2012 Fiscal Year Research-status Report
特発性男性不妊症における精巣モノADPリボシル化システムの役割
Project/Area Number |
23510242
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田嶋 敦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10396864)
|
Keywords | 遺伝子相互作用解析 / 男性不妊症 |
Research Abstract |
ヒト造精機能障害の分子遺伝学的背景を理解するための一助として、本年度は、主として、男性不妊症の一病型である非閉塞性無精子症(NOA)の遺伝学的リスク研究を展開し、以下の知見を得た。 中国のNOA患者を対象としたゲノム全域関連解析から報告された4つの疾患感受性遺伝子座(Hu, Xia & Guo et al., Nature Genet 2012)につき、 日本人集団でのNOA発症への関与の程度を症例-対照関連メタ解析(症例490検体、対照1167検体)により分析したところ、3つのSNP (single nucleotide polymorphism)遺伝子座(rs12097821 near PRMT6 at 1p13.3、PEX10 rs2477686 at 1p36.32、およびSOX5 rs10842262 at 12p12.1)は、日本人NOA患者の発症リスクとなる可能性を見いだした。このうちの1つの遺伝子座に位置する遺伝子ファミリーと、本研究課題の対象遺伝子である ART3 (ADP-ribosyltransferase 3) とが分子相互作用することを前年度見いだしており、ART3を介した分子ネットワーク(ART3パスウェイ)を分子遺伝学的に理解する上で有望な相互作用候補を同定したと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、初年度(平成23年度)の成果に基づき次年度以降の研究を行うという逐次型研究であるが、初年度、本年度ともに計画通りに研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、対象遺伝子としたART3を介した分子ネットワーク(ART3パスウェイ)を理解するための基盤が得られたと判断し、次年度は、当初計画通りに詳細な統計遺伝学的解析(候補遺伝子内のDNA変異検索や、候補遺伝子とART3との相互作用に関する詳細解析を含む)を展開する。加えて、研究成果の一般性を評価するための研究を新たに立案し(「次年度の研究費の使用計画」に記載)、次年度の研究課題とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、ヒト精巣におけるART3の役割を分子遺伝学的、統計遺伝学的に分析することを目的として課題設定している。次年度は「今後の研究の推進方策」に記した研究の実施に加え、本年度までの研究成果の一般性を評価することが特に重要であると考え、一般成人男性における生殖特性(精子濃度、血中ホルモン濃度など)との関わりについての遺伝学的分析を新たに遂行することとした。次年度繰り越しとした研究費は、この新規課題の実施に充てる計画である。 具体的には、日本人健常成人男性約2000名(倫理承認を得て取得済み)を分析する準備が整ったので、(1) Illumina社のHumanCore BeadChipによるゲノム全域SNP分析、(2) 候補遺伝子SNPs分析をそれぞれ遅滞なく行い、遺伝子-遺伝子相互作用を含む詳細な統計遺伝学的解析を実施する。 この追加分析により、ヒト男性生殖機能全般に対するART3遺伝子ならびにART3パスウェイ遺伝子の分子遺伝学的な位置付けを明らかにすることができると考える。
|
Research Products
(10 results)