2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510260
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上田 純一 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40109872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健助 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10209942)
長谷川 宏司 筑波大学, 生命環境科学研究科, 名誉教授 (70094167)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / オーキシン / オーキシン極性移動 / Artemisia absinthium L. / 植物ホルモン / 植物生理活性物質 / 生物検定法 / 構造決定 |
Research Abstract |
植物ホルモンである天然型オーキシンのインドール酢酸は植物の成長、発達において多面的な生理作用を示す。他の植物ホルモン類と異なり、オーキシンはその特異的な移動形態である極性移動を示すことが知られている。オーキシン極性移動制御活性を示す化学物質としては、非天然型の2,3,5-triiodobenzoic acid (TIBA)、N-(1-naphtyl)phtalamic acid (NPA)および9-hydroxyfluorene-9-carboxylic acid (HFCA)がその阻害剤として知られているにすぎない。本研究は、広く植物界から天然型オーキシン極性移動制御物質を探索するとともに、その作用機構を明らかにすることを目的としている。 進化系統上、進化が進んでいると考えられるキク科植物やイネ科植物に加え、マメ科植物をスクリーニングの対象とした。スクリーニングには、申請者によって確立された放射性オーキシンおよびダイコン(Raphanus sativus L.)胚軸切片を用いる生物検定法を適用した。その結果、ニガヨモギ(Artemisia absintium L.)茎葉部に複数の(新規)オーキシン極性移動阻害物質の存在が明らかとなった。溶媒分画、各種クロマトグラフィーを用いて粗精製画分を得た。現在それらの単離を目指している。 一方、新規オーキシン極性移動制御物質の作用機序を明らかにするために、黄化Alaskaエンドウ(Pisum sativum L. cv. Alaska)および重力応答反応の突然変異体である黄化ageotropumエンドウ芽生えにおけるオーキシン極性移動関連遺伝子PsAUX1遺伝子およびPsPINs遺伝子発現を調べる実験系を確立した。さらに、それら遺伝子産物の細胞内分布を明らかにするために、それら遺伝子産物に対する抗体を作製しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者によって既に確立された、放射性オーキシンおよびダイコン胚軸切片を用いたオーキシン極性移動制御物質を探索するための生物検定系を駆使して、植物界より新規オーキシン極性移動制御物質を探索した結果、ニガヨモギ茎葉部抽出物中に複数の(新規)オーキシン極性移動阻害物質の存在を認めた。なお、抽出物の精製に時間と労力を費やしたにもかかわらず、それらの単離、化学構造の決定には至っていない。一方で新規オーキシン極性移動制御物質の作用機序を明らかにするために、黄化Alaskaエンドウ(Pisum sativum L. cv. Alaska)および重力応答反応の突然変異体である黄化ageotropumエンドウ芽生えにおけるオーキシン極性移動関連遺伝子PsAUX1遺伝子およびPsPINs遺伝子発現を調べる実験系を確立するとともに、それら遺伝子産物の細胞内分布を明らかにするために、それら遺伝子産物に対する抗体を作製している。抗体の作製については、作業が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の実験を継続する。ニガヨモギ茎葉部に含まれる新規オーキシン極性移動阻害物質を含む粗精製画分を、各種クロマトグラフィーおよびHPLCにて更に精製を繰り返して、これらを単離する。各種機器を用いて化学構造を決定する。 黄化エンドウ芽生えにおけるオーキシン極性移動関連遺伝子産物のPsAUX1およびPsPINsに対する抗体を利用し、蛍光顕微鏡を用いてそれらの細胞内局在を明らかにし、極性移動との関係を調べる。単離した新規オーキシン極性移動阻害物質のオーキシン極性移動関連遺伝子ならびにその産物に対する影響を明らかにする。 平成23年度の研究においては実施できなかったもう一つのオーキシン極性移動関連遺伝子であるMDR遺伝子の分離を試みる。これはかなり大きなファミリーを形成していることが推察されるため相当の困難が予想される。 新規オーキシン極性移動制御物質の黄化エンドウおよび黄化トウモロコシ芽生え細胞の成長、発達に対する影響評価を行う。評価にはクリープメータを用いて特に細胞壁物性に対する影響の詳細を検討する。また、植物細胞表層微小管の動態に対する影響については、蛍光試薬を用いてこれを可視化し、蛍光顕微鏡下で観察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規オーキシン極性移動阻害物質を単離し、その化学構造を決定するための試薬ならびに機材を購入するとともに、それらの作用機序に関する生理学的、分子生物学的解析を行うための試薬および機材を購入する。新規オーキシン極性移動阻害物質を単離するための謝金、ならびに成果の報告に関する研究旅費および海外研究者との研究交流のための研究旅費に使用したい。
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Research Products
(6 results)