2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトの癌細胞における遺伝子増幅領域のゲノム構造解析と疾患原因の解明
Project/Area Number |
23510241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 均 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (70183829)
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Keywords | がん / ゲノム / 遺伝子増幅 / 染色体 / FISH / 原発生体腔内リンパ腫 / 乳癌細胞株 / 肺癌細胞株 |
Research Abstract |
ヒトがん細胞において遺伝子発現制御機構が破綻する要因のひとつである遺伝子増幅現象に的を絞り、ErbB2非発現乳癌細胞株HC1143株と樹立した原発生体腔内リンパ腫PEL細胞株2株において、その遺伝子増幅領域を細胞遺伝学的に解析している。(1)ErbB2非発現乳癌細胞株HC1143株の第19染色体上のNOTCH3遺伝子増幅領域を含むDNA断片であるYACクローンCTD-2538G16(171kb)をPFGEにより幾つかのDNA断片に分け、NOTCH3遺伝子近傍の2遺伝子がこの増幅領域に含まれるかどうか確認し、同時にRT-PCR法を用いて発現確認する計画であった。が、前年度に続いて適当なDNA断片が得られていない。(2)PEL腫瘍株2株に認められた共通増幅領域をカバーするBACクローンを特定して、この領域内の物理地図作成を目標にしていた。しかし、適切なBACクローンの選定には至っていない。(3)オリンパス社製高感度デジタル冷却CCDカメラおよび蛍光画像取得システムによる高感度高画質な記録による解析を可能にするための周辺機器の充実をはかり、解析環境は大いに改善された。(4)新たに、肺癌細胞株NCI-H1299株のプラスミド遺伝子増幅についてfiber FISH法で明らかにした。 がん細胞に見られる染色体異常は多様であり、がん化の原因として、テロメア配列維持機構の破綻、BFB (Breakage-fusion-bridge)サイクルによる染色体分離異常の結果として生じる染色体不安定性のメカニズムを解明することは重要である。また、特定領域の遺伝子増幅現象はがん細胞の増殖にアクセルとして働いていると考えられ、そこに共通のメカニズムが存在するのかどうか明らかにすることはゲノム構成上、なぜその場所にそのユニットサイズで生じたのか、という問題も含めて充分解明する意義のあることだと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(1)ヒトiPS細胞などの幹細胞株の染色体解析を精力的に行い染色体不安定性を示唆する結果を得た。また、(2)四肢短縮タイプの矮小型ラットを産出するCCIラットにおける第1染色体トリソミー細胞が移植継代を繰り返しても発症と相関することを突き止め癌幹細胞である可能性が示された。(3)肺癌細胞株NCI-H1299株において、プラスミド遺伝子挿入部位のゲノム構成をfiber FISH法により明らかにした。 複数の他のプロジェクトが進展をみせたこともあって、本研究目的の乳癌細胞株HC1143株やPEL細胞株での増幅領域を含む候補BACクローンの選定とFISH法による同定に費やした時間が少なかったために、研究実績として報告できる一定レベルの成果を挙げられていないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
乳癌細胞株、PEL細胞株および肺癌細胞株について、それぞれ以下のように研究を推進させて行きたい。 (1)NOTCH3遺伝子発現の亢進が増幅領域全体で起こっているかどうかを同定するために引き続き Sequential FISH法 (RNA-DNA FISH法) の基本技術修得に努める。また、RT-PCR法によりNOTCH3遺伝子の3'側約30kb下流に存在することが予測されている2遺伝子発現を確認して、fiber FISH解析と合わせて増幅ユニットに含まれるかどうか明らかにしたい。(2)BACクローンの再選定を行い、PEL細胞株共通増幅領域1q31.3-q32.1上のゲノム構成を明らかにしたい。(3)肺癌細胞株NCI-H1299株クローンにおけるプラスミド遺伝子挿入部位のゲノム構成解析をして増幅コピー数を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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