2011 Fiscal Year Research-status Report
窒素原子が結合した不斉四級炭素をもつ天然物の合成研究
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23510258
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市川 善康 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 教授 (60193439)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 全合成 / 不斉四級炭素 / 転位反応 / シアナート / イソシアナート / 海洋天然物 / 構造決定 |
Research Abstract |
協奏的な機構で進行する転位反応は,例えばCope転位やClaisen転位反応は,炭素-炭素結合を立体選択的に構築するための欠かせない手法として,天然物合成において重要な地位を占めている。これに対して炭素-窒素結合を形成する転位反応として,申請者はアリルシアナートの転位反応に着目してきた。当該年度の研究として,アリルシアナートの転位反応の有用性を実践の場において検証すべく,窒素原子が結合した不斉四級炭素をもつ含窒素天然物の効率的な合成ルートの開拓を行った。含窒素天然物として,ゲラニルリナロイソシアニド,マンザシジン,スフィンゴファンジンEを標的化合物として合成研究を行った。この結果,光学活性なゲラニルリナロイソシアニドの合成に成功した。そして,不明であったゲラニルリナロイソシアニドの絶対立体構造を決定することに成功した(Org. Lett., 2011, 13, 2520)。また,アリルシアナートの転位生成物であるイソシアナートを,効率的にBoc-カルバメートに変換する手法を開発して,マンザシジンAとCの合成に成功した。スフィンゴファンジンEの合成に関しては,グルコノラクトンを出発原料とする合成を検討した。しかし,中間体の化学的性質が不適当であるため,当初の合成ルートを放擲して,あたらしくマンノースを出発原料とする合成ルートを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋生物由来のテルペンであるゲラニルリナロイソシアニドは,窒素原子が結合した不斉四級炭素をもつ。このゲラニルリナロイソシアニドを光学活性体として世界で初めて合成に成功した。そして,ゲラニルリナロイソシアニドの絶対立体構造を決定することに成功した(Org. Lett., 2011, 13, 2520)。また,アリルシアナートの転位生成物であるイソシアナートを,効率的にBoc-カルバメートに変換する手法を開発した。すなわち転位生成物であるイソシアナートをTHF中にてリチウムter-ブトキシドと処理してBocーカルバメートに変換する手法と,イソシアナートをter-ブタノール中にてトリメチルシリルクロライドで処理してBoc-カルバメートに変換する方法である。ここで開発した手法は,研究の目的である「窒素原子が結合した不斉四級炭素をもつ含窒素天然物の効率的な合成ルートの開拓」に対する有力な方法論となる。実際に,この手法を活用して,マンザシジンAとCの合成に成功した(Org. Biomol. Chem., 2012, 10, 614-622)。マンザシジンは北海道大学の小林等によって,沖縄の万座ビーチに生息する海綿より単離構造決定されたブロモピロールを含有する海洋天然物である。
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Strategy for Future Research Activity |
「窒素原子が結合した不斉四級炭素をもつ含窒素天然物の効率的な合成ルートの開拓」を目指して,スフィンゴファンジンEの合成研究に集注する。最初の合成ルートが不成功であったため,計画を練り直した。大量にかつ安価に入手可能なマンノースを出発原料としてアセトニド誘導体を調製する。末端のアセトニドを選択的に加水分解してジオールを得る。さらに1級ヒドロキシ基を選択的にシリル化して保護して,2級ヒドロキシ基を酸化してケトンとしてWittig反応で3置換2重結合を構築する。エステルをアルデヒドにして,ジエチル亜鉛の不斉付加反応により,立体選択的にアリルアルコールを導入する。そしてカルバメート化して脱水して,アリルシアナートの転位反応による窒素原子が結合した不斉四級炭素を構築して,全合成ルートを確立する計画である。 23年度に開始を予定していたが,構造の確認が遅れていたために延期していたマンザシジンBの合成研究に着手する計画である。。Evansのオキサゾリジノンをもちいた不斉アルドール反応でアミノアルコールを合成する。アリルシアナートの転位反応を用いた1,3-不斉転写を行い不斉四級炭素を構築する。この場合,二級アルコールの隣接位に不斉四級炭素を構築しなければならない。アリルシアナートの転位反応の真価を問う機会と考えている。アリルシアナートの転位反応に成功したら,23年度に開発した手法を用いてシアナートをBocカルバメートに変換する。さらに二重結合部位を酸化的に切断する。アミジン部位は,イソニトリルを活用した環化反応で合成する計画である
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スフィンゴファンジンEの合成研究に関しては,最初の合成ルートが不成功であったため,計画を練り直して,次年度に実施する計画とした。このため,研究費を次年度に繰り越して使用する計画である。また23年度に開始を予定していたが,構造の確認が遅れていたために延期していたマンザシジンBの合成研究に対して,繰り越し資金を投入して着手する計画である。
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Research Products
(8 results)