2011 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母の全ゲノム網羅的表現型解析に基づく酸化ストレス傷害修復メカニズムの解明
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23510250
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
安藤 聡 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所 応用微生物研究領域, 主任研究員 (50414496)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化ストレス |
Research Abstract |
出芽酵母の非必須遺伝子破壊株セットについて、近年入手可能となったsupplemental setを用いて網羅的表現型解析を行い、酸化ストレスに対する耐性に必要な遺伝子を多数特定した。これによって、非必須遺伝子破壊株セットの全株についての表現型解析を完遂した。また、必須遺伝子のmRNAを不安定化した株のセットを活用し、酸化ストレス耐性に関する全ゲノム網羅的表現型解析を行った。すなわち、出芽酵母の全遺伝子について、各々の欠損が酸化ストレス負荷条件における酵母の生育にどのような影響を及ぼすかを調べることによって、ストレス耐性に重要な役割を担っていると考えられる遺伝子機能を同定した。その結果、酸化ストレス耐性に必須な役割を持つ非必須遺伝子として、過去の研究で既に同定された液胞関連遺伝子に加えて、RNAポリメラーゼIIやミトコンドリアにおける翻訳に関連する遺伝子等を新たに同定することができた。また、必須遺伝子に関する表現型解析の結果から、酸化ストレス負荷条件下での生育には、不要タンパク質の分解に必要なユビキチン・プロテアソーム系が重要である可能性が示唆された。さらに、遺伝子過剰発現プラスミドライブラリを活用した出芽酵母遺伝子過剰発現株セットを構築するための予備的実験を実施し、現在条件検討等を行っているところである。本研究によって、酸化ストレス傷害の修復に関連する遺伝子群の全体像が明らかになるだけでなく、酸化ストレス傷害の修復において液胞関連機能を始めとした耐性関連機能がどのような役割を担っているのか解明されるものと考えられる。また、本研究によって得られる知見は、酵母の実用的ストレスに対する耐性のメカニズム解明に大きく貢献するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画通り、未解析の非必須遺伝子破壊株セット(Homozygous Diploid deletion strain supplemental set)を用いて酸化ストレスに感受性あるいは耐性を示す株を選抜し、非必須遺伝子破壊株のフェノミクスを完遂した。また、必須遺伝子のmRNA安定性低下株コレクションを用いた、酸化ストレス感受性株および耐性株のスクリーニングを実施した。更に、過剰発現遺伝子ライブラリを用いた、酸化ストレス感受性あるいは耐性を示す過剰発現株のスクリーニングに向けて、条件検討等を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の計画に従って下記の通り推進する。まず、過剰発現によって酸化ストレス耐性に影響を及ぼす遺伝子について検索を行い、これまでの結果とあわせて、酸化ストレス耐性において重要な役割を担っている遺伝子を全ゲノム網羅的に明らかにする。同定された遺伝子について、酸化ストレスによる傷害の修復との関連を詳細に調べる。そのため、当該遺伝子の破壊株あるいは過剰発現株等について、種々の酸化ストレスマーカーを指標として、酸化ストレス負荷後の酸化傷害の性状を明らかにする。また、細胞内活性酸素消去系との関連についても検討する。同時に、液胞タンパク質輸送や液胞内pH等の液胞関連表現型を精査することによって、液胞関連機能の状態を明らかにする。これらの結果を統合し、酸化ストレス耐性において液胞関連機能がどのような役割を担っているのかを明らかにする。また、本計画の網羅解析によって、酸化ストレス耐性との関連が新規に明らかにされた遺伝子についても、関連機能に関する細胞生物学的な解析を行い、耐性との関連を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費・人件費・その他に使用する。なお、次年度使用額72,632円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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Research Products
(9 results)