転写依存型複製の主役であるRpo41が欠失変異mtDNAの優勢複製に働かないという報告はある。そこでグルタミン酸とリジンの量の増加は転写因子Abf2を活性化し、転写依存型複製を促進することで組換え依存型複製に頼る欠失変異mtDNAの優勢複製を相対的に抑制するのではないかと考え、以下の検証実験を行う。(1)グルタミン酸、あるいはリジンの存在、及び非存在下で欠失変異mtDNAをもつ一倍体細胞と正常mtDNAをもつ一倍体細胞との掛け合わせから生じた二倍体子孫の中で欠失変異ミトコンドリアDNAだけもつものの割合を測定することで、これらのアミノ酸が欠失変異mtDNAの優勢複製に対する影響を明らかにする。(2)培地にこれらのアミノ酸添加もしくは非添加条件下で、欠失変異 ミトコンドリアDNAをもつABF2遺伝子破壊一倍体を培養し、欠失変異 mtDNAの複製開始点での二本鎖切断のレベル、線状コンカテマーと環状多量体の生成について一次元と二次元ゲル電気泳動法で分離し、定量的解析を行う。mtDNA複製におけるこれらのアミノ酸の新生理機能を明らかにし、欠失変異mtDNAの優勢複製を抑制する手法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)