2011 Fiscal Year Research-status Report
低分子化合物を特異的に認識する新機能ペプチドの進化工学的創製
Project/Area Number |
23510253
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
根本 直人 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60509727)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 進化分子工学 / ペプチドアプタマー / mRNA/cDNA display / 抗体低分子化 / 低分子認識分子 / 分子間相互作用解析 / 表面プラズモン共鳴法 / プルダウン法 |
Research Abstract |
低分子化合物に対し抗体程度の親和性・特異性で結合するペプチドを進化工学的手法により創製する。30残基程度で複数のジスルフィド結合を有する低分子結合ペプチドを取得し、その認識メカニズムを解明することを目的に以下の研究を実施した。平成23年度は申請者らが開発したcDNA display法により蛍光分子fluoresceinに対し試験管内淘汰を複数回行い淘汰された配列を評価した。具体的には1、Cys含有量10%程度のアミノ酸組成が異なる2種類のランダムライブラリの合成とその配列確認。2、2種類のランダムライブラリを用いてcDNA display法を用い標的分子であるfluoresceinに対しより効率の良い(1)標的分子固定化法 (2)溶出法の検討を行い、同時に試験管内淘汰を複数回実施。3、無細胞翻訳系を用いたペプチド合成・精製法と表面プラズモン共鳴法(SPR)の組合せによる迅速な解離定数決定法の開発。4、迅速かつ簡便な新規の無細胞翻訳系を用いたプルダウン型タンパク質相互作用解析法の開発。5、すでに取得済の30残基の蛍光分子Cy-3結合ペプチド(ジスルフィド結合を有する)の結合性を再度、検討。以上のことより、以前、取得済のCy-3結合ペプチドの解離定数はμモルオーダーであることがわかり、当初想定したほど親和性が高くないことがわかった。上記の3、4のように迅速な親和性解析法を開発したことにより取得した配列のペプチドを化学合成せずとも大まかな親和性を測定できるようになった。一方、fluoresceinに対する試験管内淘汰は上記2のように工夫をしたものの十分なS/N比が得られず、場合によっては固相(ポリスチレン)に結合する分子が取得されてきた。試験管内淘汰法の改良は確実に進展したものの標的分子であるfluorescein結合ペプチドの取得にはもう少し時間がかかる見込みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進化工学における機能分子取得の成否は、a) ライブラリ設計、b) 淘汰システムデザイン、c) 機能評価プロセスに依存する。今年度はc)の技術がほぼ確立し、a), b)を含む淘汰サイクル全体を迅速に評価することが可能になった。この結果、今回はb) 淘汰システムのS/N比の課題を解明するために、磁性体ビーズ、カラム等の標的分子担体の表面物性、溶出法さらに非特異的吸着を除去するための酵素切断型標的分子固定化リンカーの開発を行った。ライブラリデザインは当初の計画に加え、Cys含量を10%程度とし構成アミノ酸比率を変えたものをさらに構築した。ライブラリ設計計画を当初予定していたものより拡張し多角的な考察を可能にした。分子間でジスルフィド結合を形成する可能性があるため、N-エチルマレイミドにより分子内ジスルフィド結合に関与しないシステインをブロックする処理を新たに加えた。複数回の試験管内淘汰をした結果、予想に反し磁性体ビーズの表面成分であるポリスチレンに結合するペプチドが淘汰された。これは淘汰システムとして従来のカラム淘汰法を割愛した結果であると同時に選択されてきた配列を解析したところほとんどシステインを含まない配列が取得されてきたことからN-エチルマレイミドによってジスルフィド結合含有ペプチドの構造が不安定化されることがわかった。ファージディスプレイ法等の他の類似技術でもこのような高分子に結合するアプタマーの取得が報告されていることから、申請者らの淘汰技術自体は従来の方法と同等以上であると考えカラム淘汰法の必要性を確認した。また、ポリスチレン等の高分子に結合するペプチド自体は興味深い研究対象であるが本研究テーマから外れるため別の機会に検討することとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
淘汰システム全般に関する最適化はほぼ完了したため、今年度は具体的な試験管内淘汰実験をできるだけ行う予定である。計画ではすでに複数のスクリーニングにより標的結合ペプチドが得られる予定であったが、標的分子以外の高分子であるポリスチレンに結合するペプチドが取得されてきたことから、再度、淘汰を行う。淘汰の結果、得られた候補分子の相互作用はすでに開発してきた複数数の相互作用解析法によって速やかに平衡論的、速度論的解析を行う。また、念のため当初予定していた蛇毒のファミリーでジスルフィド結合を有するスキャフォールド(60~70残基)のThree-fingerをベースにしたランダムライブラリによっても淘汰実験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は最終的に目的としたペプチド配列が得られなかったため化学合成をおこなわなかった。今年度は昨年度の残額を利用して当初予定していたペプチド合成をおこなう。基本的には試薬中心の消耗品で研究費の大部分を使用する予定である。また、論文発表のための投稿料、英文校正料が必要である。
|
Research Products
(16 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] Peptide Science 2011: K. Sakaguchi (Ed.)2012
Author(s)
Naoto Nemoto, Shinnosuke Kimura, Shigefumi Kumachi, Weiyan Cai, Miho Suzuki, Koichi Nishigaki, and Tai Kubo
Total Pages
431
Publisher
In vitro Selection of Peptide Aptamers against Acetylcholine-binding Protein (AChBP) from Disulfide-rich Peptide Library by cDNA Display
-