2011 Fiscal Year Research-status Report
抗硫酸化モノクローナル抗体作成による硫酸化プロテオーム解析
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23510265
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
北川 幸己 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60093853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 真一 新潟薬科大学, 薬学部, 助教 (50424883)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生体分子 / 硫酸化タンパク質 / モノクローナル抗体 / プロテオーム解析 / 固相ペプチド合成 / チオエステル縮合法 / クローニング / 硫酸化酵素 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者の硫酸化ペプチドに関する合成化学的なバックグランドを基盤に、生化学的・分子生物学的及びバイオインフォマティックスの技術と知識を持つ研究者の協力を得て、硫酸化タンパク質の検出・同定に用いる免疫化学的な研究用ツールの開発を行い、硫酸化プロテオームの解析に展開することを目的としている。平成23年度では研究を遂行するのに必要となる硫酸化ペプチドの化学合成とともに、タンパク質硫酸化に関与する酵素: TPST-1、-2 の取得に向けた研究を行った。(1) 抗原とする硫酸化ペプチドの固相合成・・・抗体産生に必要な抗原として、硫酸化チロシン分子の他、硫酸化チロシンを含む種々のオリゴペプチドの化学合成を行った。また抗体スクリーニングの際に、非硫酸化ペプチド抗体や配列に特異的な抗体を排除する必要があることから、同一配列をもつ非硫酸化ペプチドや配列をD-アミノ酸で構築したコントロール用ペプチドの合成も併せて行った。(2) 複数個の硫酸化チロシンを含む硫酸化ペプチドのチオエステル縮合による合成・・・長鎖ペプチドの合成に用いられるチオエステル縮合法を長鎖の硫酸化チロシン含有ペプチドの合成に適用することを目的とし、硫酸化チロシンを含むペプチドチオエステルセグメントの調製法とともにセグメント縮合の詳細な条件検討を行った。(3) 硫酸化セリン/トレオニン含有ペプチドの固相合成法の確立・・・近年セリン/トレオニン残基が硫酸化を受けたペプチドが発見されていることから、硫酸化セリン/トレオニンを含むペプチドの化学合成法を検討し、保護基の脱保護条件を含めた簡便な固相合成法を確立した。(4) チロシン硫酸化酵素の大腸菌による発現の検討・・・タンパク質中のチロシン硫酸化に必要な構造モチーフの同定や2つの硫酸化酵素の基質認識機構の違いの解明に向けて、TPST-1、-2の大腸菌による発現を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の当初計画では、抗硫酸化ペプチド/タンパク質抗体の作成までを実施する予定であったが、抗原とする硫酸化ペプチドの合成に時間がかかり、計画を達成できなかった。抗硫酸化ペプチドモノクローナル抗体の取得が本研究を遂行する上でキーポイントであることから、達成度は「やや遅れている」と評価している。ペプチドの合成及び精製とcharacterizationは6年制学部学生の格好の卒研テーマであると判断しているが、研究代表者が学部長として校務に多忙であったことも研究計画の遅延の一因である。 一方当初計画には記載していないが、従来から継続して行ってきた硫酸化チロシン含有ペプチドのチオエステルセグメント縮合による合成法の検討と硫酸化セリン/トレオニン含有ペプチドの固相合成法の確立はほぼ達成できたと判断している。 タンパク質中のチロシン硫酸化に関与する2つの酵素タンパク質について、大腸菌を用いて発現させることを研究担当者が精力的に取り組んだが、発現できるものの大部分が不溶性画分に含まれることがわかり、精製酵素を大量に取得するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 平成23年度では、種々の硫酸化チロシン含有ペプチドを固相合成し、脱保護後HPLCで精製した。平成24年度では、これらの合成ペプチドを抗原としてマウス免疫法で抗体の作成を行う。抗体作成は業者に依頼する予定であるが、得られる抗体産生細胞を限界希釈法によりクローニングを行いながら、硫酸化チロシンを含むオリゴペプチドのみに抗体反応を示す抗体産生細胞を選抜し、その培養上清を回収することで抗体とする。(2) マウス免疫法と並行して抗体ファージディスプレイによるスクリーニングから抗体を得る方法を検討する。得られる抗体 Fab fragment をコードする DNA に FC 領域及び発現プロモーターを付加してリコンビナントタンパク質を発現させ、抗硫酸化ペプチド/タンパク質抗体とする。(3) 平成23年度では大腸菌を用いて TPST-1、-2 の発現を行った。目的とする酵素タンパク質は大量に発現しているものの、大半の目的タンパク質は不溶画分に含まれ、精製できたタンパク量はごくわずかであった。そこで今年度は、哺乳類細胞を用いて目的タンパク質の発現を進め、大量精製することを目指す。(4) (3)で取得する酵素を用いてタンパク質中のチロシン硫酸化部位の配列モチーフを検討するためには、チロシンを含む様々な配列と長さの合成ペプチドが必要となる。そこでチロシンを含むペプチドライブラリーの構築を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 合成した硫酸化チロシン含有ペプチドを抗原として抗体作成を行うが、これについては業者に作成を依頼する予定であり、その経費に研究費を計上する。(2) タンパク質硫酸化に関わる酵素の発現を動物細胞に切り替えて検討するが、発現ベクター等クローニングに必要な試薬の購入に研究費を計上する。(3) 硫酸化の修飾を受ける可能性があるチロシンを含む種々の配列と長さをもつペプチドライブラリーを構築するため、ペプチド合成用試薬と精製用HPLCカラムの購入に研究費を計上する。(4) 機器や器具については既存のもので間に合うことから、新規な機器類の購入は行わない予定である。(5) ペプチド討論会(10月、鹿児島)、日本薬学会(3月、横浜)での発表を予定しており、そのための旅費として研究費を計上する。
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