2012 Fiscal Year Research-status Report
食品成分のインバース分析法を核とする生理活性物質創製スキームの構築
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23510252
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
二瓶 賢一 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10307209)
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Keywords | ポリフェノールオキシダーゼ / ポリフェノール / 配糖体 |
Research Abstract |
自然界に広く分布するポリフェノールオキシダーゼ(PPO)は,様々なフェノールをキノンへと酸化する反応を触媒する.生成したキノンは還元剤の働きにより,安定なジフェノールへと変換される.本研究では,(1)PPOによる酸化反応の解析,(2)天然ポリフェノールのPPOによる酸化生成物の単離・構造決定および(3)その酸化生成物が天然に存在することの検証と生理活性評価を行うことにより,新しい天然生理活性物質を見出すことを目的とする.特に,酵素反応生成物の構造予測と基質や生成物の化学合成・構造解析を核に,天然ポリフェノールのPPO酸化体の単離・構造決定およびその酸化体が天然に存在することの検証の2段階からなる「インバース分析法」の確立を目指す. 本年度は,(1)PPOによる酸化反応の解析および(2)天然ポリフェノールのPPOによる酸化生成物の単離・構造決定に関する研究を行った.その過程で,メグスリノキに含まれるフェノール成分であるエピロドデンドリンおよびその誘導体を化学合成し,チロシナーゼ阻害活性を測定した結果,合成した複数の誘導体が阻害剤として作用することを見出した.それらは代表的なチロシナーゼ阻害剤であるコウジ酸を超える強力な阻害活性を示し,さらに,糖結合部位であるオキシメチンの立体配置によって,阻害活性に違いが出ることが明らかになった.このように立体配置の差異によって,阻害活性が異なるチロシナーゼ阻害剤の開発例は極めて希少であり,本研究で得られた阻害剤は新規性が高いと判断される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はエピロドデンドリン骨格を持つ新たなチロシナーゼ阻害剤の開発に着手し,その活性と構造の相関研究を行うために,本年度は糖部分の異なる様々な誘導体の合成を行った.その結果,市販のチロシナーゼ阻害剤であるコウジ酸よりも高活性な阻害剤を見出すことができた.またこれらの阻害剤は,糖部分を二糖などに変化させても非常に強力な活性を示した.当初目的である1)PPOによる酸化反応の解析および(2)天然ポリフェノールのPPOによる酸化生成物の単離・構造決定とは若干のずれがあるが,それらの研究を遂行する過程で,ジアステレオマー間で活性の異なる全く新しいチロシナーゼ阻害剤を開発できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初目標の(3)その酸化生成物が天然に存在することの検証と生理活性評価を行うことにより,新しい天然生理活性物質を見出すことを目指す.特に,メグスリノキ中のフェノール類に着目し,そのPPOによる酸化過程での生成が予測されるジフェノール類の化学合成および生理活性の評価を行う.また,食品として用いられているメグスリノキの抽出物を作製し,その中に合成したジフェノール類があるかどうかをHPLC等の分析機器を用いて確認する.以上により,天然ポリフェノールのPPO酸化体の単離・構造決定およびその酸化体が天然に存在することの検証の2段階からなる「インバース分析法」の実施を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に研究費は,試薬,ガラス器具,プラスチック消耗品およびHPLC・FPLC消耗品などを購入し,使用するために計上する.また,天然物有機化学および農芸化学などの分野の学会に参加し,研究成果を発表するため,国内旅費と成果発表費も合わせて計上する.
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