2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510259
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
橋本 雅仁 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (30333537)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アレルギー / 自然免疫 / 発酵食品 / 微生物 |
Research Abstract |
近年アレルギー患者が増加しており、社会的に問題となっている。この原因として、細菌成分への暴露機会の減少が影響するという「衛生仮説」が提唱されている。そこで、人為的に細菌成分に暴露させ免疫応答を制御することが考えられ、プロバイオティクス食品などに利用されている。しかし、その有効成分についての情報は少ない。そこで本研究では、アレルギー抑制効果が示されている発酵食品に注目して、その有効成分について検討する。本研究では、代表的な発酵食品として、乳酸発酵食品および黒酢をターゲットにし、これら製品および主要な発酵細菌である乳酸菌と酢酸菌を用いて、以下の3点、1)自然免疫および獲得免疫を調整する成分の分離、2)アレルギー抑制機構、3)成分の化学構造について明らかにする。 本年度は以下の2点について検討した。A)免疫能を調整する成分の分離精製。まず、菌から菌体成分を抽出分離した。黒酢および乳酸菌を対象とし、トリトンX-114-水二相分配法を用いて疎水性の免疫調整成分を分離した。本方法は簡便な操作で数リットルの大量分離にも適用できた。また、従来の疎水性クロマトグラフィーを用いる分離法より活性回収率が10倍程度も高く、分離法として優れていた。B)アレルギー抑制活性の検討。上記で分離した成分の自然免疫活性化能を検討した。黒酢抽出物は、主にTLR2, TLR4を活性化し、マウス脾臓細胞に対してTNFやIFNを誘導した。また、乳酸菌抽出物は、主にTLR2を活性化し、マウス脾臓細胞に対してTNFを誘導した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、発酵食品の活性化物質の大量分離法の検討と、活性化方法について検討することを目的としていた。 従来の分離方法は、水溶性の抽出物を疎水性クロマトグラフィーを用いたグラジエント溶出で分離していたため、クロマトグラフ担体のコスト、カラム容量、流速の限界、減圧濃縮や透析等による有機溶媒の除去にかかる時間の問題があり、大量分離には適していなかった。しかし、今回用いたトリトンX-114を用いた二層分配法は、簡便なバッチワイズ法であり、成分の濃縮も有機溶媒沈殿法を用いることから、迅速に大量分離することが可能になった。これは、今後の研究に大きく貢献するものである。 また、活性化能の検討では、マウスの脾臓細胞が感度が良いことが分かり、系を確立できた。しかし、今回は試みなかった、パイエル板細胞を用いた方法がより優れている可能性があるため、今後の検討が必要である。 一方で、マウスを用いたアレルギーの抑制の検討については、系の立ち上げがうまく行かず、予定よりも遅延が見られる。こんご、投与法を改良する等して、検討を進める予定である。 以上のことから、一部遅延が見られるものの、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、発酵食品の活性化物質の大量分離法が確立できたことから、今後は免疫能を調整する成分の構造解析を主に検討する予定である。 前年度に分離できたアレルギー抑制成分は化学構造を解析する。得られた成分は高分子であると予想される。まず組成分析を行い、成分中の糖、アミノ酸、脂質などの有機成分、リン酸、硫酸などの無機成分などの構成成分を明らかにする。ついで、酵素分解や化学分解など特異的部分分解を用い小分子量化を検討する。これらの成分を、質量分析、核磁気共鳴を用いて解析し、推定構造を明らかにする。 また、本年度に終了しなかった、パイエル板細胞を用いた活性化能の検討、および現在遅延が見られるマウスを用いたアレルギーの抑制の検討も引き続き検討する。 パイエル板細胞の分離は、外部から技術を導入する必要があるが、既に検討を開始しており、夏までには技術を習得できる予定である。一方、マウスのアレルギーの抑制については、アレルゲンの投与方法、活性化物質の投与方法に問題がある可能性がある。これまでの腹腔内投与や強制給餌法だけでなく、経鼻免疫法や自由接触法を検討して、系の立ち上げを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成分の抽出精製、構造解析、生物活性の測定には、試薬類、測定キット、実験動物、ガラス、プラスチック製品等の購入が必要不可欠であり、消耗品費として計上している。 本研究において最新の動向を知る必要性及び研究成果の積極的な公表のため学会出張費を国内旅費として計上している。なお、交通費、宿泊費、日当は学内の旅費規程に従って算出している。 積極的に学術雑誌への論文投稿のためには、外国語論文の校閲の費用が不可欠である。動物の飼育及び生物活性の測定には専門的知識を有する補助員を雇用する必要がある。なお、謝金に関しては、学内の規定に従って算出している。 構造解析や、生物活性測定に必要な学内共通設備の使用、および成果の印刷・公表費用を計上している。
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