2011 Fiscal Year Research-status Report
NELL1タンパク質を用いた骨組織再生治療法の基盤技術の開発
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23510255
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新美 友章 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (30377791)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 再生医療 / 骨芽細胞 / 細胞接着 |
Research Abstract |
頭蓋骨縫合早期癒合症(Craniosynostosis)の患部で高発現している遺伝子として発見されたNELL1は分子量約140 kDaの分泌タンパク質で、その組換えタンパク質やアデノウイルスによる強制発現系を用いた動物実験において骨組織を誘導することから、新規の骨形成因子として骨再生治療への臨床応用が期待されている。しかしながら、NELL1の受容体およびそのシグナル伝達機構はよくわかっていなかった。そこで本申請課題では、 (1) NELL1受容体の同定、(2)シグナル伝達経路の解明、(3) NELL1タンパク質の機能領域の解析、(4) NELL1およびNELL1受容体の機能を応用した骨組織再生治療法の確立を目的とした。 本年度は、様々な解析に必要なヒトNELL1タンパク質の大量発現系をヒト293-F細胞を用いて構築し、生物活性を有したNELL1タンパク質の供給方法を確立した。これにより、NELL1タンパク質の蛍光標識が可能となり、発現クローニング法によるNELL1受容体のスクリーニングやモデル動物を用いた骨再生治療実験を開始した。また、強制発現実験によってNELL1タンパク質が分泌後に細胞外マトリックスに取り込まれることを明らかにし、NELL1の細胞分化における新たな作用機構を示唆した。さらに、NELL1タンパク質が間葉系幹細胞に対して細胞接着活性を有することを明らかにし、インテグリンが接着受容体として機能することを示した。これにより、NELL1の骨分化誘導能においてインテグリンを中心とした細胞接着シグナルが関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NELL1受容体のひとつとしてインテグリンファミリー分子を同定することができたが、骨分化誘導に必要な別の受容体の存在も示唆された。NELL1タンパク質の大量発現系の確立により、NELL1タンパク質の標識が可能となり、発現クローニング法およびプロテオミクス的手法によるスクリーニングを開始した。いずれの方法でも受容体の候補となる陽性クローンはまだ得られていないが、前者に関しては、NELL1と結合する受容体発現細胞を選択する一細胞自動単離装置および一細胞PCRの条件検討がようやく終了して、数ラウンドのスクリーニングが完了した段階で、まだ総スクリーニング数が少ないこともあり、今後も引き続いて行っていく。後者は、NELL1特異的なタンパク質バンドが得られていないので、さらなる条件検討が必要であると考えている。その他の研究計画については、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、NELL1受容体のスクリーニングを重点的に進めるとともに、成果が得られつつあるNELL1の細胞接着活性および骨分化誘導における機能領域の同定について解析をさらに進めていく。NELL1受容体のスクリーニングについては、一通りのスクリーニング操作がようやく終了した段階であり、今後、実験手技が熟達するにつれてスクリーニングの効率が上昇すると期待される。人的資源のさらなる投入も予定している。 NELL1の細胞接着活性については、細胞接着部位の詳細な解析を行うとともに、インテグリン下流のシグナル伝達経路に関して、骨分化誘導との関連性を解析する。骨分化誘導におけるNELL1の機能領域の同定に関しては、組換えタンパク質の添加による分化誘導でなく、遺伝子導入法による実験を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NELL1タンパク質の大量発現系の構築について、滅菌済み培養バッグを用いた振蕩培養法でなく、三角フラスコによる旋回培養法を採用したため、培養装置の購入を中断することとしたことにより当該研究費が生じた。次年度の研究費使用計画については、受容体スクリーニングを多角的に推進するために必要な試薬等の投入を増やす他、担当大学院生の国際学会への参加および国内学会の発表回数の増加を予定している。
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