2012 Fiscal Year Research-status Report
抗硫酸化モノクローナル抗体作成による硫酸化プロテオーム解析
Project/Area Number |
23510265
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
北川 幸己 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60093853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 真一 新潟薬科大学, 薬学部, 助教 (50424883)
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Keywords | 生体分子 / 硫酸化タンパク質 / モノクローナル抗体 / プロテオーム解析 / 硫酸化ペプチド / 固相ペプチド化学合成 / 硫酸基転移酵素 / クローニング |
Research Abstract |
本プロジェクトは、硫酸化ペプチドの化学合成の技術を基盤として、硫酸化タンパク質の検出・同定に用いる免疫化学的な研究用ツールの開発を行い、硫酸化プロテオーム解析に展開することを目的としている。 ① 抗原とする硫酸化ペプチドの化学合成と抗体作製・・・平成23年度に化学合成した種々の硫酸化チロシン含有ペプチドを抗原として、抗体作製を業者に委託した。得られた抗体は、硫酸化ペプチドとともに非硫酸化ペプチドにも反応することから、硫酸化チロシンペプチドに特異的な抗硫酸化ペプチドモノクローナル抗体の作製には至っていない。一方、タンパク質中のセリン/トレオニン硫酸化機構の解明には、セリン/トレオニン硫酸化ペプチドと特異的に反応する抗体が研究用ツールとして必要である。平成24年度は、抗原ペプチドとして種々の硫酸化セリン/トレオニン含有ペプチドの化学合成を行い、さらにその化学的な安定性を硫酸化チロシン含有ペプチドと比較検討した。 ② 硫酸化ペプチドの化学合成に関する研究・・・昨年度の研究で硫酸化チロシンを含むチオエステルセグメントの合成法はほぼ確立できた。平成24年度は、こうした硫酸化ペプチドチオエステルを用いて、複数個の硫酸化チロシン残基を含むペプチドのチオエステル縮合を試みた。縮合中にチオエステル部分が加水分解を受けやすいことから、縮合収率の改善が必要であり、現在縮合条件の最適化を検討している。さらに、硫酸エステル基に保護基を採用した硫酸化チロシン含有ペプチドの合成法をチオエステル縮合に展開することを考え、硫酸エステルを保護した硫酸化チロシン誘導体の簡便な調製法を検討している。 ③ タンパク質中のチロシン硫酸化部位の配列モチーフの網羅的な解析を目指した研究・・・平成24年度では哺乳類細胞を用いたチロシン硫酸化酵素(TPST-1、TPST-2)の発現系の構築を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究概要に記述したように、4つのテーマでプロジェクトを進行させている。このうち、①の抗硫酸化ペプチドモノクローナル抗体を取得することが本プロジェクトを遂行する上でキーポイントとなるが、現在までその取得には至っていない。このことから、プロジェクト全体の達成度は「やや遅れている」と評価せざるを得ない。硫酸化チロシンの化学的な不安定さにより、マウス免疫中に硫酸エステルが分解してしまうことに起因していると判断しており、マウス免疫法では特異的抗体の取得は難しいと判断している。平成25年度ではファージディスプレイ法へ切り替えて、再度抗硫酸化ペプチドモノクローナル抗体の取得を試みる予定である。さらにセリン/トレオニン硫酸化ペプチドに関しては、チロシン硫酸化ペプチドよりも化学的に安定なことからマウス免疫法で特異的抗体が取得できる可能性はあると推察している。 テーマ②については、少しずつデータが蓄積できている。またテーマ③では、哺乳類細胞を用いてTPST-1の発現系の作製を検討しているが、まだまとまった成果は達成できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
① 本プロジェクトの遂行には硫酸化チロシン含有ペプチドに特異的な抗体が必要であることから、ファージディスプレイ法による抗硫酸化チロシンペプチドモノクローナル抗体の作製を最重点課題として検討を行う。 ② 平成24年度に化学合成したヨーロッパモノアラガイ中間径フィラメント由来の硫酸化セリン含有ペプチドを抗原とした抗体作製を行う。抗体作製は業者に依頼してマウス免疫法で検討する。硫酸化セリンは硫酸化チロシンに比べて化学的な安定性が向上していることから、マウス免疫法でも硫酸化セリン含有ペプチドに特異的な抗体が得られる可能性は高いと考えている。 ③ タンパク質中のセリン/トレオニン硫酸化に関与する酵素の単離と同定に向けた研究を行うにあたり、実験材料として淡水産巻貝の一種であるヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnals)の飼育を開始する。 ④ 哺乳類細胞を用いたTPST-1、及びTPST-2の高効率発現系を構築し、目的タンパク質の大量精製を目指す。また取得した酵素を用いてタンパク質中のチロシン硫酸化部位の配列モチーフを網羅的に解析するために、種々の長さと配列をもつチロシン含有ペプチドのライブラリー構築をさらに進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
① マウス免疫法からファージディスプレイ法に切り替えて抗硫酸化ペプチドモノクローナル抗体の取得を目指すが、ファージライブラリーやリコンビナントタンパク質の発現に必要な試薬の購入に研究費を計上する。 ② 硫酸化セリンペプチドを抗原とした抗体作製を業者に委託する予定であり、その経費に研究費を計上する。 ③ ペプチド合成に必要な試薬類、及び精製用HPLCカラム等の消耗品の購入に研究費を計上する。なお、機器や器具等は研究室保有のものを使うことができるので、新たな機器類の購入は行わない。 ④ 日本薬学会(平成26年3月、熊本)での発表を予定しており、旅費として研究費を計上する。
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